弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

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カテゴリー  [相続・遺産分割 ]

第354回 特別の寄与の制度が創設されました(改正相続法8) 

今回の相続法改正では、
被相続人の配偶者の権利強化がなされているという話をしました。

今回は、被相続人の配偶者ではなく
相続人の配偶者などの権利が強化されたという話です。

被相続人の療養看護に務めてきた方については
相続人であれば寄与分の主張ができました。
しかし、例えば長男の妻などが被相続人の療養看護に務めてきたとしても
相続人ではないので、寄与分の主張は認められませんでした。

これについて、改正相続法では、相続人でない者が被相続人の療養看護に務めたときは
相続人に対し、金銭の請求ができることとしたのです。

これを「特別の寄与」と言います。

ただ、療養看護について、特別の寄与が認められるのは
容易ではありません。
相続人が被相続人を療養看護した場合でも
寄与分が認められることは簡単ではなかったからです。

特別の寄与が認められるには
以下の要件が必要とされています。
1 療養看護の必要性
  病気などにより、看護がないと生活ができないような状況であることが必要となります。
  病院や施設に入っていた場合は、病院や施設が生活に必要な看護をしていると思われますので
  療養看護の必要性があったとは言えなくなります。
2 特別な貢献
  金銭を支払うことが相当であると認められるくらいの特別な貢献が必要と言われています。
3 無償性
  対価を得ていなかったことが必要です。
  一緒に生活をしていて生活費を出してもらっていたような場合は無償性が認められない可能性があります。
  無償での看護であるから遺産の中から特別の寄与として金銭を支払うこととなります。
4 継続性
  一時的なものではなく相当期間に及ぶ必要があると言われています。
  1年以上が目安と言われています。
5 専従性
  仕事をしながらした場合には、特別の寄与とは言えない場合が多いと言われています。
6 財産の維持または増加との因果関係
  看護があったから、ヘルパー等に支払いをせずに済んだから遺産が残ったと言える必要があります。

以上のように、特別の寄与の制度が創設されたので
簡単に療養看護の費用が請求できると思われている方もいらっしゃるかもしれませんが
そうはならない可能性があります。
裁判所がどの程度の療養看護にどの程度の金額を認めるかは
今後の判例によるということとなります。 
( 2019/07/16 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第353回 配偶者短期居住権も創設されました(改正相続法7) 

前回、配偶者の権利を強化するために
改正相続法では、配偶者居住権が創設されたという
お話をしました。

今回は、配偶者居住権と名前が似ている配偶者短期居住権が創設された
というお話です。

配偶者短期居住権は、配偶者居住権と名前は似ていますが、異なる権利です。
配偶者居住権は、遺贈や遺産分割により設定される、配偶者が亡くなるまでその建物に住んでいることが
できる権利です。

これに対し、
配偶者短期居住権は、
相続開始時点で、亡くなった方の配偶者が遺産である建物に居住していた場合は
一定期間その建物に居住できる権利です。

これまで、亡くなった方と同居していた相続人は、
遺産分割協議が成立するまでは、
無償でその建物に居住することができるというのが
判例でした。

しかし、この判例に従えば
逆に遺産分割協議が成立すると直ぐに出て行かなければなりません。

また、配偶者が居住している建物を配偶者以外に相続させるという遺言がある場合や
配偶者が居住している建物を売って、その代金を相続分に従い分けるという遺言がある場合には
遺産分割協議は必要ありませんから、
配偶者は、直ぐに建物から出て行かなければならなくなってしまいます。

そこで、改正相続法では、
遺産分割協議が成立したとしても相続開始から6ヶ月を経過していない場合は
配偶者は引き続き居住していた建物に居住する権利が認められました。

また、遺言書や遺贈などで、建物を取得した人から建物から出ていくように求められたとしても
出て行くように請求されたときから、6ヶ月は建物に居住する権利が認められるとしました。

これらが、配偶者短期居住権です。
配偶者短期居住権は、
それまで住んでいた住居から直ぐに出て行かなくてもよい権利なのです。
ただ、一定期間が経過すると出て行かなければならない権利です。

これに対し、前回ご説明した配偶者居住権は
遺贈や遺産分割協議によって、その建物に亡くなるまで居住することができる権利ということになります。

このように名前が似ていても、配偶者居住権と配偶者短期居住権は
内容が異なります。
ただ、どちらも配偶者の権利を強化するために認められたという点では
同じになります。





( 2019/07/09 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第352回 配偶者居住権が新設されました(相続法改正6) 

今回の相続法改正では、
第348回 婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の贈与等の優遇措置(改正相続法2)
で説明したように、配偶者に対する居住用不動産の贈与の持ち戻しが免除されるという配偶者の優遇措置が
取られています。

今回説明する配偶者居住権の新設も
配偶者の優遇措置となります。

配偶者居住権というのは、
配偶者が被相続人の死亡時に所有の建物に居住していた場合には
配偶者居住権を取得することにより
一定期間あるいは亡くなるまで無償で居住することができる権利です。

この制度がどうして、配偶者の優遇措置なのか
ご説明します。

被相続人が高齢だった場合、通常は配偶者も高齢です。
配偶者は被相続人が亡くなった後もそれまでずっと被相続人と暮らしていた家で
暮らしたいと思うのが普通です。
そのため、通常は、被相続人の自宅の土地建物は配偶者に相続させようとすることが
多いです。
しかし、遺産が多い家庭では、それでも、何とかなりますが
下記のようなケースでは、配偶者が生活に困ってしまうということにもなりかねませんでした。

遺産が、自宅の土地建物4000万円、預貯金4000万円、
相続人が配偶者A、子供B、子供Cというケース。

法定相続分では、配偶者A2分の1、子供B4分の1、子供C4分の1となります。
それで、配偶者Aがそのまま自宅で暮らそうとして自宅の土地建物を相続するとすれば
配偶者A自宅土地建物4000万円、子供B預貯金2000万円、子供C預貯金2000万円となり
配偶者Aは他の遺産は相続できなくなります。

そこで、配偶者Aが、自宅土地建物の所有権ではなく、配偶者居住権を取得することとします。
配偶者居住権が、土地建物に対し、どれくらいの評価額となるか、
実際に裁判等が始まってみないとわかりませんが
法務省は所有権の50%くらいを想定しているようです。
私個人は配偶者居住権は第三者に譲渡したりできない一代限りの権利なので
借地権よりも弱いことから、借地割合よりももっと低い割合と評価することが妥当だと思います。

ただ、法務省の例が50%なので、50%として説明します。
先ほどの例で、配偶者Aは、配偶者居住権を取得するのであれば
評価額が自宅土地建物の50%である配偶者居住権を取得することとなりますから
配偶者Aは配偶者居住権2000万円となります。
配偶者Aは、遺産総額8000万円の2分の1である4000万円を取得できますから
まだ、2000万円を相続することができます。
そこで、預貯金から2000万円を取得することができます。

子供Bと子供Cは、
配偶者居住権付きの土地建物を2分の1ずつ相続して
預貯金も1000万円ずつ相続するか
どちらかが配偶者居住権付きの土地建物を相続し
預貯金2000万円を相続するかという話になります。

配偶者がこれまで自宅に引き続き住もうと思ったら
評価額の高い自宅の所有権を相続しなければならなかったのに
これからは、所有権よりも評価額が低い配偶者居住権を取得することにより
所有権と配偶者居住権の差額分を預貯金等で相続することができ
配偶者が引き続き自宅に住める上に
預貯金も相続することができ、今後の生活に支障が出にくくなる
ということになりました。

