弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法
カテゴリー  [企業法務 ]

第357回 吉本興業「死亡しても責任を負わない」旨の誓約書は有効か(最終回) 

吉本興業の芸人が反社会的勢力が参加しているイベントに
闇営業をしていた問題に端を発して
吉本興業が芸人と契約書を交わしていない問題、
謝罪会見をさせないようにした問題等
いろいろ取り上げられています。

今度は、吉本興業がお笑いの訓練のための合宿への参加者に対し
「合宿中の負傷、これに基づいた後遺症、あるいは死亡した場合、
その原因を問わず吉本興業に対する責任の一切は免除されるものとする」
という誓約書に署名をもらっていたということが発覚しました。

上記のような、イベント参加者に「事故が起きても責任を負いません」という内容に承諾を求める
誓約書を取ることは、実はそんなに珍しいことではありません。
上記のような誓約書は、主催者の責任を免責することを承諾するので
「免責同意書」などと呼ばれています。

海外旅行やスポーツクラブに参加する際も、
この免責同意書を取られることが多いです。

では、この免責同意書は有効でしょうか。
この免責同意書で免責されるのであれば
事業者の方は簡単で、特に事故対策をする必要はないということとなります。
しかし、参加者等は、免責同意書が有効だとすれば
事故が起きても損害賠償請求ができないという不利益を受けることとなります。

過去裁判で争われたケースがあります。
結果は、無効と判断されました。

判例は、人間の生命・身体というような重大な権利の侵害について
予め一切の権利を放棄させるというのは
主催者側に一方的に有利で、合理性を認めがたい
という理由から
公序良俗に違反するとして、無効としています。

消費者契約法は、事業者の債務不履行等によって生じた責任の全部を免除するような
規定は無効としています。
また、消費者の利益を一方的に害する条項も無効としています。

したがって、この免責同意書は消費者契約法上も無効とされる可能性は高いと思います。

さて、このブログですが、今回をもって最終回とさせていただきます。
ハイハイQさんの「大学では教えない。でも役に立つやさしい法律講座」を書き始めたのが
平成14年8月で、今が令和元年8月ですから17年書いていたこととなります。

事務所のホームページには、企業法務ブログ相続ブログを掲載していますので
そちらをご覧いただければと思います。

では、これまでご愛読ありがとうございました。
何かございましたら、下記のメールアドレスまで問い合わせをいただきたいと存じます。

takashima@takashimalaw.com

( 2019/08/06 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第356回 吉本興業の芸人が従業員でないとしても 

前回、吉本興業の芸人は従業員かで
お話ししましたが、
芸能人やスポーツ選手の場合
従業員か、個人事業主なのかは
なかなか難しい問題があります。

特に吉本興業の芸人に関しては
おそらく吉本興業経由でしか仕事を受けてはいけないのでしょうし
芸人の肖像権等の管理も吉本興業で一括管理しているでしょうし
吉本興業の指揮命令には従わざるを得ない関係にあるのではないかと推測されますから
従業員と言える可能性は大きいと思います。

ただ、芸人は個人事業主だとしても、
今度は、圧倒的に力の強い吉本興業が芸人に対し
有利な条件で取引をするために
契約書を作成していないのではないかと疑われることから
公正取引委員会は、契約書を作成していないことは
直ちに独占禁止法に違反するわけではないが
契約書を作成していないことで
優越的地位の濫用を誘発する可能性があるとコメントしたようです。

具体的にどういうことかというと
特定のイベントについて
ギャラを50万円支払うと約束して
出演をさせたとします。
ところが、そのイベントは天気が悪かったので
お客さんが入らなかったとします。

その場合に、契約書のないことをいいことに
売上がこれくらいだったから
それに見合うギャラしか支払わないとする
ということです。

一般の芸人にとっては、吉本興業との契約を切られてしまえば
芸人としての働き口がなくなるのと同じですから
従わざるを得ないことになります。

これが独占禁止法上の優越的地位の濫用ということになります。

優越的地位の濫用というのは
一方が圧倒的に力が強い場合、その力を利用して不当な取引条件を
相手に飲ませてしまうということになります。

吉本興業と芸人が雇い主と従業員という雇用関係でないとして
吉本興業と個人事業主である芸人との取引だとしても
吉本興業と一般の芸人との間では圧倒的な力の差があることから
吉本興業が芸人に対し不利な取引条件を飲ませるのであれば
独占禁止法の適用が問題となるということなのです。



( 2019/07/30 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第355回 吉本興業の芸人は従業員か? 

