弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法
カテゴリー  [債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) ]

第345回 民事執行法が改正されました 

このブログなどで何度も言っているかもしれませんが
貸したお金や商品を売ったお金を強制的に払ってもらうことは
難しいです。

その不満に応えるべく
この度民事執行法が改正されました。

改正民事執行法のニュース等を見ると
子供の引渡し手続が明確になったということが
取り上げられています。

しかし、子供の引き渡しの事件は
重要な問題かもしれませんが
子供の引渡しを強制的にしようとしている方は
かなり少ないと思います。

そこで、子供の引渡しに関する改正は、
みなさんにはあまり関係がありません。

重要なのは、判決を取ると、強制執行の準備として
相手方の銀行預金の残高や勤務先を調べることができるようになる
ということになります。

今までは、相手方の勤務先を調べるには
自分で相手の後を付けるか
探偵を付ける等しか方法がありませんでしたが
今回の改正で、市町村に勤務先を照会することができるようになりました。

預金の有無についても、銀行に照会することができるようになりました。
法改正に先行して、大手三行とゆうちょ銀行だけ照会に応じていましたが
今後はどの金融機関も裁判所からの預金の有無について照会に応じなければならない
こととなります。

この改正民事執行法の施行は、1年以内ということで
いつになるかはわかりませんが、
この改正民事執行法が施行されれば
以前よりは少し強制執行できる可能性が出てきたと思います。



( 2019/05/14 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第327回 ソーシャルレンディングで分配金の遅れ急増 

朝日新聞によると
ソーシャルレンディングで集めた投資資金の
分配金の支払いの遅滞が急増しているそうです。

ここでソーシャルレンディングというのは
ネット等で、企業に貸し付ける資金を募って
集まった資金をまとめて貸し付ける仕組みです。

銀行等で借り入れができる企業は、
ソーシャルレンディングでお金を借りる必要がありません。

そこで、一般的には、銀行等でお金が借りられない企業に
通常より高い利率で貸す場合に
ソーシャルレンディングは利用されます。

したがって、ネット等で投資を募る場合は、高配当、高利回りが謳われます。
高配当や高利回りは、回収リスクが高いことの対価となります。

投資する際に、借り手についてどれくらいの情報が投資家である個人に
開示されるかわかりませんが、
銀行が貸さないような企業に、
個人がお金を貸し付けるということになるのですから
朝日新聞の記事にあったような
返済の遅滞による分配金の遅滞は
発生してもおかしくないような気がしますが、
昨年までは、遅滞額は4500万円だったのが
今年は223億円と桁違いの数字となっています。

昨年までの貸付額が1300億円で、今年の貸付額は1700億円と増えていますが、
最初は、慎重に貸付を行っていたけれども
次第に回収見込みの審査が甘くなって、
多額の貸し付けを行うようになったということなのでしょうか。

企業に対しては、貸付なので、一見安心のようですが
その企業に支払い能力がない場合は
貸付であっても、回収ができないというリスクがあります。

ソーシャルレンディングを利用して投資をしようと考えている方は
十分にそのリスクを認識して投資を行ってください。

今年はこれで最後になります。
みなさん、良いお年をお迎えください。


( 2018/12/25 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第293回 古い消火器が破裂した場合の責任 

古い消火器が破裂して
当時小学生だった被害者がケガをして
後遺症を負いました。

被害者男性は
1970代以降同様な事故がたびたび起こっていて
1988年には同様の事故が多発していたのだから
国やメーカーは、破裂に対する危険について注意喚起を怠っていたなどとして
国やメーカーに損害賠償請求をしました。

これに対し、大阪地裁は
消火器本体に耐用年数や腐食の危険性が表示されたラベルを貼るなど
国からの要請に応じた対応が行われていたなどとして
損害賠償請求を認めませんでした。

一定の対応は取っていたということだと
国やメーカーの責任を問うことは難しいケースだったような気はします。
ただ、古い消火器を設置していた駐車場の管理人とは
和解が成立しているようなので、
古い消火器が破裂して誰にも責任がない
というわけではありません。