この配偶者居住権は、遺贈により取得させることもできますが
生前遺贈をせずに亡くなった場合は、
遺産分割調停や審判の中で、配偶者が配偶者居住権を取得したいと
主張すれば、
配偶者が配偶者居住権を取得することが可能となります。

ただし、この配偶者居住権は、今回の改正の目玉であったにもかかわらず
登記などが必要なことから、
施行は、2020年4月1日から、となっています。
したがって、改正相続法が7月1日から施行されたとしても
配偶者居住権を取得することができません。
その点は注意が必要となります。





( 2019/07/02 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第349回 遺産分割協議成立前に預金が下ろせるようになりました(改正相続法3) 

7月1日から施行される改正相続法の説明の3回目となります。
今回は、遺産分割協議成立前でも預金が下ろせるようになった
というお話です。

以前は、預金は金銭債権だから、各相続人は自分の相続分は
直接銀行に行って下ろせるというのが最高裁判例でした。
しかし、平成28年の最高裁判決により
預金債権は遺産分割の対象財産であって、
単独で払い戻しをすることはできないこととなりました。

こうなると、銀行に被相続人の死亡を知らせた場合口座が凍結され、
遺産分割協議が成立するまで預金を下ろせないこととなってしまいますから、
例えば夫の収入(預金)で生活をしていた妻などは
急に生活資金が無くなってしまい困ることとなります。

また、本人の預金が下ろせないため
本人が亡くなるまでの入院費用が払えない、
葬儀費用が払えないなどの問題が起きてしまいます。

そこで、今回の改正相続法では
遺産に属する預貯金の一定額を
遺産分割協議が成立しなくても
相続人の1人が下ろすことを認めました。

どれくらい下ろせるかというと
預金額の3分の1×法定相続分となります。
例えば、Aさんが妻Bと子供2人がいて
預金600万円を残して亡くなったとします。

この場合、妻Bは、預金額の3分の1×法定相続分2分の1=6分の1である
100万円を遺産分割協議成立前でも下ろすことができます。

では、複数の銀行に預金があった場合はどうなるでしょうか。
この場合各銀行ごとに払い戻し限度額を計算することとなります。
先ほどの例で、AさんはA銀行に600万円、B銀行にも600万円残していた場合は
妻BはA銀行から100万円、B銀行からも100万円の合計200万円を
下ろせることとなります。

また、先ほどの例で預金が1000万円あったらどうなるでしょうか。
預金額の3分の1×法定相続分2分の1=6分の1は166万6666円となります。
しかし、法律では、1金融機関で150万円が限度とされています。
したがって、1つの銀行で預金が1000万円あっても、
妻Bは166万6666円を下ろすことはできず
150万円までしか下ろせないということとなります。
預金が1つの銀行に2000万円あっても
150万円しか下ろせないということとなります。

1つの銀行での限度額が150万円と決まっているために
預金が1つの銀行に何千万円もあった場合でも
150万円しか下ろせません。
そうすると、葬儀代は支払えても生活に困る方も出てくるでしょう。

その場合には、仮払いの仮処分を裁判所に申し立てることにより
銀行預金を下ろせることとなります。
何千万円もの預金があるけれども遺産分割協議が成立しないので
相続税が払えないということはよくあることです。
そういう場合には、仮払いの仮処分を利用することが可能です。

これまでは、保全のj必要性が厳格でしたが
共同相続人の利益を害しない限り
家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。

このように改正相続法では、預金の払い戻しについて
少し便利になりました。







( 2019/06/11 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第348回 婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の贈与等の優遇措置(改正相続法2) 

改正相続法の説明の第2回目です。
前回は、改正相続法では、遺留分の制度が変わったという
お話をしました。

第346回 改正相続法施行は今年の7月1日から(改正相続法1)

今回は、婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の贈与等の優遇措置について
お話しします。

タイトルが長いですが、内容は、婚姻期間20年以上の配偶者、即ち夫や妻に
居住用不動産を贈与や遺贈をすると優遇措置が受けられるということになります。

どのような優遇措置なのか説明します。
優遇措置とは、持ち戻しの免除の推定がされるということとなります。

具体的にどういうことか説明します。

Aさんには、妻Bと子供CDがいました。
Aさんは、自宅(評価額2000万円)を妻Bに贈与の特例を使って
生前贈与をしました。
Aさんが亡くなった際に、預貯金が6000万円残されていました。

法律が改正される前は、この場合、自宅の生前贈与は特別受益となり
遺産に加えて相続分を計算することとなりますから
遺産は預貯金6000万円+自宅2000万円=8000万円
となります。
そして、法定相続分は、妻B2分の1、子供C4分の1、子供D4分の1となりますから
取得する遺産は、妻B4000万円、子供C2000万円、子供D2000万円となります。
妻Bは既に自宅2000万円をもらっていますから、BCDは預貯金6000万円を
2000万円ずつ分けるということになります。

ところが、改正相続法では、特別受益の持ち戻しを免除することが推定されていますので
持ち戻しを免除しないことを示す証拠がない限り、
持ち戻しが免除されることとなります。
持ち戻しとは、先ほどの例で、生前贈与された自宅を遺産に加えて相続分を計算したことです。
持ち戻しが免除されるとは、生前贈与された自宅を遺産に加えずに相続分を計算してよいということです。

そうなると、前記の例では、遺産は6000万円となり、
妻B2分の1、子供C4分の1、子供D4分の1となりますから
妻Bは、預貯金を3000万円、子供C、Dは預貯金を1500万円ずつ相続する
ということとなります。

妻Bは、改正される前の相続法によれば
自宅と預貯金合わせて4000万円しか受け取れませんでしたが
改正相続法によれば
自宅と預貯金を合わせて
5000万円を受け取ることが可能となるということです。

これが、婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の贈与等の優遇措置となります。

この優遇措置は、婚姻期間20年委以上の配偶者に、生前贈与や遺言書を書かないと
受けられませんので、亡くなった配偶者が残された配偶者に対し生前贈与するか
遺言書を生前に書いておく必要があります。

また、贈与や遺言の対象は居住用不動産ですから
賃貸アパート等は、対象になりませんので、注意が必要です。

住居兼店舗や住居部分がある賃貸マンション等は全部が持ち戻し免除がされるのか
住居部分だけ持ち戻しが免除されるのか、意見が分かれますので
裁判で争われることになると思います。








( 2019/06/04 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第346回 改正相続法施行は今年の7月1日から(改正相続法1) 

先週は、民事執行法に関する改正について
お知らせしましたが、
今回は、相続法(民法)の改正についてです。
相続法が改正された話は、
以前ちょっとしましたが、
改正された相続法が今年の7月1日から
施行されます。

7月1日以降に発生した相続からは
新しい法律が適用されることとなります。

今回から何回かに分けて改正相続法について
説明します。
民法は、相続法の分野だけでなく
債権法も改正されましたが
施行されるのは相続法の方が早いということになります。
改正債権法についても
施行される直前にお話ししようかと思います。

まず、今回は、遺留分について説明します。
遺留分というのは、簡単に言うと、兄弟以外の相続人に認められる
最低限保障される相続分のことです。
兄弟姉妹には遺留分はありません。

相続人が親あるいは祖父母など直系尊属のみのときだけ法定相続分の3分の1で
他の配偶者、子供は法定相続分の2分の1となります。

この遺留分の制度が大きく変わりました。
今までは、遺留分は、原則として持ち分でもらう権利でした。
Aさんの相続人が長女X、長男Yだとして
Aさんが長男Yに遺産を全部相続させる旨の遺言を書いていたとします。

遺産が2000万円の土地の場合、
長女Xの遺留分は4分の1ですから
遺留分を請求するときには
これまでは
長女Xは土地の4分の1の持ち分の名義を変更するよう請求する
こととなっていました。