吉本興業の芸人が、
吉本興業を通さずに受けた仕事が
反社会的勢力関係者からの仕事だった可能性があった
ということに端を発し、
吉本興業と芸人間でトラブルとなっています。

そもそも、芸人が吉本興業を通さずに仕事を受注した行為(いわゆる「闇営業」)は
適法なのかということが問題となります。

通常の会社では、従業員が会社の業務を個人で受注したら
背任罪となる可能性がありますし
会社との競業禁止義務違反となる可能性があります。

しかし、吉本興業と芸人との間では、雇用契約ではなく
マネジメント契約が結ばれているに過ぎないのです。
そもそも吉本興業と芸人は、口頭の契約で文書では契約を結んでいないので
その契約内容はよくわかりません。
ただ、吉本興業は今回の件で、芸人に対し、マネジメント契約の解除の通知をしているので
マネジメント契約だと思われます。
そして、マネジメント契約というタイトルからは
芸人が吉本興業に対し、芸人の仕事のマネジメントを委託している契約という
内容だと推測されます。

もし、吉本興業と芸人との関係が、マネジメント契約だとすれば
通常であれば、芸人が何の仕事をどこから受注しようが自由であるというのが原則です。
仕事は全部吉本興業を通さないといけないという内容である可能性もありますが
そうだとすると、芸人は吉本興業に専従していると判断される可能性があり
吉本興業の従業員と判断されてしまう可能性があります。

芸人が吉本興業の従業員と判断されると何がまずいと言えば
吉本興業は契約している全ての芸人に対して、仕事がなくても最低賃金を保証しなければなりません。
おそらく、このことを避けるために吉本興業は芸人との間で契約書を結ばず
さらに雇用契約ではなく、マネジメント契約と言っていると思われます。

今回、社長が芸人をクビにすると言ったようなことが報道されていますが
クビにするということを言うこと自体、実は、マネジメント契約ではなく
雇用契約を前提とした表現だと思います。

吉本興業の問題は、芸人との関係が実質的には雇用関係に近いにもかかわらず
雇用ではないとしていることから、生じている可能性があります。



( 2019/07/23 09:30 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第351回 自筆証書遺言を法務局で保管してくれるようになります(改正相続法5) 

相続法の改正で遺言については
2つ大きな改正がなされました。

1つは、前回ご説明した自筆証書遺言の財産目録は
自筆で書かなくてもよいということです。

もう1つは、自筆証書遺言を法務局で保管してくれるということです。

これまで、自筆証書遺言は作成にお金がかからないというメリットがあるにもかかわらず
みなさんにあまりお勧めできなかった理由は2つです。

まず、1つは、自筆証書遺言は、全文自筆で作成しなければならず
日付を書いて、署名捺印しなければならないという要件を満たす必要があります。
しかし、みなさんがご自分で書く場合はこの要件を満たさない可能性がありました。

2つ目は、自筆証書遺言は、紛失、焼失、誰かが破棄してしまうなどすると
仮に写真やコピーが残っていたとしても効力が無くなってしまうということです。
遺言書を書いてから亡くなるまでが何十年もかかる場合があります。
しかし、その間、無くさずに書類を保管しておくことは
結構大変なことです。
これに対し、公正証書遺言であれば
遺言のデータ自体は公証役場で保管していますので
遺言がなくなるということはほぼ考えられませんし、
相続人が遺言者の死亡後に、公証役場に遺言の有無や内容を問い合わせれば
遺言書を出してくれるのです。

このように保管の面で、自筆証書遺言はリスクがありました。
今回の相続法改正で、自筆証書遺言を法務局で保管してくれることとなりました。
そこで、遺言を書いた人が法務局で保管してもらえば
相続人などが遺言者の死亡後に法務局に問い合わせをすれば
遺言の有無や内容がわかるようになったのです。

国が保管してくれるのですから、ほぼなくなる心配はないと思います。
しかも、自筆証書遺言は、遺言者が死亡後に、遺言の検認の手続きが必要でした。
法務局に自筆証書遺言を預けた場合は、
この検認手続きも不要となります。

これらの点で、自筆証書遺言は、費用もかかりませんし、
保管の点でも安心できることとなりました。
検認手続も不要となるというメリットもあります。

これらを考えると、遺言書を作成する場合
これまでは、公正証書遺言をお勧めしてきましたが、
自筆証書遺言でもよいのではないか
と思います。

ただし、法務局の自筆証書遺言の保管については
令和元年7月1日に施行されるのではなく
令和2年(2020年)7月10日に施行される予定となっています。
施行されれば便利な制度だと思いますが
施行まであと1年かかります。