消火器は火事がなければ使いませんから
古い消火器がそのままになっているケースは
十分考えられます。
今の消火器が1970年代、1980年代の消火器のように
破裂する可能性があるのかはわかりませんが
消火器を設置されている方は
ちょっと消火器を見直してみる必要があるかもしれません。




( 2018/04/17 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第290回 小型犬が飛び出して1284万円の賠償責任 

最近は犬をペットとして飼う人が増えていると聞きます。
そんな愛犬家に警鐘を鳴らすような
判決が出たので、取り上げます。

飼い主がミニチュアダックスフントにリードを付けて
散歩していたところ、ダックスフントが急に走り出したため
買主がリードの手を離してしまいました。
ダックスフントはランニング中の男性のところに飛び出し
男性はダックスフントを避けようとして
転び、骨折して右手首が曲がりにくい等の後遺症が
残ってしまいました。

そこで、男性はダックスフントの飼い主に対し
転んでけがをしたことについて治療費や
後遺症による将来の収入の減少分や
慰謝料を請求しました。

判決では、動物は予想できない行動をとり
飼い主は散歩の際はつないでおく義務があるとして
事故は飼い主がリードから手を離したため起きたことから
過失は重いと判断し、
1284万円の賠償責任を認めました。

飼い主は、保険に入っていたようで、
この訴訟では、保険会社も被告となっていたようです。

今回の判決のように、ペットが原因で起きた事故について
たかが犬のやったことだから、買主には責任はない、
では済まされない場合もあります。
むしろペットが原因で起きた事故については
飼い主が全面的に責任を負うというのが
法律の原則です。
犬を飼う方はペットが病気になった場合の医療保険だけでなく
ペットによる賠償責任保険にも加入する必要があると思います。

( 2018/03/27 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第288回 飲食店のドタキャンの責任 

飲食店のドタキャンが話題となっています。
その飲食店のドタキャンについて
損害賠償請求(正確には違約金請求)の
裁判があったことが
インターネットの記事に掲載されていましたので
取り上げたいと思います。

予約をした場合は、
飲食物の提供契約が成立しますので
ドタキャンは契約不履行となります。

そこで、店側は予約をしてドタキャンをした
顧客に対し契約違反による損害賠償請求が
考えられます。

今回の裁判では、40人の団体で予約をしたにもかかわらず
何の連絡もなくドタキャンをしたケースのようです。
裁判に相手は欠席したことから
原告の請求はそのまま認められました。
その額13万9200円です。

今回の裁判では、ホームページで
違約金について定めてあり
当日キャンセルは代金の100%を違約金として
いただくとしていました。

この違約金の定めは重要で、
飲食店の場合
予約がキャンセルされても
本当に料理を用意したのか、
料理を用意したとしても
他の客に利用できたのではないか
などと反論されてしまい
代金全額が損害と認められない可能性があります。
違約金を定めていれば
その金額を請求できることとなります。

この違約金はホームページに見やすいところに
記載しておくのがよいのですが
違約金が目立つところにかかれていることが
営業的にマイナスにならないかということは
心配になります。

また、キャンセル料は、
少額なので、
裁判をしたり費用労力をかけて
回収するのは割りに合わないということもあります。

連絡先がメールアドレスや携帯電話の電話番号では
相手の住所はすぐにはわからず
弁護士会の照会等を利用しなければなりません。
そうなると、弁護士費用等もかかってしまいます。

ただ、ホームページに予約後のキャンセルは
キャンセル料がかかるということを
記載しておくなどによって
まともなお客はキャンセルしなくなると思いますので
一定の効果は期待できると思います。
( 2018/03/13 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第280回 前払いには気を付けて 

成人の日という日本全国で
新成人のお祝いをするという
おめでたい日に
大きな事件が起きてしまいましたね。

みなさん、テレビなどの報道でご存じのとおり
着物のレンタル・販売業者である
その名も「はれのひ」が
前金で代金を受け取っていながら
成人の日当日に
閉店してしまい、顧客である新成人は
着物を着ることができませんでした。
その被害者の数は
数百人にも及ぶらしいです。

