弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第347回 特殊詐欺で暴力団組長に使用者責任 

「オレオレ詐欺」を始めとする特殊詐欺の一部は
暴力団が取り仕切って行われていると言われています。

そもそも、特殊詐欺の実行犯を捕まえて
これらの者に損害賠償請求をすることも難しいのですが
警察の活躍により実行犯グループが逮捕されることもあります。

詐欺の実行犯だけでなく、その上の暴力団組長に
使用者責任に基づき損害賠償請求をするという訴訟が起こされ
判決が出ました。

判決の内容は、特殊詐欺について、暴力団組長に使用者責任を認める
という画期的なものです。
これまで、暴力団抗争で一般市民が巻き込まれて亡くなった場合に
暴力団組長に使用者責任を認める判決がありましたが、
特殊詐欺でも暴力団組長の責任を認めることになったのです。

特殊詐欺の被害は、年間約400億円とも言われています。
そのどれだけが暴力団の資金源となっているかはわかりません。
しかし、今回の判決により
特殊詐欺に暴力団がかかわっていることが証明できれば
組長に損害賠償請求できるということとなると
暴力団組長は資産を持っているでしょうから、
被害の回復にも役立つでしょうし、
暴力団が特殊詐欺をすることへの牽制にもなると思います。
( 2019/05/28 00:00 ) Category 損害賠償請求 | トラックバック(-) | コメント(-)

第339回 障害者の少年の逸失利益が障害のない少年と同等に認められた 

重度の知的障害を持つ少年が
鍵のかかっていなかった施設から
行方不明となり
その後死亡して発見されたケースで、
少年の両親が施設に過失があったとして
損害賠償請求を求めていました。

これに対し、施設側は過失を認めたものの
被害者の少年が重度の知的障害を持つことから
将来大人になって収入を得られる見込みはなかったとして
将来の収入に対する損害賠償(逸失利益)については
賠償する義務はないと争っていました。

これについて、東京地方裁判所は
「障害者雇用の施策は大きな転換点を迎えていて
障害者が一般企業で働くことができる可能性は否定するべきではない」と指摘し
また、「当該被害者は、特定の分野に限ってみれば高い集中力があり障害者でない人よりも
優れた能力を発揮する可能性があった」
として、19歳までの男女の平均賃金を元にして障害のない少年と同じ水準の
損害(逸失利益)を認め、
施設側に賠償義務を認めました。

事故で死亡した場合将来の収入がどれくらい得られる見込みだったかが
争われます。
障害者については、働けない方も多く、働いている方でも収入は一般の方よりも低い
という現状があることから、
将来得られた収入も少ないと判断されるケースも多いと思いますが
本件判決では、一般の方と同等と判断されたものです。

どちらの判断が正しいのかは、なかなか難しいところですが
万が一事故を起こした場合は、被害者が障害者であっても
そうでない健常者であっても同じ額を賠償しなければならない可能性がある
ということになります。




( 2019/03/26 00:00 ) Category 損害賠償請求 | トラックバック(-) | コメント(-)

第328回 高校の強歩大会での生徒の死亡に損害賠償責任なし 

高校の強歩大会で
参加した生徒が死亡した事件で
遺族が県を相手取り
AEDによる救護が不十分だったとして
損害賠償請求を行った事件で
判決がありました。

まず、強歩大会とは
競歩ではなく、
長い距離を歩く行事のことのようです。

その学校行事に参加した生徒が
亡くなってしまったことから
救護措置が不十分だったとして
遺族が亡くなった生徒に代わり
損害賠償請求を行ったということです。

判決では、
学校の救護体制の不十分さが認定されました。
しかし、死亡原因が不明であったことから
学校の救護体制が不十分だから亡くなったのか
その他の原因で死亡したのかがわからないとして
県(学校)の責任はないとして
遺族の請求は棄却されました。

みなさんは、発生した結果が大きければ
誰かが責任を負わなければかわいそうという思いもあって
法的責任が認められなければおかしいと思われるかもしれません。
本件では、裁判所も救護体制が不十分だと認定していることから
なおさら、県の責任は認められるべきということになりそうです。