( 2019/06/25 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第343回 システム開発失敗で127億円の損害賠償請求 

日経コンピュータの記事によると
食品卸最大手の三菱食品は
システム開発大手TISインテックグループのインテックに対し
委託した管理システムが完成しなかったことを理由として
何と127億円の損害賠償請求を求めて
訴訟を起こしたそうです。

システムは、三菱食品とその取引先3000社の
ビジネスルールの管理を目的とするものでした。

数が多いので、1年かけて3000社のルールを管理していく
予定だったようですが、
遅れて、当初の予定には到底間に合わないということで
契約を解除して、127億円の損害賠償請求をすることにしたようです。
その損害の内訳は
委託先のインテックに支払った委託料約30億5000万円
インテック以外の企業への支払い分約26億円
旧システム維持に必要な利用料約70億円
だそうです。

三菱食品からすれば、新システムができなかったのだから
新システム開発のために支払った費用は全部無駄になったということはわかります。

しかし、委託先のインテック以外に、
システム開発に必要な費用を26億円も支払っていた
ということです。
これが役に立たなくなったとして損害となるのかどうかは微妙ですね。

新システムが開発できていれば払う必要がなくなったはずの
旧システム維持に必要な利用料70億円も
認められる可能性もあるし
認められないかもしれないというものです。

これに対し、インテック側は、
開発したものは品質を確保していた、
システム資産が肥大化して管理できないため
取引先を移行するための調査が難航したことが
原因で、失敗の原因が三菱食品にある
と主張しています。

システム開発については
注文主の発注の仕方が明確であったか
途中での変更があったかなど注文主の原因が問題となることが
多いですが、
今回の受託者であるインテックの
システム資産が肥大化して取引先を移行するための調査が難航した
というのは、
注文主に原因があったと言えるのかこれだけの主張ではよくわかりません。
システム開発の専門業者である受託者側で最初からそれくらい
わかるのではないかという気もします。

仮に、受託者に過失があったとしても
損害が全部認められるのかという点も問題となります。

大手同士の巨額の損害賠償請求訴訟ですが
さて、結果はどうなるでしょうか。









( 2019/04/23 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第337回 「仮差押えで取引中止」損害賠償認められず 

相手に対し、お金を払えと請求する権利があるときに、
相手の預金や売掛金、不動産などの財産を
仮差押えや差し押さえによって、
押さえることができます。

仮差押えは、判決が出るまで差し押さえを待っていては
相手が財産を隠してしまうおそれがある場合に行う
仮の手続きです。

差押えは、判決に従って、相手の財産を押さえて換金するために
押さえる手続きですが、
一審判決が出た段階で
仮執行宣言という条項に基づいて、
控訴されて判決が確定していなくても
相手の財産を押さえることができます。

仮差押えも、仮執行宣言に基づく差押さえも、
いずれも、仮が付いており、あとでひっくり返る可能性があります。

ひっくり返った場合には、仮差押えや仮執行宣言に基づく差し押さえをした
相手方に対し、損害賠償請求をすることができます。

この度、最高裁判決が出されたのは、
この仮差押えが後日ひっくり返り根拠がないとされた場合
この仮差押えがなされたことにより
取引先の信用が無くなって、取引を打ち切られてしまったことの
損害まで賠償請求することができるか
という点についてです。

最高裁は、契約の解除は、仮差押えを理由になされておらず、
新しい取引については、継続するかどうかは取引先の判断で
決められることから、仮差押えと取引中止との間で
因果関係はないと判断しました。

通常、仮差押えがなされた後に、取引が打ち切られれば
仮差押えがなされたことが原因と考えられますが
最高裁は、明確に仮差押えを理由に取引中止をしたのでなければ
取引中止までの損害賠償を認めないとしたのです。

これは、仮差押えは、債権者が予め権利を確保する手段で、
裁判所が証拠を判断して行っているものであることから
仮に証拠が不十分でなされた場合でも、損害賠償の範囲を広く認めると
債権者が委縮して仮差押えを利用しにくくなるということを
考慮したのかもしれません。

ただ、証拠が不十分なまま仮差押えをされた方としては
取引を打ち切られて、損害が出てしまったわけなので
賠償請求が認められないと納得できない気はします。

仮差押えをされた後で取引を打ち切られた場合は、
仮差押えが原因であることを明確にしてもらっておく
必要がありそうです。









( 2019/03/12 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第335回 アルバイト社員にもボーナスが必要? 