昨年も同じような被害が起きました。
旅行代理店の「てるみくらぶ」が
旅行代金を受け取っていながら
倒産し、
顧客は代金を支払っているにもかかわらず
旅行に行けなくなってしまいました。

みなさんは、前払いしてくださいと言われたら
素直に前払いをしてしまう方が多いでしょうが
代金を前払いする場合は、
「はれのひ」や「てるみくらぶ」だけではありません。
常に、代金を支払ってもサービスが受けられなくなるリスクがあります。

だから、銀行は、お金を貸すときに、必ず審査をして
担保を取ったり、保証人を付けたりして支払いを確保してから
お金を貸すのです。

少額の場合は、担保を取ったり、保証人を立てたり
というのは面倒ですし、
お店の方もそんな顧客とは取引してくれないでしょう。

そこで、このような被害に遭わないためには
・なるべく前払いをしない
・前払いをするとしても前払いを代金の一部にする
・前払いをしても、つぶれなさそうなその業界の大手を選ぶ
くらいしかありませんが
前払いをしない以外はこのような被害を避ける方法はありません。

前払いをするときは、
相手の業者がサービスを受ける日まで
つぶれなさそうかどうか
現金を持って逃げる可能性はないか
気にした方がよいと思います。

( 2018/01/16 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第248回 借用証がなくても貸したお金は返してもらえる? 

法律相談に乗っていると
たまに借用証がないと貸したお金を請求できないんじゃないか
と相談を受けることがあります。

逆に借用証がないから返さなくてもいいと思っている人も
いるようです。

結論から、言うと、そんなことはありません。

借用証がなくても、相手に貸金の返還請求をすることは
可能ですし、
借用証がないからと言って、借りたお金を返さなくてもよいということにはなりません。

ただし、借りた方が借りたことを認めていない場合は
お金を貸した方は、お金を貸したことを証明しなければなりません。

その証明方法として、相手の署名捺印がある借用証があった方がよい
ということになります。

ただ、借用証がなくても
相手の銀行預金口座に振り込んだ振込依頼書や通帳、
お金を貸してほしい、あるいは
お金の返済はいつまで待ってほしい等の
メールのやり取りがあれば
お金を貸した証拠となります。

メールのやり取りでなく
今はラインでやり取りをすることも
少なくありません。

このラインのやり取りも内容によっては
お金の貸し借りの証拠となります。

以上のとおり、借用証がなくても
貸したお金の返還請求ができます。
ただし、相手が借りたことを認めていない場合は
借用証がなくてもいいですが、
お金を貸した証拠が必要となります。

ただ、お金を貸し借りする場合は
借用証を作成するのが一番いいので
なるべく借用証を作成するようにしてください。


( 2017/05/30 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第196回 ファウルボール事故控訴審判決 

プロ野球の観戦中にファウルボールに当たり失明した女性が
球団などに損害賠償請求を求めた訴訟で、
第一審判決では約4200万円の賠償責任が認められました。
これについては
第143回 ファウルボール事故は観客の自己責任か
で取り上げました。
その控訴審判決が出ました。

控訴審判決では、
球場については安全性に欠けることはないので
賠償義務はないとしました。
これに対し、球団に対しては
被害者が球団がファン拡大のために招待した小学生の保護者だったことから
危険性の低い席に誘導することもできたとして
安全配慮義務違反を認めて
賠償義務を認めました。
ただ、打球の行方について
被害者の女性が見ていなかったことについて
過失を認め、賠償額は一審の4190万円から
3350万円に減額されました。

前回、
球場のファウルボール事故については
安全性を完全にすると、
球場中にネットが張り巡らせられて臨場感が無くなってしまうという意見がある一方で
球団は野球を知らない子供や女性にまで広げるのであれば
その対策をしないといけないだろうと言いました。

くしくも、この控訴審判決は
僕が書いた意見に沿った内容となっています。

野球の臨場感を味わってもらうことを考えるのも
球団経営では重要なことですが
野球の危険性を知らない子供や女性にまで
球場に足を運んでもらおうとするのであれば
安全対策も必要となります。