ところが、今回の改正で、
遺留分は、原則としてお金に換算して請求することとなりました。
上記の例で言うと、
長女Xは、4分の1である500万円を遺留分として請求できる
ということになります。

今回の改正で、土地や株なんかよりお金が欲しいという方には
便利な制度になりました。
今まではお金が欲しいと思っても、遺留分を請求される側がお金で払うか
物の持ち分で渡すかを決められたので、お金を請求することができませんでした。
そこで、これまでは、遺留分の行使によって共有持ち分を取得して
その後に共有物分割請求をして、お金に変えるという2回の請求をしていました。
それが今回の改正で1回の裁判でお金を取得することができるようになったので
お金が欲しい方には便利になったということです。

しかし、逆に、お金でなく、土地の持ち分や株式の持ち分で欲しいと思っていた方には
残念な結果となってしまいました。
今回の改正では、遺留分はお金でしか請求ができなくなってしまったからです。
ただ、これまでも、遺留分は相手からお金で払うと言われた場合は
お金しか請求はできませんでした。
それを考えると、遺留分には
もともと土地の持ち分や株の持ち分でもらう権利はなかったとも言えますので
変わりはないとも言えます。

遺留分をお金で支払う側からすると
遺産に預金がないと
なかなか遺留分を支払う現金が用意できないということもあります。
そこで、今回の改正では、お金の支払いを猶予する制度もできました。
どういう場合にどれくらいの期間猶予されるのかは今後の運用ということになると思いますが、
支払う側の資金繰りを考慮するということになります。

今回の改正では、この遺留分が大きく変わりました。注意してください。

( 2019/05/21 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第342回 先祖代々のお墓をどうするか? 

日経新聞によると
墓石解体業がビジネスになっているそうです。

墓石の解体は、
今までの古くなった墓石を新しいものに変えるケースもありますが
現在は、そのようなケースよりも
「子供にお墓を引き継げないので墓じまいをしたい」
というケースが増えているようです。

子供から見れば、自分の両親が入っているお墓1つだけであれば
面倒も見るでしょうが、
両親が、先祖から受け継いだ墓も、しかも、そのお墓は遠方にあるなどとなると
子供たちがお墓を見るのは大変になります。

実際、僕もお墓を継ぎたくないという相談を受けたり、
お墓をどのように処分するかが問題となる相続事件を受任したりしました。

このような事情から、墓石解体業ビジネスが
流行っているということのようです。

ただし、墓石の処分を請け負った業者が
不法投棄をするケースもあるようです。

墓じまいの契約をする場合には
契約相手が
実際にどのように処分をするのか確認してから
契約を結ぶ必要があると思います。
( 2019/04/16 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第332回 遺言の内容を知ったら、1年以内に遺留分減殺請求(相続5) 

今回は、相続シリーズの5回目です。
前回は、自筆の遺言を発見したらすぐに検認の申立を
する必要があるというお話をしました。
第306回 自筆の遺言書がある場合はすぐに検認の申立の義務があります(相続4)

そうすると、検認により、他の相続人に遺言の内容が知られることとなります。
みなさんが、運よく、亡くなった方から
「私の遺産は全て○○に相続させる」と
みなさんに遺産を全て相続させるという遺言を書いてもらえたとしても
全ての遺産をみなさんが取得できるわけではありません。

法律は、遺留分と言って、
法定相続人のうち、子、孫、両親、祖父母、配偶者には
法定相続分の2分の1を最低限の取り分として
定めているからです。
ただし、両親、祖父母のみが相続人となるような場合は
両親、祖父母の遺留分は3分の1となります。

例えば、Aさんには妻Bと子供Cがいます。
Aさんが妻Bに全ての遺産を相続させるという遺言を書いた場合は
子供Cは、法定相続分である2分の1の2分の1=4分の1の遺留分があることとなります。

法定相続人のうち、兄弟には遺留分が認められていませんから
兄弟が相続人の場合に
遺言書で全て遺産を相続させると書いてもらえれば
遺産は全てみなさんが取得できることとなります。

例えば、Aさんには、両親、祖父母、子供もなく、妻Bと妹Cがいます。
遺言を書かない場合は、法定相続分は妻Bが4分の3、妹Cは4分の1となります。
ところが、妻Bに全ての遺産を相続させるという遺言を書いた場合は
妹Cには、遺留分がないので、全ての遺産を妻Bが取得することとなるのです。

検認をすると、法定相続人に裁判所から呼出状が来ます。
そして検認の日に、遺言書の内容がわかることとなります。
遺留分は、遺言の内容から、自分の遺留分が侵害されていると知ったときから
1年に内に行使しないと時効で消滅してしまいます。

これが過ぎてしまうと、どんなに優秀な弁護士も遺留分を取り戻すことは
難しくなります。

自分に不利な遺言がかかれていた場合は
まず、弁護士に相談された方がよいと思います。

( 2019/02/05 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第318回 相続分の無償譲渡は生前贈与とする最高裁判決が出されました 

相続分の無償譲渡と言われてピンと来る方は
なかなかいないかもしれません。

相続をすると、各相続人は法定相続分が決まっており
それに従って相続財産(遺産)を取得することができます。

この相続財産を取得できる割合を相続分といいますが
この相続分は、共同相続人にも
相続人でない第三者にも譲渡することが可能なのです。

相続人でない第三者は、相続分の譲渡を受けると
相続人ではありませんが遺産分割協議に参加することとなります。

今回の裁判は
父親の相続の際に、母親が持っている相続分を
子供の1人に譲渡されたケースで、
その後、母親が亡くなって、母親の相続で、
父親の相続のときに母親の持っている相続分の無償譲渡を受けたことは
特別受益だから遺留分の対象となるとして
起こされたものです。

この場合、
もともと子供は相続人ですから
相続財産を取得する権利はあるのであって、
遺産のうち、どの遺産を誰が取得するかは
遺産分割協議で決まることになります。
そこで、相続分の無償譲渡を受けた子供は
相続分を無償で譲り受けても、生前贈与に当たらず
特別受益には当たらないと主張しました。

しかし、最高裁は、
確かに、相続分の譲渡は具体的な財産ではないけれども
相続分の譲渡を受ければ、
それに従って相続財産から受け取れる財産が増えるのだから
経済的利益が移転したことになり
生前贈与にあたると判断しました。

遺産分割協議で相続分の無償譲渡が利用されることは少ないと思いますが
相続分の無償譲渡がなされた場合は
次の相続で、特別受益の主張が可能ですので
覚えておいても損はない判決だと思います。

( 2018/10/23 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第315回 平尾昌晃の著作権収入約60億円を巡る遺産相続争い 

作曲家平尾昌晃さんの
今後50年間で約60億円という著作権収入を巡って
争いが起きているようです。

通常、遺産相続争いと言えば、
どの遺産を誰がどれくらい相続するのか、
あるいは、
遺言が書かれているけれども有効なのか無効なのか
有効だとすれば他の相続人には遺留分が認めれるか
ということが争われます。

ところが、本件では、
会社の代表者の選任方法などが争われているようです。
なぜかと言えば、
平尾さんの著作権を管理し、著作権収入を得ているのは
平尾昌晃音楽事務所という会社であって、
その平尾昌晃音楽事務所の過半数の株を持っているのも
別な会社だからです。

これら2社の株を誰がどれくらい持っているのか
誰が代表取締役をやるかで、
著作権料収入をどうするのかが決まってくることとなります。

そこで、平尾昌晃さんの二男の方は
平尾さんの後妻さんが代表取締役に選任されているのは
適正な手続きに基づいていないので無効だという主張をしているようです。

平尾さんは作曲家ですが
一般の方でも、アパートやマンション、貸しビルなどを
会社所有にしている方も多いです。
その場合、会社の株を過半数押さえて
その会社の代表取締役になれた相続人が一番得をすることになります。