大変な判決が出されました。

これまで、契約社員等非正規社員と正社員との間で
どの手当を平等にしなければならないかなどについて
指摘した判決を取りあげてきました。

今回の判決は、
正社員と非正規社員の最も異なる点である
ボーナス(賞与)について
非正規社員にも支給しなければならないと
しました。

しかも、一審判決ではなく、高裁判決なので
かなり意味は重いです。

判決では、賞与額が年齢や成績ではなく
基本給に連動していることから
就労自体への対価の趣旨を含む点を踏まえ
「有期契約社員へ正社員の約8割の賞与があるが
アルバイト職員に全くないのは不合理だ」
と指摘して、
正社員の約6割分が支給されるべきだと
判断しました。

アルバイト社員と正社員とで、
一日の出勤時間や一週間の出勤日数などが
同じだったのか、違っていたのか等詳しい事情は
新聞報道などではわからないのですが
アルバイトにボーナスを支払うことを予定して
採用している会社はないと思いますので
この判決が一般的になると
かなり世の中に影響を与えることになると思います。

その割には、あまりニュース等で取り上げられないのは
なぜなのでしょうか。

雇い主側は、当然最高裁に上告するでしょうから
最高裁判決がどのような判断を下すのか
注目です。




( 2019/02/26 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第331回 後から商標登録されたら、先に使用していても使えなくなるか? 

シンガポールの有名ティラミス専門店である
「ティラミスヒーロー」が
「HIRO’S」という会社に「ティラミスヒーロー」という名称を
商標登録されてしまったので、
「ティラミスヒーロー」という名称を使用できなくなるという
騒動が起きました。
反発する消費者等の声の影響で「HIRO’S」は
「ティラミスヒーロー」に「ティラミスヒーロー」の名称の使用を認める
ことにしたようです。

ただ、そもそも、シンガポールの「ティラミスヒーロー」が
日本で先に「ティラミスヒーロー」という名称を使用していた場合には
「先使用権」と言って、後から商標登録されてしまったとしても
使用自体は認められる可能性がありました。

シンガポールの「ティラミスヒーロー」は
弁護士や弁理士に相談すれば
使用に問題はなかったと思われます。

ただ、先使用権が認められるためには
先に使用していたことだけではなく
一定の周知性(ある程度知られていたこと)などが
要件となっており
その要件を満たす必要があります。

「ティラミスヒーロー」が有名だったということが
証明できれば
「HIRO’S」という会社の商標登録自体を
無効だとすることも可能となります。

また、「ティラミスヒーロー」という名称が有名であったということが
証明できると
逆に、不正競争防止法により
「HIRO’S」の「ティラミスヒーロー」という名称を利用した
営業の差し止めや、損害賠償請求もできる可能性があります。

ただ、かなり有名なお店なら、有名であったことを証明するのは
簡単でしょうが、
ちょっと有名くらいだと、いざ有名だということを証明するのは
なかなか難しかったりします。
そういうことを考えると
商品名や店名を商標登録しておくことは
必要かもしれません。






( 2019/01/29 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第325回 「やめられないとまらない」のキャッチフレーズについて訴訟が起こされていた 

「やめられない、とまらない、カルビーのかっぱえびせん」
というキャッチフレーズは、
みなさんご存知だと思います。

このキャッチフレーズを巡って、
訴訟が起こされ、
判決が出ていたことが
ヤフーニュースで取り上げられていました。

どのような訴訟かと思い、
公開されていた判決を見たところ、
広告代理店の従業員だった方が
このキャッチフレーズを自分が考えた本人であるという事実の確認と
その旨の記事の掲載、損害賠償請求7500万円を求めたという
事案でした。
さらに
高裁では、名誉棄損に基づく謝罪広告の掲載と
慰謝料を請求していました。

まず、重要なことは、裁判では、事実の確認を求めることができません。
裁判では、基本的に、相手に対しお金を支払え、建物を明け渡せなど
請求を求めることになります。
例外的に確認を求める裁判もあるのですが
それは法律的な権利が誰にあるかという権利の確認を求めることになります。

したがって、仮に、キャッチフレーズを思いついたのが本人だとしても、
思いついたのが本人であるという確認を求めることはできないのです。

もしも本件で訴訟をするとすれば、著作権が自分に帰属することの確認を求める
ということになります。

ただし、会社の業務において作成された著作物は
基本的には会社に帰属するので、仮に思いついたのが本人であっても
著作権は本人には帰属しません。
また、本人も自分に著作権があると主張しているわけではなく
そのキャッチフレーズを思いついたのが自分だということを言いたいのだと思います。