野球関係者の方は、
その点のバランスをどうとるか考えて
野球の魅力を広く伝えていって欲しいですね。









( 2016/05/24 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第192回 支払われない賠償金 

日経新聞に、
犯罪被害者や犯罪遺族に対し
犯罪の加害者から損害賠償金が支払われない
ということが取り上げられていたので
僕のコラムでも
取り上げてみたいと思います。

犯罪を犯し、有罪となった加害者は
刑事裁判でも懲役何年などの有罪判決を受け
刑罰を科されることとなります。

その一方で、
加害者は被害者を殺害したり
ケガをさせたりして
被害者に対し損害を与えていますから
被害者や遺族に対し、
損害賠償金を支払う義務も発生します。
こちらは、民事の問題となります。

この犯罪被害に関する損害賠償請求は
刑事裁判の手続の中でもできるようになりましたが
民事裁判を起こしてその中で請求するのが一般的です。

ただ、この損害賠償金について
判決で確定されてもなかなか支払われていない
というのです。

その原因は、
まず、一般的に、経済的に恵まれている犯罪者は少ないです。
そして、逮捕後、懲役刑を受けている間は
収入はほとんどありません。

このコラムで、何度か言っていると思いますが
日本の法制度は、判決があっても
相手に財産がなければ
取れない仕組みになっていますから
犯罪の加害者に対し、
判決に基づき差押をして
回収をするというのは
なかなか難しいわけです。

海外では、加害者が被害者に賠償金を支払えば
刑の執行を停止し、払わなければ重くなる制度を
取っている国もあるようです。

それくらいしないと、
犯罪者からお金を取るのは難しいと思います。

ただ、日経新聞は取り上げていなかったのですが
犯罪被害者給付金という制度があるので
犯罪により死亡した被害者の遺族
犯罪により重傷を負ったり、
後遺症が残ったりした被害者の方は
国に対し、犯罪被害者給付金を請求することができます。

加害者本人に対し支払わせたい
という気持ちはあると思いますが
犯罪により被害を受けた場合
遺族の方や被害者の方は
それにより経済的に困るということも
多いと思います。

そこで、国が加害者に代わり
一部を支払ってくれる制度がありますので
覚えておかれたらよいと思います。



( 2016/04/19 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第191回 ハルクホーガン氏への賠償128億円 

アメリカの話ですが
プロレスラーのハルクホーガン氏が
自分の性行為の様子が映ったビデオを無断で公開され、
プライバシーを侵害されたとして
インターネットのニュースサイトの経営会社に
損害賠償を求めたケースで判決が出されました。

裁判所は
ニュースサイトの運営会社に
プライバシーの侵害を認め
1億1500万ドル(約128億円)の
賠償金を支払うよう命じました。

みなさんは、訴訟で損害賠償をするときに
多額の損害賠償請求ができる
あるいは
訴訟を起こせば多額の損害賠償が認められる
と思っている方が多いかもしれません。

それは、アメリカの裁判のニュースの影響が
多いと思います。

このハルクホーガン氏の裁判の判決のように
アメリカでは10億円、100億円を超える損害賠償が認められる
ケースがあります。

これに対し、日本では10億円、100億円を超える
賠償額が認められるケースは
ほとんどありません。

これは、アメリカと日本での損害賠償の考え方の違いによります。
日本では、実際に発生した損害について
賠償するという損害賠償の考え方を取っています。
これに対し、アメリカでは
実際に発生した損害の他に
悪いことをしたことに対する制裁、
あるいは
同様のことを二度とさせないための懲罰
という意味で
制裁的慰謝料、懲罰的慰謝料という損害賠償が
認められます。

資力のある会社が他人の権利を侵害した場合には
この制裁的慰謝料が多額となるので
損害賠償額は10億円や100億円を超えるほど多額となります。

なかなかこのような考え方は
日本では受け入れられないと思うので
今後も、このような巨額の賠償金が
日本で認められることはないと思います。






( 2016/04/12 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第187回 認知症家族の賠償責任 最高裁判決 