その場合は、遺産争いなのだけれども
会社を巡る争いという形を取ることとなります。

( 2018/10/02 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第312回 迷子の土地をなくすためには 

所有者のわからない土地を
「迷子の土地」と呼ぶようです。
この迷子の土地は年々増加しているようです。

土地は持っていれば、価値が上がると思われていた時代には
考えられませんが、
それだけ持っていても仕方がないと思われている土地が
増えているのかもしれません。

所有者の不明な土地は
土地の再開発にとっても
地域の保安や安全からも
好ましいものではありません。

土地は手を入れなければ
荒れてしまいますし、
荒れている土地の近隣も
雰囲気が悪くなってしまいます。

さて、この迷子の土地をなくすために
いろいろ議論がされているようです。
登記を義務付けるなどの案がなされています。

しかし、最近は、離婚も増加していますし
親類の付き合いも希薄になっています。
したがって、自分が相続人となっていることを知らない
というケースもあると思います。
例えば、幼いときに父親と母親が離婚して
母親に付いて行ったケース。
このケースでは、父親が1人で亡くなった場合
子供に連絡が来ない可能性があります。

さらには、父親に弟がいて生涯独身で子供も配偶者もなく亡くなったケース。
兄弟の子供が相続人になりますが、父親とも疎遠になっているくらいですから
父親の兄弟が亡くなったことも知らないでしょうし、
自分が相続人となることも知らないのが普通でしょう。

このようなことを考えると
死亡届が出されたときには
役所が相続人に
相続が発生し相続人となったことを通知する必要があると思います。
その上で不動産があるので相続手続きをするように
通知をしたらよいのではないでしょうか。

今は、土地建物と言った不動産は固定資産税を課税する市町村ごとにしか
わかりません。
死亡届を出された市町村でも
亡くなった方が、自分のところの不動産しかあることはわからないのです。
そこで、他市町村にある不動産については、
死亡届を出された市町村でもわからないのですから
縁が薄かった相続人も調べてわからない可能性があります。

したがって、不動産については、
市町村ごとの管理ではなく
亡くなった人が
全国のどこに不動産を所有しているのかどうかわかるようにしないと
迷子の土地は無くならないと思います。

その上で、人が亡くなったときは
相続人に通知が行くということであれば
迷子の土地は少なくなっていくのではないかと思います。




( 2018/09/04 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第310回 改正相続法が成立 

民法が取引に関する債権法が改正されたのに続き
相続法も改正されました。

この改正相続法、公布の日(平成30年7月13日)から
1年以内に施行されることになっていますから
来年の今ごろには施行されていることになります。
配偶者の居住権や自筆証書遺言の公証役場の保管などは
公布の日から2年以内となっていることから、
これらは来年には施行されないと思います。

改正相続法が施行されてから亡くなった相続に
新しい相続法が適用されることになります。

改正相続法で、変わった主な点は、
以下のとおりです。

1 配偶者の居住権の保護
2 配偶者への贈与等の持ち戻し免除の推定
3 遺産の仮払制度
4 遺産分割前に遺産を処分した場合の遺産の範囲
5 自筆証書遺言の方式の緩和
6 遺言執行者の権限の明確化
7 自筆証書遺言の公証役場での保管
8 遺留分の金銭による請求
9 遺言による相続の登記
10 相続人以外の者の貢献についての金銭請求

上記の10個が法務省のホームページに掲載されている
主な改正点となります。

一つ一つについては
また詳しく説明していきたいと思います。
( 2018/08/14 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第309回 ポーラHDの株を巡る相続の訴訟は、印紙代だけで1.7億円 

週刊ダイヤモンドなどの記事によると
化粧品大手のポーラ・オルビスホールディングスの株を巡って
相続に関する訴訟が起こされたようです。

訴訟の内容は、
現社長が保有するポーラHDの株(約4191万株)が
亡くなった現社長の叔父さんの遺産であること、
したがって、叔父さんの配偶者である妻が法定相続分に従い4分の3相続したこと
の確認を求めるというものです。

週刊ダイヤモンドの記事によれば、
過去に、叔父さんの遺産486億円を巡って
叔父さんの奥さんと現社長らは、約100件もの訴訟を争った結果
和解したそうです。
しかし、叔父さんが所有していたグループ会社の株の譲渡契約書を
現社長がねつ造したという内部告発があって、
叔父さんの奥さんは、グループ会社の株式の譲渡契約が無効であるから、
ポーラHDの株は叔父さんのものであって、
当然叔父さんの奥さんが相続している
という訴訟を起こしたということです。

現社長側は、一度和解していることから、
訴訟では争えないという主張をしているようです。

一度和解してしまうと、
後で訴訟で争えなくなるのが原則です。

しかし、奥さんからすれば、
本件の株式については現社長の株式譲渡契約書のねつ造により
遺産であることがわからなかったこと、
元々の遺産が486億円であるのに対し、今回問題となっている株式は
1615億円と元々の遺産額の何倍もの問題であることからすれば
和解の対象とはなっていないということだと思います。

遺産だとわからなかった原因が相手の契約書の偽造にあるということであれば
奧さんの方の主張も十分通る見込みはあると思います。

裁判所がどう判断するか注目ですね。

元々の遺産が486億円で、それを巡って
100件も訴訟が起こされたのもすごいですが
1件でその3倍以上もの金額である1615億円もの遺産を巡っての訴訟は
486億円がちっぽけに思えるくらいすごいですね。

裁判所に納める印紙代だけでも
1億7000万円だそうです。

ちょっと、僕はそこまで大きな訴訟はやったことがありません。
弁護士費用はいくらくらいなのでしょうね。




( 2018/08/07 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第306回 自筆の遺言書がある場合はすぐに検認の申立の義務があります(相続4) 

被相続人の自筆の遺言書があった場合
保管者や発見者は、
被相続人が死亡して相続が発生していると知ったときは、
遅滞なく、遺言書の検認を家庭裁判所に申し立てる必要があります。

遺産は、被相続人の自筆の遺言で
全部自分のものだと喜んではいられないのです。

この検認という手続きは
遺言書の偽造を防ぐために
裁判所が、遺言書の状態や内容を確認して
保存をする手続きということとなります。
遺言書や封筒をコピーして
検認調書という形で書類として残すこととなります。

自筆で作成された遺言書を自筆証書遺言と言いますが、
この自筆証書遺言は、
家庭裁判所の検認を受けないと
被相続人名義の預金を下ろしたり
不動産の名義を変更したりすることが
できません。

検認の際には、被相続人の生まれてから亡くなるまでの
戸籍と被相続人の相続人の戸籍を提出する必要があります。
被相続人の相続人全員が裁判所から呼び出し状を受け取るので
遺産を全部一人で相続することとなったことを
他の相続人に知られることにもなります。

まあ、遺産分割の話をずっとしなければ
他の相続人から遺産はどうするという遺産分割協議の申し入れがあれば
自分一人に遺産を相続させるという遺言があると相手に言わなければならないので
同じかもしれませんが。

自筆証書遺言は検認が必要ですが
公正証書遺言の場合検認は不要です。

公正証書遺言で遺産を全部相続させると書かれてあれば
その遺言書の正本を持って銀行に行けば
預金を全部下ろして自分のものにできますし、
不動産の名義も変更することが可能です。
(戸籍謄本や除籍謄本など必要書類を合わせて
用意することは必要です)