そこで、カルビーがテレビ番組や新聞でキャッチフレーズができた経緯について
本人が思いついたのではなく、カルビーの会議の場で作られたという報道がなされたことは
本人の名誉を傷つけるものだとして、謝罪広告や慰謝料の請求を求めました。

この点は、判決は、仮に名誉棄損になる場合でも、名誉棄損をしたのは
テレビ局や新聞であるから、カルビーには
責任はないとしました。

第一審では、弁護士を付けずに自分で裁判をしていたことから
事実の確認を求める訴訟を起こし、
名誉棄損をした相手をカルビーのみとしてしまったのだと思います。
最初から弁護士を立て、カルビー、新聞社、テレビ局を相手に名誉棄損の訴訟を起こせば
勝てたかどうかはわかりませんが、今回の判決のような門前払いのような
判決にはならなかったと思います。

なかなか訴訟は自分でやるには難しい点も多いことから
弁護士に相談し、依頼してやられた方がよい場合が多いと思います。



( 2018/12/11 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第323回 日産のゴーン会長逮捕 

フランスのルノー、日産自動車、三菱自動車の会長を務めている
カルロス・ゴーンが金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)で逮捕されました。

上場している会社は、有価証券報告書を内閣総理大臣宛てに提出しなければなりません。
その有価証券報告書の記載内容に基づき
投資家が会社の財務内容を把握して、投資をできるようにしているのです。
そこで、その有価証券報告書に誤りがあると
投資家の判断を誤らせることになることから
有価証券報告書の内容に虚偽がある場合は
刑罰が科されることとなっています。
これが有価証券報告書の虚偽記載罪ということになります。

その刑は10年以下の懲役、または1000万円以下の罰金となっています。

今回逮捕の容疑となった虚偽記載は、50億円の役員報酬を記載していなかった
ということです。

金額的に大きかったことから逮捕となったと思われます。

しかし、逮捕後の報道では、
子会社を利用して、会社に自宅を買わせて無償で利用していたことや
会社の業務を行っていないお姉さんとコンサルティング契約を結んで
多額の金銭を支払っていた疑いがあると言います。

これらは、会社法上の特別背任に当たる疑いがあります。
これらも罰せられることになるのかどうか
今後の捜査では注目ですね。

これが、株を100%ゴーンが持っているオーナー企業で、上場していない会社あれば
あまり問題はなかったのですが、
日産等は、上場企業であり、100%のオーナー企業でもなかったのですから、
公私混同は許されません。

そういう意味では、上場していない100%のオーナー企業の方が
経営は楽ということになります。


( 2018/11/27 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第317回 マリオカート訴訟は任天堂が勝訴 

大分前になりますが、
スーパーマリオなどの衣装を貸し出し、
一般道を走るカートを外国人観光客等に貸し出している
会社の行為を任天堂が差し止めを請求し
損害賠償を請求する訴訟が起こされました。

この度判決が出され
任天堂が勝訴しました。
判決文が公開されていないので
どういう点が争点で
それについて、裁判所がどう判断したかは
わかりません。

任天堂の著名な商品、あるいはサービスに類似していることから
不正競争防止法に違反すると判断されたようです。

マリオカートという名称(商標権)の侵害や
著作権の侵害は認められなかったようです。

マリオ等任天堂のキャラクターの衣装を貸し出すことを
禁止されたようですが、
キャラクターの衣装の貸し出しは
任天堂の著作権を侵害するということで
差し止めが認められたのか
任天堂のサービスとして誤解を与えるということで
差し止めが認められたのか
よくわからなくて残念です。
報道では、著作権侵害は認められなかったとされているので
キャラクターの衣装の貸し出しの差し止めは、
著作権侵害を理由とするものではなかった
と思われます。

そうだとすると、逆にキャラクターの衣装(いわゆるコスプレ)のレンタル自体は
合法なのかという疑問も湧いてきますが
これらの点については
残念ながら報道では書かれていません。

判決文が判例集などで公開されたときには
また取り上げたいと思います。
まだ、第一審なので
控訴される可能性もあります。
控訴審判決が出たりすれば、また取り上げたいと思います。



( 2018/10/16 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第303回 個人情報流出の損害は500円以内? 