認知症の男性が線路内に入り
列車にはねられて
亡くなった事件で
鉄道会社が
男性の遺族に振り替え輸送の費用など
720万円を請求していた事件の判決については
第91回 認知症家族の賠償責任 高裁判決
で、取り上げました。

一審では、長男と妻に監督責任を認め、賠償責任を認めました。
控訴審では、別居していた長男の責任は否定して、同居していた妻のみの責任を
認めました。

この度最高裁判決が出されましたので、
取り上げます。
最高裁の結論は、
別居していた長男も、同居していた妻にも
監督責任は認められませんでした。

認知症の親族を介護する人は増えていて
その介護だけでも負担が重いのに、
さらに法的な責任まで負担するとすれば
介護なんてやってられないということにもなりかねない
ということを考えて、
介護者の責任を軽減したものと推測されます。

世間では、認知症の親族の介護をする人が多いことから
安心して介護できる良い判決という評判のようです。

ただし、本件では、事故の被害を受けたのがJRという大企業でしたから
監督責任がないということでよかったかもしれませんが、
認知症の方から被害を受けた人が個人であった場合でも
監督責任を認められないということとなれば
その個人の被害者の方は誰からも賠償をしてもらえない
ということになってしまいます。

法律や判決で、責任や基準を緩めれば
それで利益を受ける人もいますが
逆に、それによって不利益を受ける人もいます。
両方がよくなるということは
なかなかないので、
法律を作ったり
判決を出したりする際には
そのバランスを取るのが難しい
ということとなります。



( 2016/03/15 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第179回 銀行員の責任を銀行に追求できるか 

朝日新聞によると
三菱東京UFJ銀行の銀行員らに勧められた投資会社との取引で
3億8000万円もの損失を受けたとして
80代の女性が銀行と銀行員に対し、
損害賠償請求していたケースで、
東京地方裁判所は、
女性の請求を棄却する(認められない)
とする判決を出したようです。

従業員が損害賠償責任を負う違法行為(「不法行為」と言います)を
したときに、雇い主である会社等はいつでも責任を負うわけではありません。
雇い主である会社と、従業員は、法律上基本的には別な存在だからです。

しかし、従業員が不法行為をしたときに
雇い主である会社等に損害賠償請求ができる場合があります。
それは、その不法行為が会社等の業務を執行する際に行われた場合です。

従業員が会社の仕事として業務を行っている際に
取引相手や第三者に損害を与えたような場合には
取引相手や第三者は
従業員の行為は会社の行為だと信頼しているし
また会社は従業員のその行為により
利益を得ているのだから、
会社にも責任を負わせた方が公平だから
というのがその理由です。

銀行に損害賠償請求をした前記事案では
銀行員が銀行の業務として女性に投資会社との取引を勧誘したのか
という点が争われ、
裁判では、銀行の業務とは関係ないところでなされ、
女性もそれを認識していたと判断されたようです。

銀行員や証券会社の従業員が
その信用を利用して、
個人的な貸し借りやお金儲けの話を持ち込んでくることが
あります。
もちろん、銀行や証券会社の規定では、
禁止されていることですし、
先ほどの判決のように
銀行との取引でなければ銀行に責任を追求することもできません。
したがって、銀行員や証券会社の従業員が個人的にお金の貸し借りや
投資話を持ち掛けてきたとしても
その話に乗らないようにすることが大切です。

( 2016/01/19 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第173回 公務員の個人責任は問えないか? 

以前、このブログで公務員は個人責任を問われないという
ことを書きました。

第98回 公務員は個人責任を問われない?