しかし、法律上は、たとえ救護体制が不十分であったとしても
死亡の原因が救護体制が不十分だったからと言えなければ
損害賠償責任は認められません。
結果が重大だからと言って必ず法的責任が認められるわけではないのです。

したがって、今回のケースでは、判決は、遺族の損害賠償請求は
認められないということになりました。


( 2019/01/08 00:00 ) Category 損害賠償請求 | トラックバック(-) | コメント(-)

第316回 貴ノ岩が元日馬富士に2400万円の損害賠償請求 

昨年、話題になった横綱日馬富士の暴行事件による横綱引退。
もうみなさんは、忘れかけていたのではないでしょうか。
元横綱日馬富士に対しては、刑事事件では、罰金刑が確定しています。

その後、貴ノ岩が元日馬富士に対し損害賠償請求をし、
調停を行っていたようです。
調停というのは、裁判所を間に挟んでの話し合いです。
したがって、裁判と違って、裁判所が判決を出してはくれないことから
当事者間で合意できなければ解決しません。

この話し合いでは合意ができず、
今回、貴ノ岩が元日馬富士に対し
損害賠償請求訴訟を起こしたということです。

その額、約2400万円。

刑事事件では、全治12日間のケガという診断書に基づいて
罰金刑が科されたようです。
これに対し、貴ノ岩は全治1カ月かかったということに基づき
損害賠償請求をしています。
治療期間が12日か30日かの差がありますが
それにしても通常の傷害事件の損害賠償請求としては
かなり高い印象を受けます。

傷害を理由に損害賠償請求をする際には
治療費、治療期間中の慰謝料、治療期間中に働けなかったことによる損害(逸失利益)、
後遺症がある場合は後遺症の損害と後遺症慰謝料を請求するのが一般的です。

報道によれば、治療費430万円、慰謝料500万円、治療期間中に受け取れなかった懸賞金900万円
を損害として主張しているようです。
懸賞金は、どういう計算根拠かわかりませんが、
治療期間が30日であっても、慰謝料と治療費としてその額は認められないのではないかと思われます。

貴ノ岩の起こした訴訟は、一説によると貴乃花親方の意向だと言われています。
相撲協会のあり方について、意見の違いから
貴乃花は相撲協会を退職したようです。

今回の訴訟上の請求が通る見込みが高いということであれば
訴訟を起こした意味があるでしょうが、
あまり通らずに、単に金額を吹っ掛けただけと思われてしまっては
訴訟を起こした意味はなく、かえって貴乃花や貴ノ岩の評価を下げるマイナスになるのではないでしょうか。

それでも、弁護士が就いて訴訟を起こしたのですから、それだけの損害を被ったことを証明できる
秘策があるということなのでしょうか。

単に吹っ掛けただけと言われないような結果が出ることを祈っています。






( 2018/10/09 00:00 ) Category 損害賠償請求 | トラックバック(-) | コメント(-)

第251回  エアコンによる火災で2億円もの賠償責任 

エアコンメーカーであるダイキンが
倉庫火災について2億円の和解金を支払って
解決したという報道がなされました。

報道によりますと
倉庫で火災が起きたのは
代金の製造したエアコンンの室外機の
欠陥が原因だとして
火災によって商品が焼けて
損害を被ったとして
化粧品会社と保険会社が
約6億7000万円の賠償を求めていた
ということです。

化粧品会社等原告は
火災の原因は
室外機の内部のショートが
火災の原因で
エアコンが通常有すべき安全性を
備えていなかった
と主張していたようです。

この商品(本件で言えばエアコン及び室外機)が
通常有すべき安全性を欠いていて、
これにより、生命や財産に損害を与えた場合は
商品の製造者や販売者は
被害者に賠償責任を負います。