大分前となりますが
2014年にベネッセコーポレーションから
顧客情報が流出しました。
そのとき、ベネッセコーポレーションが個人情報が
流出した顧客に500円の商品券を配布したことから
個人情報の流出の慰謝料は
500円より高いのか低いのかと
議論されてきました。

この度、東京地裁でこの件に関し
判決が出されました。

訴えを起こした原告は
個人情報流出により
営業電話やダイレクトメールを受けたり
詐欺などの犯罪に利用される恐れがあるとして
慰謝料の請求を求めました。

これに対し、ベネッセ側は
流出情報を利用した勧誘行為があったとしても
日常的によくあることなので
損害とまでは言えない
と反論しました。

裁判所は、
氏名や住所などの情報は
思想信条や性的指向などの情報に比べ
他者にみだりに開示されたくない
私的領域の情報としての性格は低いと指摘した上で
原告側に個人情報流出により実害が生じていないとして
ベネッセがお詫びの文書と500円の金券を配布したことを考慮して
損害賠償請求を認めませんでした。

この判決から判断すると
個人情報流出の慰謝料は
500円未満だということになります。

あるいは、実害が生じない限り
損害賠償請求は発生しない
ということなのかもしれません。

みなさんは、どう思いますか?
( 2018/06/26 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第302回 正規非正規の手当についても最高裁の判断 

前回、第301回 定年後の再雇用、待遇格差に遂に最高裁判決
で、定年後の再雇用の際に給料を減額してよいかという点について
最高裁が合理的な理由があれば減額しても違法ではないと判断した
ことについてお話ししました。

今回は、その続きで、最高裁判決は正規非正規の手当の差についても
判断をしましたので、その点についてお話ししたいと思います。

第一審の判決では
通勤費用を補助する通勤手当を
非正規社員に支給しないことを違法だと判断しました。

これに対し、原審の高裁判決では、
通勤費用を補助する通勤手当、
食事代を補助する給食手当、
事故を起こさないことを奨励する無事故手当、
特殊作業業務に従事した際の作業手当を
非正規社員に支給しないことは違法として
相当額の支払いを命じました。

最高裁は、これらの手当については
高裁の判断が正しいとし、
さらに、
休日以外の全ての日に出勤したものに支払われる精勤手当、皆勤手当についても
非正規社員に支払わないことは不合理で違法と判断しました。

住宅費用の補助である住居手当については、
正社員は転勤等で転居があり住居費用が多額となる可能性があることから
転勤のない非正規社員に支給しなくても
不合理ではないと判断されました。

以上のように、非正規だから手当は支給しないというだけでは
違法とされる可能性があります。
非正規の社員に手当を支給しない場合は
正社員にはこのような理由があるから支給する
あるいは、非正規社員にはこういう理由があるから
支給しないと合理的な理由が必要となります。

社員の転勤等がない会社では
住居手当を正社員と非正規社員で支給したりしなかったりする場合は
不合理で違法だとされる可能性があります。

会社は、この最高裁判決を踏まえて
支給している手当を非正規社員に支給しないことに合理的理由があるか
検討する必要があります。




( 2018/06/16 15:53 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第301回 定年後の再雇用、待遇格差に遂に最高裁判決 

定年後の再雇用の際に、
それまでの給料を減額してよいか
基本給以外の手当はどうかについては
これまで、各地方裁判所や高等裁判所で
争われてきました。

一審判決では、同じ職務を行っているのに
給料を減額することは違法で
会社に同一の給料を支払えと命じました。

この点最高裁は、
再雇用者は定年まで正社員の給料を支給され
老齢厚生年金も予定されていることから
これらを考慮して不合理かどうかを判断するとしました。
そして、会社が定年後は職務給がない代わりに
基本給与額を定年時の水準以上として
収入の安定に配慮していること、
歩合給で労務の成果が給料に反映されやすくされていること、
老齢厚生年金の支給開始まで2万円の調整金も支給されること、
などから、
退職時の給料よりも再雇用時の給料が減額されても
不合理とは言えないと判断しました。

このように最高裁は、一般的に行われている
再雇用の際の給料の減額を認めました。
しかし、無制限に減額してよいというわけではありませんので
会社側は再雇用する場合、
給料を減額する金額の範囲に合理的な理由があるのかどうか
検討して、理由を説明できるようにする必要があります。

( 2018/06/12 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第300回 意外に難しいアメフト事件における日大の危機管理対応 

日大アメフト部の選手が
試合中に相手のクォーターバックを
故意にケガをさせようとして
プレーが終わってから
タックルをした問題で、
日大という大学本体の危機管理が
非難を浴びています。

不祥事が起きた場合、
被害者のいる不祥事と
被害者のいない不祥事とがあります。
被害者が自分あるいはいない不祥事の場合
被害者の立場を気にする必要はありません。

そこで、どういう事実があったのか、どういう経緯で起きたのかなどは
第三者委員会である程度時間をかけて調査し
結果を発表するということで、問題はないと思います。

しかし、今回のような被害者のいる不祥事の場合、
被害者に謝罪をしなければなりません。
謝罪をするのに、どういう事実経過で被害を与えてしまったのかということが
確定していなければ謝罪はできない(相手方は納得しない)わけです。