これは、公務員が注意義務違反をして損害を与えた場合は
被害者は、国や地方公共団体に賠償請求ができ
国や地方公共団体が、お金がないから支払えないことはないので
公務員個人に賠償請求を認めなくても
被害者保護としては十分だということに基づきます。

しかし、それでは納得できないので
何とか公務員個人に賠償責任を負わせようとしている方がいます。
それは、以前取り上げた最高裁まで公務員の個人責任を問おうとして
認められなかった剣道の部活の最中に熱中症で亡くなったお子さんの
ご両親です。

この両親がどういう方法で公務員個人に賠償責任を取らせようとしているか
について説明をします。

被害者は公務員個人に賠償請求はできません。
これは確定した最高裁判決です。
しかし、公務員が所属する県や市町村と言った自治体は
公務員個人に故意や重大な過失があった場合に
公務員に賠償責任の一部を負担するよう求めることができます。
これを「求償権」と言います。

この両親は、県に対し、
県が負担した賠償額について公務員個人に求償権を行使するよう
請求しました。
ところが、県が公務員個人に対し、求償権を行使しなかったので
両親は、県に賠償請求を行使するよう命じる判決を求めて
訴訟を起こしたのです。

県や市町村と言った地方自治体については、
地方自治体が権利行使をしていないときは
住民が、その権利を行使するよう求めることができます。
それにもかかわらず、地方自治体が権利を行使しなければ
地方自治体に対し権利を行使するよう命じる
判決を裁判所に求めることができます。
これを「住民訴訟」と言います。

この両親は、被害者が直接公務員個人に賠償請求ができないことから
この住民訴訟を起こすことで、
公務員に個人責任を取らせようとしたということなのです。

ただ、公務員への求償権は
単なる過失ではなく、重大な過失が必要なので
法的に認められるかどうかはわかりません。

ちなみに、国家公務員に対しては
住民訴訟のような制度はないので
国が権利行使しないときに、
国民が裁判を起こして国に権利行使するよう求めることはできません。

( 2015/12/08 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第170回 債権回収会社のことを知っていますか? 

貸金や売掛金、損害賠償請求の取り立てをすることを
債権回収と言います。

この債権回収の仕事は、
暴力団関係者や事件屋と言われる人たちが行うことが多く、
弁護士法で、弁護士以外が債権回収を行うことは禁止されています。

しかし、バブル経済崩壊後の不良債権処理で、
金融機関が多数の不良債権を譲渡して処理するには
弁護士以外で
債権の譲渡を受けたり、
取り立てについて委託を受けて債権回収を行ったりする制度が
必要になったことから
債権回収会社が認められました。

この債権回収会社については
債権回収を弁護士以外に認めることとなることから
暴力団や事件屋が回収してくる可能性があり
取締役として
弁護士が就任する必要があります。

この度、僕も債権回収会社の取締役を
することになりました。
これからは、債権回収会社の取締役と
弁護士業務との両方をしていくこととなります。

なお、ちまたには、債権回収会社を名乗り
違法な取り立てをしている会社も多いです。
正式な債権回収会社は、名前に債権回収会社という名称がついていますし
個人の貸金や売掛金の譲渡を受けたり、
取り立ての依頼は受けたりはできませんので、
債権回収会社という名称でない会社や
個人の貸金や売掛金の取り立てをしている会社は
違法な取り立てを行っている可能性が高いですから
直ぐに弁護士に相談された方がよいと思います。






( 2015/11/17 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第143回 ファウルボール事故は観客の自己責任か 

プロ野球の観戦中に観戦者がファウルボールに当たり失明した女性が
球団などに損害賠償請求を求めた訴訟で、
約4200万円の賠償責任が認められました。

この判決については
観客の安全を考えると観客席の前に高い
ネットを張るしかなく、野球の臨場感が薄れるなどという
批判がなされています。

確かに、せっかく野球場まで来て野球を見ているのに
ネット越しにしか選手やプレーを見られないのでは
野球場まで来て観戦する意味はないかもしれません。
とすれば、
ネットを取り外し、観客は野球場でプレーしているときは
プレーに注視していなければ
ケガをしても自己責任とした方がよいかもしれません。