これを「製造物責任」と言います。

この製造物責任を規定している法律は
「製造物責任法」(「PL法」とも呼ばれます)と言って
メーカーや販売者の主張立証責任を重くしています。

倉庫用のエアコンなので、
家庭用とは異なるとは思いますが
エアコン1台の不具合で何億もの賠償責任が
発生することとなるということです。
メーカーや販売者は
商品の安全性には、
気を付けているとは思いますが
改めて、注意する必要がありますね。






( 2017/06/20 00:00 ) Category 損害賠償請求 | トラックバック(-) | コメント(-)

第238回 東日本大震災による原発事故は予見可能 

東日本大震災による原子力発電所の事故について
前橋地裁で判決が出されました。

その内容は、
国と東京電力は、
東日本大震災による津波を
予想できたので、
その対策を取らなかった東京電力と
その対策を取らせなかった国には
原発事故により
避難を余儀なくされている人たち被害者に対し
賠償責任を負うというものです。

通常、天災地変による事故や被害については
人が予想できない不可抗力として
法律上の責任が発生しないとされています。

今回の原発事故の訴訟でも
東日本大震災のような大震災が発生すること
それにより高い津波が来て事故が起きることが
予想できたのかどうかが
争点の一つとなりました。

今回の判決は、
国が2002年7月に発表した長期評価で
福島第一原発沖を含む日本海溝での地震の発生確率が30年以内に20%程度と
されていたことや
東京電力が2008年5月に福島第一原発に
高さ15.7メートルの津波が来るとの試算を得ていたことなど
から、
大地震とそれによる津波が予想できたと判断しました。

これに対し、国と東京電力は
地震の予想については、確立した知見ではなかった
と争っていましたが、認められませんでした。

地震の予想については
30年以内に20%程度という予想が
果たして予想と言えるかどうかは
なかなか難しいと思います。

今回の裁判官は、
原子力発電が一度事故が起きると
甚大な被害を生じさせるという原子力発電の危険性と
国が自ら出した予想で、
東京電力も地震が起きた場合に高い津波が起きることは
自ら試算していた
ということから
予想可能だったとしたと思われます。

国や東京電力のような企業でなければ
なかなか東日本大震災クラスの地震が起きて
被害が起きることは予想できたとは
判断されないとは思います。

今後、本件は、高裁、最高裁と争われていくと思いますし
他の地裁でも同様の裁判は行われています。
裁判所がどう判断していくのか
最終的にどちらと判断するのか
注目ですね。


( 2017/03/21 00:00 ) Category 損害賠償請求 | トラックバック(-) | コメント(-)

第229回 サッカーのプレー中の事故で損害賠償責任? 

スポーツは元々プレーヤーが
スピードやパワーといった自分の能力を最大限に発揮し
勝ち負けを競うものですから、
危険が伴います。
そこで、プレー中の事故は、
ルールに従ってプレーをしている限り
相手にケガが発生したとしても
プレーヤーは法的な責任を負わないというのが原則です。

ところが、この度東京地方裁判所で
社会人リーグ4部の試合で
選手同士が衝突した件で、
ケガをさせた選手に損害賠償責任を認める判決が
出ました。

判決は、故意に相手の選手を蹴ったことは否定しましたが
退場処分が科されうる行為だったと認定していますので
ルールに従った行為ではなかったと見たようです。

しかし、問題なのは、その試合で審判は、
反則を取らなかったのです。
審判が反則を取らなかった行為について
裁判所がルール違反だと認定したのです。

過去の裁判例には
サッカーの授業で、
生徒が蹴ったボールが他の生徒に当たって
失明をしてしまったケースでも
ルールに従った行為に基づくものなので
責任はないとしたものがあります。

今回のケースは、
ラフプレイであってルールに従った行為ではないと
裁判所が認定したわけですが
この判断が正しいとすれば裁判所がスポーツのプレイ中の事故を
いちいちルールに従った行為かどうか
判断することになってしまいます。

それについてはちょっと疑問に思います。
( 2017/01/17 00:00 ) Category 損害賠償請求 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

QRコード
QR