今回のケースでは、
日大の監督は試合中の加害行為について指示していないと、
自らの責任を軽くしようとしています。

組織としての大学は、監督の言い分が正しければ
その言い分に乗った方がよいわけで、
それにもかかわらず、大学に不利な主張を裏付ける証拠を集めた上で
大学に不利な事実を認めて謝罪するということは
大変なことです。
しかも、これらの手続きは迅速にやらなければなりません。

組織でも、人間でも、自分に有利なことであれば
迅速に対応することは可能ですが
自分に不利なこと、嫌なことは
なかなか迅速に対応することは難しいです。

しかし、今回のケースは、被害者がいて、
しかも試合の映像は公開されていたのですから
その映像などの証拠に沿うような形で
事実関係を把握したうえで、
謝罪する必要があったということになります。

第三者に調査を依頼するのはいいですが
期限を3日以内とすることなどが必要だったと思います。

また、加害選手と監督の言い分の違いについて
どちらが信用できるかについては
試合の映像や加害選手が反則し退場させられたことについて
監督が試合中選手に対し何もしなかったことから
加害選手の言い分の方が正しいと判断するのが通常だと思います。

被害者への謝罪等について
加害行為の原因であると思われるけれども
責任を軽減しようとしている監督に任せていた
ということが、対処の大きな誤りであったと思われます。

そういう意味で、日大の経営者は
危機管理対応を誤ったと言えるでしょう。

しかし、実際に会社において同様のことが起きたら
どうでしょうか。
担当取締役が「自分はやっていない。」と主張している場合に
それを否定し、加害行為を認めて相手に謝罪するということが
できるでしょうか。

財務省のセクハラ問題も同じような問題でした。

やっていないという言い分の方が正しいかもしれないし、
また、その言い分に乗った方が自分たちも責任がなくなるという場合に
迅速に事実関係を調査し、自分に不利益な事実を認め
謝罪するというのは、
言うのは簡単ですが、実際に行うのは難しいと思います。






( 2018/06/05 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第291回 定年後の再雇用で給料75%減額は違法 

またもや労働事件での判決が出ました。
今回は、定年後の再雇用の際に
給料を下げられるかという問題についての判決です。

報道によりますと
食品会社が定年を迎える従業員に
再雇用の条件として
約75%減額した給料とすることを提案しました。

これに対し、従業員は
再雇用の際の給料引き下げが違法であり
不法行為に該当するとして
従業員としての地位の確認や働いていれば得られた給料分の賠償や
慰謝料を請求して、訴訟を起こしました。

これに対し、一審の福岡地裁小倉支部は
原告の請求は、全く認めませんでした。
しかし、福岡高裁は、
65歳までの雇用の確保を企業に義務付けた高年齢者雇用安定法の趣旨を考えると
定年前と再雇用後の労働条件に不合理な相違が生じることは許されない
と指摘して、今回の会社の提案は
生活への影響が軽視できないほどで、高年齢者雇用安定法の趣旨に反し
違法だと判断しました。
そして、慰謝料100万円の支払いを認めました。
ただ、定年後の雇用については合意に至らなかったため
従業員としての地位や働いていれば得られた給料分の請求などについては
認めませんでした。

一見、この判決は、会社に不利な判決のようにも読めます。
しかし、判決の結論に従えば
慰謝料として100万円を支払う必要はあるけれども
低額の給料に合意しなければ再雇用しなくてもよい
とも読むことができます。

そうだとすれば、高年齢の従業員を再雇用したくないときは
低額な給料を提案して、慰謝料の支払いで解決するという
方法も考えられなくもありません。

これらについては、会社側はよく検討する必要がありそうです。

( 2018/04/03 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第286回  非正規社員に手当は不要? 