そういう意味では、公正証書遺言は作るのは
面倒だし、費用がかかりますが
被相続人が亡くなってからの手続きは
検認が不要な分公正証書遺言の方が便利です。

自筆証書遺言は、紛失、焼失、破損、汚損等により
無くなってしまうと、効力が無くなってしまうし
全文自筆で、日付が書かれていて、本人の署名捺印があることが
要件ですが、その要件が欠けていても無効になってしまうことから
遺言書を作成するなら
公正証書遺言を作成することをお勧めします。
( 2018/07/17 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第297回 ビットコインを始めとする仮想通貨の相続問題 

昨年は、ビットコインを始めとする仮想通貨の中には
購入した金額よりも20倍になるものも現れ、
億の利益が発生した方もいるようです。
億の利益が発生した方は
「億り人」などと呼ばれていたようです。

仮想通貨は、法律上の位置づけが
曖昧ではありますが
譲渡した利益には課税されますし
相続税も課せられることから
財産として取り扱われることになります。

そこで、
ビットコインを始めとする仮想通貨も
相続の対象となります。

しかし、ここで問題なのは、
仮想通貨は、公開鍵と秘密鍵で
取引をして、秘密鍵を持っている人が所有者となる仕組みに
なっているようです。
そして、この秘密鍵は、暗証番号のようなものなのですが
通常は、スマホ等で使用しているアプリの中で管理されており
暗証番号のように持ち主が1回1回入力することはありません。

スマホ上でアプリを使用することによって
秘密鍵の認証を行っています。

ここで、仮想通貨の使用者が亡くなってしまった場合
相続人は、スマホのパスワードを知らなければ
スマホを起動できません。
そうなると、当然スマホ内にある仮想通貨のアプリも
使用できませんから
秘密鍵の認証を行うことができません。

そうなると、せっかく仮想通貨により
一財産を築いていたにもかかわらず
相続人がその仮想通貨を使用できないということに
なってしまう可能性があるのです。

使えないだけならまだしも
国税庁は、仮想通貨について
相続人がパスワード(秘密鍵)がわからない場合でも
相続税を課すと言っています。

どういうことかというと
相続人は秘密鍵がわからないから使えないにもかかわらず
相続税は課されるということです。

仮想通貨の相続のことを考えると
秘密鍵かスマホのパスワードを
相続人になるかもしれない人に
教えておく必要があるかもしれません。

しかし、仮想通貨の秘密鍵を教えてしまうと
その相続人になるかもしれない方に仮想通貨を処分されてしまう可能性もあります。
スマホのパスワードを教えてしまえば
中を見られてしまい、パスワードをかけている意味も無くなってしまいます。

死ぬ間際に教えようと思っても
事故等で亡くなってしまう場合は
伝える暇はないですからね。

仮想通貨で、一財産を持っている人は
相続について対策をしておいた方がよいと思います。
以上のことから、仮想通貨の相続はなかなか難しい問題があります。

( 2018/05/15 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第296回 相続放棄は3カ月以内に(相続3) 

ゴールデンウイーク中は、
面白い事件や判決がなかったことから
今回も相続のお話しです。

前回準確定申告の話をしてしまいましたが、
その前に、相続放棄をする場合は
相続を知ってから3カ月以内に
相続放棄をしなければなりません。

相続放棄というと
世間一般では
遺産分割協議書で遺産を取得しないと合意する場合も
相続放棄と言われています。

しかし、正式な相続放棄は
家庭裁判所に相続放棄の申述書という書面を提出して
する必要があります。

この相続放棄をした場合は
被相続人の借金などの負債を相続しなくて済みます。
逆に、相続放棄をしてしまうと、被相続人の財産は一切相続できなくなります。

相続放棄は最初から相続人にならなかったとする制度で
プラスの財産のみを相続し
マイナスの負債を相続しないという
都合のよいことはできませんので
その点は誤解のないようにしていただけたらよいと思います。

相続放棄をする場合、相続放棄の前後で、
被相続人の財産を処分してしまうと
相続放棄ができなくなってしまったり
相続放棄が無効となってしまったりしてしまいますので
注意が必要です。

また、被相続人と離れて暮らしていた場合
被相続人にどんな財産があって
どんな負債があるのか
3カ月ではわからない場合もあります。

その場合は、相続を知ってから3カ月がたたないうちに
家庭裁判所に申立をして、相続放棄をする期間を伸ばしてもらうことができます。
これは、「熟慮期間の伸長」と呼ばれています。


( 2018/05/08 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第295回 確定申告をしていた人が亡くなったら準確定申告(相続2) 

以前、人が亡くなったら、死亡届を出すというお話をしました。

今回は、準確定申告の話をします。
人が亡くなったら、相続税の申告の心配をする方は
多いと思います。

しかし、その前に、準確定申告という亡くなった方の所得税の申告を
する必要があります。
期限は亡くなったことを知ってから4カ月以内となります。

準確定申告をしなければならない人は
亡くなった方(被相続人)が生前に確定申告をしていた場合の相続人となります。
確定申告をしている人は、
自営業の方、アパートやマンションを賃貸している方、複数から所得を得ている方、
年収が2000万円を超えている方などです。

亡くなった方が税理士に依頼していた場合は
生前に依頼していた税理士に依頼するのが
事情をわかってもらえているので、
一番よいと思います。

亡くなった方が税理士に依頼せず
自分で申告していた場合は
通帳や請求書から収入を把握して
領収書やカードの明細から経費を割り出して
申告しなければならないので
結構、4カ月以内に申告するのは大変です。
本人が亡くなって、悲しんでいる暇はない
かもしれません。

どのような収入や支出があったかは、前年度の確定申告書等も
参考にするのがよいかもしれません。
過去の確定申告書やそれに関する資料は
亡くなった方の遺産を把握する上でも役に立ちます。
パソコンの中に、これらの情報が入っているかもしれませんので
チェックが必要となります。





( 2018/05/01 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第292回 人が亡くなったら、まず(相続1) 

最初に、勤務弁護士として雇われた事務所を独立してから、
「分けた後では遅すぎる!相続・遺産分割する前に読む本」を
平成14年に書いたこともあり、
その後、たくさんの相続に関係する相談や
事件を受けてきました。

そこで、このブログでも
話題となる事件や判決がないようなときに
相続について書いて行こうと思います。

人が亡くなったら、
亡くなった人が、親や配偶者や兄弟や子供などで
悲しい気持ちでいっぱいで何も考えられない
ということもあるかもしれません。

しかし、そういう悲しい気持ちのときでも
しなければならないことがあります。

まず、通夜や葬儀の準備をし、
亡くなった方の兄弟や親類や友人・知人、
仕事をしていれば仕事の関係の方に
連絡をする必要があります。

また、法律上は、死亡届を市区町村に提出する必要があります。
期限は、死亡の事実を知ったときから
7日以内となっています。
死亡届を出すには、死亡診断書が必要になっています。

この死亡届は、死亡した市区町村に提出してもよいのですが
死亡した住所と本籍地が異なるときに
死亡した住所に死亡届を提出すると
後で相続手続で必要となる
除籍謄本ができるのが遅くなります。
通常、人が亡くなってすぐに相続手続をする人はいないので
それでも十分です。

ただし、亡くなって直ぐに相続手続をする必要がある場合などには、
死亡した住所と本籍地が異なるときに
死亡した住所に死亡届を出してしまうと
除籍謄本ができるのが遅くなってしまうことから
本籍地に届け出た方がよいこととなります。

一般的に、相続手続では
本人の死亡を証明するものとして
除籍謄本(本人の死亡が記載されている戸籍のこと)が
あればよいとされますが、
生命保険等の手続では
死亡診断書が必要とされるので
注意が必要です。