しかし、それをするためには、
観客に対し、野球を知らない人、反射神経が衰えている高齢者
2時間以上の野球を集中して見られない年齢の子供などは
ネット裏あるいは外野でしか観戦させない措置が必要だと思います。
野球の打球の速さや当たった場合の痛さなどがわからない人にとっては
場内アナウンスで危険だと言われても、
自分がどの程度危険なのか理解はできないものです。

でも、今のプロ野球は、野球を知っている野球を本当に好きな人だけに
観戦者を限定しているわけでなく、観客増員のため、
むしろ家族連れや女性などが積極的に
観戦に訪れるよう働きかけをしていると思います。

観客動員を増やし、野球に詳しくない人も含めて野球観戦に来てもらい
ファウルボールに当たっても自己責任とするのであれば
自己責任を取る前提として
観戦前に野球の打球の速さや危険性について、
教える機会を設けた上で観戦してもらう
ということが必要だと思います。

でも、そこまでしないと野球を見られないというと
面倒なので野球を知らない人は足が遠のくということになってしまうかもしれません。

その辺を球場や球団がどう考えるかということになります。
( 2015/04/21 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第99回 そんなにお金は取れない日本の裁判 

民事裁判は、そのほとんどがお金を請求するものです。
その典型的なものが損害賠償請求です。

例えば、
がんに効くと言われたから健康食品を買ったのに
全く効かないことがわかったから損害賠償請求したい。
相手にケガをさせられ、傷が残ったから
損害賠償請求したい。
夫が浮気をしたから離婚するので慰謝料を請求したい。
などです。

上記健康食品のケースで、購入代金が1万円だったとすると
基本的には代金1万円分は損害となります。
その他に、慰謝料が取れるかといえば取れる可能性はありますが
被害金額が1万円なので、1万円で購入させられた精神的苦痛に対する慰謝料も
1万円程度なのではないかと思います。

次に、ケガをさせられた場合の損害賠償請求ですが、
その内容としては
治療費、治療期間の慰謝料、休業損害、後遺症慰謝料、逸失利益(いっしつりえき)など
が考えられます。
治療費や治療期間の慰謝料は、病院に行って治療を受けなければ
発生しません。
休業損害はケガのせいで会社を休んだ場合の損害なので
実際に会社を休まないと請求できません。
傷が後遺症となった場合は、後遺症慰謝料とそれによる給料の減額分などを
損害賠償請求できますが、
後遺症といえるためには、傷跡が残ったというだけでなく
顔面の場合には長さ3センチメートル以上の傷、
首の場合は鶏卵の大きさ以上の傷で、
後遺症12級となり、それで慰謝料は290万円です。
こんなにすごい傷なのに、この程度の金額と思われたのではないでしょうか。
場所が顔や首以外でこれより小さな傷は後遺症にもならない
即ち、損害賠償請求はできない可能性があります。

夫が浮気をして離婚する場合の慰謝料は、
結婚していた期間や子供がいるかどうか
相手との交際の年数頻度、相手との間に子供がいるか
などの諸要素によっても異なりますが
おおよそ100万円から300万円くらいで
離婚して暮らしていけるだけの金額は
請求できません。

ドラマや映画、海外のニュースなどでは
何千万円や何億円という損害賠償請求が
なされますが、
日本の裁判では、なかなかそんなに請求できる
ケースはありません。
そういう意味では、日本の法律は
ちょっと、加害者に甘く、被害者に厳しいのかもしれません。



( 2014/06/24 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第43回 利息の上限は決まっています 

お金を貸したときに、
利息を決めておけば利息を取ることができます。
お金を100万円貸して、
1年後に返済するときまでの利息は10万円とすれば、
年利10%ということになります。

しかし、利息には、利息制限法と言って、
利息の上限を定めている法律があります。

利息制限法によれば、
元本が10万円未満の場合で年利20%
元本が10万円以上100万円未満の場合が年利18%
元本が100万円以上の場合が年利15%
となっており、これを超える利息は無効となります。

先ほどの例では、年利10%だったので、
利息制限法の範囲内ということになります。
しかし、例えば、
100万円を1か月後に返済するという約束で貸した場合に、
利息は10万円払うとすると、
年利にすると年利120%ということになってしまいます。
元本が100万円以上の場合は、
年利は15%までとされているので、
返済期日を1か月後だとすると
約1万2500円しか利息は取れないこととなります。

個人でお金を貸すときは、
短期でお金を貸すことが多いと思いますが、
短期で貸す場合は、年利に直すと、
利息制限法に違反してしまうケースが多いので注意が必要です。

ちなみに、
100万円を貸して1か月後に10万円の利息を払うという
先ほどの年利120%のケースは、
出資法という法律にも違反することとなってしまいます。
出資法で定める利息に違反すると
刑罰を科せられることとなります。
また、出資法で定める利息に違反するお金の貸し借りは、
暴利行為として、公序良俗に違反し、無効とされ、
お金を借りた方に
元本さえも返済義務がないとされる可能性もあります。

たかが利息ですが注意が必要です。
( 2013/06/18 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第12回 裁判では借用証が必要か 

お金を返してもらおうとするときに、借用証は必要でしょうか。

もちろん、
相手の署名捺印のある借用証があった方がいいです。
しかし、借用証がないとしても、
相手に貸したお金の返還を請求することはできますし、
裁判で勝てる場合もあります。

その1つは、
相手がお金を借りたことを認めているときです。
相手が、こちらがお金を貸したことや
貸した金額を認めているときは、
裁判所も、その内容で判決を書いてくれますから、
裁判で勝つことができます。

しかし、相手が、こちらがお金を貸したことや
貸した金額を争っている場合には、
借用証がない場合、借用証の代わりに
お金を貸したことを証明する証拠が必要となります。

振込であれば、
振込依頼書や通帳の取引明細が有力な証拠となります。
現金手渡しだとすると、
相手からの領収書が有力な証拠となります。
目撃者がいれば目撃者の証言、
自分の預金口座から出金している通帳の記録なども
証拠となりますが、
これらは相手がお金を受け取った
客観的な証拠ではないため決め手とはなりません。

貸したお金の返還を求める際に、
相手が署名捺印した借用証があれば、
あまり労力や時間をかけずに裁判に勝つことができます。
しかし、借用証を取らずに、
現金手渡しで貸してしまったような場合には、
労力や時間をかけても、
裁判で勝てない可能性があります。
借用証がなくても
他の手段により証明ができれば
借用証は必ずしも必要ではありません。
しかし、
お金を貸したことの一番確実な方法は借用証なので、
お金を貸した時には
借用証を書いてもらうようにしましょう。

( 2012/11/13 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)

第2回 お金を返して欲しい―返還期限を決めずに貸してしまった― 

お金を貸したけれども、返してもらえないということは
よくあることです。
では、どうやって返してもらいますか。

まず、相手に請求しましょう。

でも、その前に、相手にお金を貸すときに、
いつお金を返してもらうか約束しましたか?
お金を貸すときに、いつ返してもらうのか、
つまり、返済期限を約束しないでお金を貸してしまうことは
結構多いです。

では、お金の返済期限を定めないでお金を貸したときは
お金を返してもらえないのでしょうか。
もちろん、そのような不合理な結論にはなりません。
お金を貸した以上は、
返済期限を約束しないでお金を貸しても
返してもらうことができます。
その場合は、どうするかというと
一定の期間を定めて返せという請求をすればよいこととなります。
その一定の期間をどう定めればよいかというと、
一般的には、借金の額が大きく借主の持っている資産が少なければ
1ヶ月から2か月以内に返せというように請求すればよく、
借金の額が少なく、借主の資産が多い場合には
1週間から10日以内に返せと請求すればよいとされています。

だから、お金を貸すときに
いつお金を返してもらえるのか決めて貸さなくても、
お金を返してもらうことはできるのです。

でも、お金を貸すときには、
いつ返すのか決めずに貸してしまうと、
ずるずると返さないということにもなりかねませんから、
返済期限をきちんと決めて貸す方が良いでしょう。
 
( 2012/09/04 00:00 ) Category 債権回収(貸金、売掛金、損害賠償) | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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