除籍謄本は役所で取得することができますが
死亡診断書は、死亡を診断した病院で発行してもらうこととなります。






( 2018/04/09 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第287回 民法の債権法に続いて相続法も改正 

個人間の紛争や
個人と会社の紛争、会社間の紛争など
いわゆる民事事件の解決の基本となる
民法の債権法が改正されたのは、
昨年のことです。
施行は、平成32年4月1日です。
(そのときは平成ではなくなっていると思いますが)

ということで、弁護士としては
改正法を勉強しないといけないわけです。
そう思っていたら、
相続法の改正案が国会に提出されたようです。
裁量労働制などの問題があり
今国会で改正法が可決されるかどうかは
わかりませんが、
債権法に続いて
相続法も変わることとなります。

債権法、相続法と言っていますが
どちらも、民法という法律の一部で、
債権法や相続法という名前の法律はありません。

民法の債権に関する分野の法律を
「債権法」と呼んでいて
民法の相続に関する分野の法律を
「相続法」と呼んでいます。

ここで、債権(さいけん)というのは、人や会社に対する請求権のこと
を言います。
裁判のほとんどが、人や会社に対する請求権の問題ですから
ほとんどが債権法の問題となります。
大学に入学してから法律を勉強して34年間。
もちろん、司法試験のために勉強したのも
今の民法で、
仕組みや制度、結論、判例等の考え方は
身に付いています。
それが変わるとなると、
なかなか慣れるまでは大変です。

まだ施行まで、2年あるので勉強すれば何とかなりそうですが
しかし、その施行までの2年間は、
これまでの法律が適用になるところが
曲者です。

この民法改正は
債権法だけでも大変なのに
続いて相続法までも変わるということです。

みなさんのお役に立てるよう
頑張って、改正法を勉強することにしたいと思います。

改正法施行までにお話ししても
実際には適用されないので
改正法が施行されたら
改正法についてお話をしたいと思います。
( 2018/03/06 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第284回 花押は押印に当たらない最高裁判決のその後 

第198回 花押は押印に当たらないとする最高裁判決
お話ししたとおり、
花押(かおう)は、自筆証書遺言の要件である押印に当たらないので
花押が記載してあっても
遺言は無効となりました。

その事件は、遺言として無効であっても
亡くなったことを理由とする死因贈与として有効かどうか
ということが争われていました。
死因贈与というのは、
死ぬことを条件として
贈与する契約のことです。
遺言は、遺言者が一人で遺産を誰に相続するか決めるものですが
死因贈与は、贈与する人ともらう人が
贈与する人が亡くなったときに贈与をし
これを受ける約束をすることで
遺言と死因贈与は似ていますが、
法律的には異なるものとして取り扱われます。

差し戻し審での高裁では、
この点が争われ、高裁判決は
遺言として無効であっても
死因贈与として有効と判断したようです。

そして、この度、最高裁でも
その高裁の判断には問題がない
ということで上告を受理せず、
高裁判決が確定したようです。

遺言として無効であっても
死因贈与として有効ということは
結局遺産は、被相続人の思い通りに
相続人に取得させることができることになります。

自筆証書遺言は
全文自筆で書く必要があって
日付けと署名捺印が必要で
要件を欠いて無効になってしまうことは
結構あります。
そういう場合に遺言書は無効だからと
諦めないで
死因贈与と言えないかどうか
弁護士に相談された方がよいと思います。
死因贈与と言えれば
その内容のとおりに
遺産を取得することが可能となります。



( 2018/02/13 18:41 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第283回  共有と言えば、聞こえはいいですが 

世の中に、共有の土地や建物は
意外に多いです。

夫婦、あるいは親子が共同で、マンションを買ったり
戸建てを建てたりする場合は、
共有にしてあることが多いです。

これは、購入資金に基づき
持ち分もそれに応じて
はっきりさせておこうというもので
ある意味合理的です。

しかし、不動産が共有となっている一番の原因は
遺産分割です。
多くが親あるいは祖父の代に相続する際に
共有としてそのままということが多いです。

そして、兄弟のうち1人が
その建物に住んでいることが多いです。

兄弟のうちの1人が生きているうちは
他の兄弟も黙って使用させてきたのでしょうが
兄弟が亡くなったときに、
他の兄弟から、親の代の遺産分割をしてほしいと言われたら
残された家族は、たまったものではありません。

例えば、4人兄弟ABCDがいて
親から相続した土地建物には長男Aとその家族がずっと住んでいたとします。
Aが亡くなったとたんに、
BCDが、土地建物について親の代の遺産分割をして欲しいと言ってくる可能性はあります。

兄弟は平等ですから、
4人兄弟だとしたら、残された家族の相続した分は
4分の1しかありません。
4分の3の代償金を支払わなければ
そこに住むことはできなくなります。

この相続の問題点は、
Aが生きているうちに、
Aが相続するという遺産分割で決着しておかなかった
ということになります。
もちろん、その際にAが代償金を支払わなければならない
可能性がありますが
Aは親が亡くなってから家族と一緒に
住んでいて他の兄弟は文句を言わなかったくらいですから
それは減額するなり
分割払いで支払う約束をするなり
方法はあったはずです。

親に遺言書を書いてもらうという方法もありました。

共有にしておくということは
何となく聞こえはいいですが
問題の解決を先延ばしにしているだけで
後でトラブルになってしまうことが多いです。
なるべくなら、その時々で
代償金や売って代金を分けるなど
お金で解決してしまう方が
後で家族が苦しむことになるということは
少ないようです。

( 2018/02/06 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第260回 負動産時代とは? 

先日、朝日新聞で「負動産時代」という記事を見ました。
みなさんも、読んだことがあるかもしれません。

別荘地や山林を
マイナスの資産として
所有者が手放したがっている
という話です。

マイナスの資産だから
「負動産」と名付けたようです。
ただ、「負動産」と名付けたのが朝日新聞かどうかはわかりません。

この問題は、ずいぶん前から弁護士のところに相談が
あった話なのです。

別荘地や山林を一度買ってしまった場合
固定資産税や管理費がかかります。
貸したりできなければ収益は生みません。
別荘地や山林ですから、
そこに住んで生活することもできません。
したがって、マイナスの資産ということになります。
別荘地の場合、共同で道路などの管理費を負担している場合もあって
その管理費を免れられないというケースもあります。

そのマイナスの資産を手放そうとしても
不動産の場合捨てることができないので
売るか、あげるか、相続の際に相続放棄をするしか
手放す方法がありません。

しかし、売るも、あげるも、
相手が買ってくれる、もらってくれることを承諾しなければなりません。

マイナスの不動産を、買う人はもちろん、ただでもらってくれる人もいません。
そこで、不動産を手放すには
相続の際に相続放棄をするしかありません。
しかし、別荘や山林を持っている人は
どちらかと言えばお金持ちで
他にも自宅や預貯金等資産があるケースが圧倒的に多いです。
そうなると、相続放棄をすると
その自宅や預貯金も相続できないということになってしまいます。
したがって、相続放棄はできないのです。

このように、今はマイナスの資産となる不動産もあるのです。
国や地方公共団体が全て無償で取得して管理するという
法律を作るくらいしか解決方法はないですが
今の国や地方公共団体に
役に立たない土地の管理をする財政的な余裕があるか
という問題があり、
そのような法律は今はないので
なかなかうまい解決方法はありません。


( 2017/08/29 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第259回 印鑑を押した後では遅すぎる 

相続・遺産分割の相談で意外に多いのは
何かの書類に印鑑を押してしまったけれども
何とかならないかというものです。

書類は、遺産分割協議書だったり、
白紙の委任状だったり、
銀行に提出する書類だったりします。

遺産分割協議書に署名捺印をしてしまった場合は
ほとんど争う余地はありません。

強迫(脅迫)や詐欺による取り消しはできないかと
相談されるケースが多いのですが
法律上脅迫というためには
ナイフや包丁を突き付けて署名捺印を迫ったり
署名捺印をするまでは帰さないと鍵をかけて部屋に監禁したりした
というくらいである必要があります。

詐欺についても
例えば、署名捺印してくれれば
1000万円払うと言われて
署名捺印をしたら
1000万円は支払われなかったというケースだったとしても
もし本当にそういう約束があれば、遺産分割協議書に普通はそのように書くはずなので
署名捺印をすれば1000万円を支払うと言ったことを
証明するのはなかなか難しいです。

白紙の委任状や遺産分割協議書に署名捺印をしてしまった
という相談もありますが
白紙の委任状や遺産分割協議書に署名捺印をした
ということが証明できれば
何とかなる可能性もありますが
署名捺印をした書類のコピーを取っておかないと
なかなかそれも証明することは難しいです。
白紙であることを証明できたとしても
内容は相手に任せる趣旨だったと
判断されてしまう可能性もあります。

預金の払い戻しの書類に署名捺印をする場合は
署名捺印をしたのがその書類だけであれば
払戻の代表者を決めただけ
ということで、
分割内容については
何も決めていないという主張が通る可能性があります。
また、預金を全部相手に渡す合意だったとしても
他に遺産がある場合は
他の遺産で調整するという合意だったと主張する余地もあります。
ただ、預金は全て相手に与える趣旨だったと
不利に判断される可能性もあります。

印鑑を押す前であれば
弁護士はいくらでもやりようがありますが
印鑑を押してしまうと
不利な内容でもそれを承諾したこととなり、
後から弁護士が争えなくなってしまうのが
ほとんどです。

書類に署名捺印をするときは
署名捺印をしてしまって
不利にならないか
弁護士に書類を見せて相談してから
署名捺印をした方がよいと思います。




( 2017/08/15 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第241回 相続手続が少し便利になります 

法務省の発表によると
今年の5月下旬から
法務省が、相続手続に関し、
「法定相続証明情報」というものを
出してくれることになったそうです。

この手続は
相続人を証明する戸籍を1式だけ揃えて
法務局に持って行くと
法務局で相続関係図を作成してくれて
相続人が誰であるかがわかる証明書として
発行してくれるものです。

これまでは、1つの相続関係を証明するには
何通もの戸籍謄本を取り寄せて
相続関係図は、自分たちで作成しなければなりませんでしたし
その何通もの戸籍謄本の束をいくつもの銀行で使いまわすか
何セットも戸籍謄本を取り寄せる必要がありました。

今回の手続きは、これを法務局で1枚にまとめてくれて
法務局が証明書として発行してくれるので
銀行や税務署、法務局等に提出するには
この1枚を添付すればよいことになり
用意する書類がだいぶ少なくなります。

しかも、法務局は、この証明書を発行する手数料を
無料にしてくれるそうです。

どうしてこんなことを法務局がしてくれるかというと
相続手続が面倒で、相続登記をしないで
放置され所有者がどこの誰かわからない不動産が
増えているからだそうです。

しかし、本当に面倒なのは、
今回法務局に提出することとなった相続人であることを証明する
戸籍一式を取り寄せることです。
戸籍は、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでのものを取らなければなりません。
戸籍をあちこちに移転した人の戸籍は
その自治体ごとに申請する必要があります。
しかも、古い戸籍は、手書きで字が読めないものもあります。

法務局が相続人の面倒を省いてくれるというのであれば
亡くなった方の最後の戸籍を提出すれば
生まれてから亡くなったときまでの戸籍を全部法務局が調べてくれて
今回の証明書を作成してくれるところまでやってもらえると
かなり相続人の負担は軽減されて良かったと思います。

亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍を全て取るのは面倒だという方は
弁護士等に依頼した方がよいかもしれません。
( 2017/04/11 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第233回 相続税対策の養子縁組も有効 

最近、第228回 預金は遺産じゃなかったの?
これまで預金が遺産分割の対象ではなかったけれども
預金を遺産分割の対象とする最高裁判決が出た
というお話をしました。

今回、また相続に関する最高裁判決が出ました。
それは、相続税節税に関するものです。
相続税は、相続人の数により基礎控除というものが認められています。

相続人が子供2人の場合には
3000万円+600万円×2=4200万円が基礎控除となり
遺産が4200万円までは相続税がかかりません。

養子縁組をすると子供が3人になるので
3000万円+600万円×3=4800万円が基礎控除となるので
4800万円までは相続税がかからなくなります。

そこで、養子縁組は節税になるのです。

今回最高裁で争われたのは
この節税目的の養子縁組が有効かというものです。

というのは、養子縁組は真の親子関係を結ぶ意思が必要とされています。
過去、子供が通う学校の学区のために結んだ養子縁組は無効とされています。
そこで、相続税の節税目的の養子縁組は有効かと争われたわけです。
一審は、養子縁組は有効として、
二審である高裁判決は、養子縁組は無効としました。

今回、最高裁判決は
養子縁組が相続税の節税目的だったとしても
真の親子関係を結ぶ意思がなかったとは言えないとして
節税目的の養子縁組を有効としました。

最高裁が認めた節税方法なので
相続税のことを心配している方がいらっしゃったら
養子縁組ということを検討されてみてはいかがでしょうか?
ただ、実際に親子として生活を営んだりする必要がありますので
そのときは、弁護士に相談された方がよいと思います。



( 2017/02/14 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第228回 預金は遺産じゃなかったの? 

昨年末に、預金は遺産分割協議の対象となるという
最高裁判決が出されました。

みなさんは、預金も土地や建物と同じように遺産なのだから
遺産分割協議の対象となるのは当たり前ではないかと
思われていると思います。

しかし、これまで最高裁は、預金は金銭債権なので
相続発生と同時に、各相続人が法定相続分に従って相続することとなるから
遺産分割協議は必要ないとしてきたのです。

だから、
これまでは、法律上は、預金については遺産分割協議をしなくても
相続人は、自分の法定相続分を銀行に請求することが
できたのです。
(ただ、銀行は、このような請求には任意に応じないので
法定相続分の預金を請求するときは弁護士に依頼して訴訟をする必要がありました。)

これまでの最高裁判決によると
土地の生前贈与があって、遺産が預金だけしかない場合
土地の生前贈与を特別受益として考慮できないような場合があり
不平等になるということがありました。
例えば、2人の子供XYが相続人で
1人の子供Yには、土地を1億円生前贈与をして
亡くなったときには、預金1億円のみ残していたというケース。
これまでの最高裁判決によれば
預金は相続人XYに2分の1ずつ当然に相続されることになるので
Yは1億円の土地の生前贈与を受けたのに
預金も5000万円相続できることになり
1億5000万円を取得することができ
Xは5000万円のみ取得できるという不平等が起きてしまうのです。

これまで、遺産分割の事件で、このようなケースに当たることは多く
裁判所にそれはおかしいということをさんざん言ってきましたが
最高裁判決は法律と同じなので
考慮されることはありましたが、
なかなか受け入れてもらえませんでした。

今回最高裁判決の結論が変わったことにより
上記のケースでは、
Yは生前贈与で1億円の土地を受け取っているので
預金1億円は全額Xが相続することとなります。

ただ、逆に、遺産分割協議が成立しないと
相続人が自分の相続分だけでも亡くなった方の預金を使いたいと思っても
下ろして使えなくなりましたので、注意が必要です。



( 2017/01/10 09:27 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第198回 花押は押印に当たらないとする最高裁判決 

みなさん、花押(「かおう」と読みます。)と言われても
歴史に詳しい方以外は
何のことかわからない方がほとんどだと思います。

戦国武将などが、自分の印として
名前の下に、記載するサインのようなものです。

遺言を自分で手書きした場合(「自筆証書遺言」と言います)は
遺言書に署名押印することが法律上の要件となっています。
したがって、押印がなければ、本人が書いたと証明できても
その遺言書は無効となります。

この度、沖縄の琉球王国の名家の末裔の相続で
この花押が法律の要件とする押印に当たるのかが
争われました。

一審と二審は、花押は印鑑と同様に署名と一緒に使用されていたことや
花押の方が認印よりも偽造が難しいなどの理由から
押印があるものとして、遺言書を有効としました。

しかし、今回の最高裁判決は
花押が書くものであって
押すものではないから
押印とは認めないとして
遺言書を無効としました。

花押は、印鑑と言うよりも、サインに近いことから
押印には当たらないということです。

問題となった遺言書は
琉球王国の名家の末裔の相続
ということで
有効か無効かでかなり結果が異なると思いますが
最高裁は無効と判断しました。
しかし、亡くなった故人は
無効とされたと知ったらどう思うことでしょう。

このように、自筆証書遺言は
自分で気軽に作成できるのですが
要件を満たさずに無効となってしまうことが
結構あります。
そこで、遺言書を作成する際には
ちょっとお金はかかりますが
公証役場で公正証書遺言を作成しておいた方がよいと思います。
( 2016/06/07 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第182回 家政婦に対する遺言が有効に 

最近、遺言に関する裁判が話題になることが多く、
今回も遺言に関する判決を取り上げます。
それだけ、みなさん、遺言書や相続について
関心を持たれているということかもしれません。

今回の判決は、
遺言で家政婦に全遺産を相続させる
という遺言が有効かどうか
争われたケースについてのものです。

遺言書は身内の誰かに財産を残したい、
あるいは
相続人間の相続争いを予防したい
と思って作成されることが多いので
宛名は身内の方が多いです。

身内がいるのに、家政婦に全遺産を相続させる
という遺言が出てきた場合は
家政婦に騙されたんじゃないかと
身内の方が思うのはもっともです。

過去の判例でも、同居している身内について
遺言書に書かれていないのは不合理として
遺言を無効としたものもあるくらいです。

僕も、裁判所はよく遺言を有効と認めたな
と記事の見出しを見たときに
思いました。

しかし、記事を読んでみると
娘は多額の援助を過去に母親(女性)から受け、
これが最後と念書を書いて援助を受けたけれども
その後娘は母親と同居し、
母親が娘に資産を奪われるのが怖くて外出できないと
第三者に話すほどだったことなどから
長年自分を支えてくれた家政婦に
全財産を譲ろうとする心境になるのは
自然だとして
裁判所は、遺言を有効と判断した
ということがわかりました。

なかなかこのようなケースは少ないとは思いますが
たまに子供に相続させたくないという相談を受けることもあります。
親の財産を当てにしている方は
親にやさしくしてあげた方がよいかもしれません。


 
( 2016/02/09 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第171回 遺言書に斜線が引いてあったら有効?無効? 

遺言書には、大きく分けて
自分で全文を書き署名捺印をして作成する自筆証書遺言と
公証役場で作成する公正証書遺言があります。

自分で作成する場合は、費用も掛からず気軽にできるのですが
何せ法律知識のない方が作成するので
その遺言の内容についての解釈が争いになったり
法律の要件を満たしているのかが争いになったりします。

そんな自筆証書遺言を巡る裁判で、
最高裁判決が出たので
取り上げます。

亡くなった方が残した遺言書には
息子に大半の資産を相続させると書かれていました。
ところが、
遺言書には、赤いボールペンで遺言書全体に斜線が引かれていたのです。
そこで、もう一人の相続人である娘が、
遺言は、斜線が引かれたことにより無効だとして
遺言無効確認訴訟を起こしたのです。

法律上は、遺言書を変更する場合には
遺言者が変更した場所を特定して
変更した旨を記載して署名して
変更箇所に印鑑を押すこととなっています。
単なる斜線が変更だとすると
変更の要件を満たさないので
遺言は斜線によって変更されておらず、有効となります。

他方で、法律は、遺言者が破棄した場合は
遺言が撤回された(取り消された)ことになるとしています。
そこで、斜線を引いた行為が破棄に該当するとすれば
遺言は取り消されたこととなり無効となります。

一審二審は、
斜線が引いてあったとしても、
全文の内容が読めることや
線を引いただけでは破棄に当たらないこと
などから、
遺言は有効と判断しました。

しかし、最高裁は、文面全体に斜線を引いたのは
一般的に、遺言全体を無効にする意思の表れとなることを理由に
遺言書は無効であるという判決を下しました。
破棄に該当すると判断したと思われます。

このケースは
法律上の変更の要件を満たしていなくても
斜線を引くことにより遺言を無効にすることができるか
という難しい問題で、
どちらの結論でもおかしくなかったケースだと思います。

ただ、一般的には
赤いボールペンで斜線を引いたということは
最高裁の言うように取り消すという意味だったかもしれません。
しかし、それなら、破って捨ててしまうこともできたのに
亡くなった方はそうせず
わざわざ開封して遺言書に斜線を引いた上で、再度糊付けをして、
保管しておいたのです。

息子に対し、余程腹を立てたことがあり
息子に大半の財産をやろうとしたけど
やっぱりやめたということを
息子にわからせようとしたということなのでしょうか。
それとも、
破棄しようと思ったけどやっぱり息子にあげようとしたのでしょうか。

遺言書を書いた方は亡くなってしまったので聞くわけにはいきませんが
どちらだったのか興味があるところです。

みなさんが遺言書を作成するのは
子供たちが揉めないようするためだと思いますので
遺言が元で、後でトラブルとならないように、
専門家である弁護士に相談し、公正証書遺言を作成することをお勧めします。


( 2015/11/24 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第167回 8億円の注文でも口頭で 

シャープを相手取り、機械製造会社の片岡製作所が8億410万円の支払いを求める
訴訟を起こしたそうです。
これに対し、第1回口頭弁論が開かれ、シャープは請求の棄却を求めました。
報道によると、
片岡製作所の主張では、
シャープから口頭で太陽電池の生産設備の発注を受けて
設備を完成したのですが、
シャープはシャープの経営悪化が表面化した後に
発注していないとして支払いを拒んだようです。
両者間で発注書は、納品直前に交わす慣習だったそうですが
今回は交わされなかったようです。

法律上
口頭での契約も有効とされています。
しかし、
口頭で契約した場合
相手から契約をしていないと言われてしまうと
いわゆる「言った。言わない。」の問題となり、
裁判での証明が難しいことが多いです。
したがって、
口頭での契約は法律上有効とされていますが
裁判では認められないことが多いです。

ただ、本件では、8億円もする機械なので
機械の仕様に関する要望や機械製作の進捗状況の確認などが
なされている可能性があり
その辺の事情から契約の成立を立証できる可能性はあります。
担当者同士のメールの内容も有力な証拠となります。

金額が小さければ
後で否定されて、認められなくても
損害も小さいので
仕方がないという判断もありますが
金額が大きいと
後から否定されて認められないと
損害は大きくなり
仕方がないでは済まないことになってしまいます。

そこで、一定金額以上のケースでは
契約書を交わしたり、発注書を書面でもらうことに
した方がよいと思います。
金額の多寡にかかわらず、
相手から否定されたときの損害は受けたくないという方は
全件で、契約書を交わしたり
注文書をもらったりした方がよいと思います。


( 2015/10/27 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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