前回もセクハラ問題で、
労働問題でしたが、
今回も非正規社員の手当の問題で
労働問題です。

大阪地裁で、郵便局に勤務する
非正規社員が正社員と手当の不均衡を理由として
未払の手当を請求した訴訟について
判決が出されました。

以前にも、住居手当等については
非正規社員にもその趣旨が当てはまることから
支給しないことは違法とされる判決が出ていました。

今回、裁判所は
扶養手当について、
親族の生計を維持するのは
非正規社員にも正社員と同様の負担を生じていることから
非正規社員に対しても
支給をしないと、
労働契約法20条で禁止する不合理な待遇格差に該当し
違法だと判断しました。

しかし、扶養手当は、長期間勤務を前提とする正社員について
扶養家族を養う負担を軽減することにより
長期間の勤務を可能にするという目的がある手当であるとも言えるので
正社員のための手当だという判断もありえたと思います。

この点は、争いようがあると思いますので、
高裁や最高裁がどのような判断となるか興味がありますね。
ただ、会社や事業者のみなさんは
この点をどう扱うか微妙なところになります。

( 2018/02/27 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第285回 セクハラの責任は親会社まで負うか 

先日、子会社の従業員が別の子会社の従業員にセクハラをした場合
親会社も責任を負うかということが争われた事件で
最高裁判決が出されました。

この事件、
一審では、そもそもセクハラがなかったと認定されましたが
控訴審では、セクハラが認定されたばかりでなく
雇い主である子会社と親会社にまで
セクハラの責任が認められました。

そして、最高裁では、
セクハラは認められ、
セクハラをした子会社の従業員と
雇い主である子会社には
セクハラの責任が認められましたが
親会社にはセクハラの責任がないとされました。

親会社の責任の有無がわかれたポイントは何か
説明します。

高裁は、法令順守体制を整えて相談窓口まで
設けていたのだから、
相談があったら、相応の対応をすることが
必要だったのに
親会社はそれをしなかったから
責任があると判断しました。

これに対し、最高裁判決は
単に相談があったのに、
相応の対応をしなかっただけでは
責任は発生しないと判断しました。
具体的には、
本件の相談内容であるセクハラは
被害者である従業員が子会社を退職後に、
かつ、事業場外で行われたもので、
加害者である従業員の職務に直接関係するとは
思われないこと、
しかも、親会社に申し入れがされたときは
加害者である従業員と
被害者である従業員は
同じ職場では働いておらず
セクハラが行われてから
8カ月以上経過していたことなどから
セクハラの相談を受けた際に
事実確認の対応をしなかったからと言って
損害賠償責任を負うほどの義務違反はなかった
と判断しました。

最高裁も、
子会社の従業員のセクハラについて
親会社は常に責任を負わないと
言っているわけではありません。

子会社の従業員同士のセクハラであっても
親会社は法令順守体制を整えて窓口を設けた以上
従業員が在職中に、
グループ会社の事業場内で
セクハラが行われたという相談が来た場合には
何らかの対処をしないと
親会社だから関係ないとは言えない
と判断される可能性が高いと思います。


( 2018/02/20 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第274回 記事は真実。問題は広告の見出し 

報道によると
コメの卸売業者が産地を偽装していた問題で、
そのコメがイオンで販売された弁当などで使用されていたことについて
週刊文春は
「『中国猛毒米』偽装イオンの大罪を暴く」
という見出しで広告を出し、記事を掲載しました。

これに対し、イオンは名誉棄損だとして損害賠償請求をしました。
一審は、広告の見出しや記事の一部は真実と認められないとして
2490万円余りの損害賠償を認めました。

しかし、二審は、記事は真実であり、食品の安全に関して問題を提起する良質の言論で
裁判を起こすことで委縮させるのではなく、言論の場で論争を深めていくことが望まれる
としました。
ただし、広告の見出しについては、コメに猛毒が含まれていたという誤った認識を
抱かせるとして、110万円の賠償は、認めました。
一審判決の内容からすれば、勝訴と言ってもよいくらいの減額となっています。

裁判官からすると、余程記事の内容は、よくできたものだったのでしょう。
しかし、週刊誌の中身をいちいち記事まで読んで検証する人は
少ないのではないかと思います。
いわゆる世間は、新聞に出される雑誌の広告の見出しや
電車の中吊り広告で、
そのような内容の記事が書かれている=そのような事実がある
と思ってしまうものなのです。

そう考えると
「『中国猛毒米』偽装イオンの大罪を暴く」
という見出しは、
産地偽装を超えて
イオンで人間の健康を害する毒が入っているコメを
売っていたと思わせるもので
とても、真摯に食品の安全に関する良質の言論とは
思えないセンセーショナルなものです。
しかも、広告の見出しの方が世間一般に与える影響が
大きいことを考えると
110万円の賠償額は安すぎるのではないかと思います。

それに、言論の場で論争を深めていくといっても
新聞や電車の中吊りで出されてしまった広告について
後から論争したところで
一度付いたイメージを消すのは
簡単なことではありません。

言論には言論で反論しろという
裁判所の言っていることは
理解できないわけではありませんが
実質的に、週刊誌のやり得を
認めているようなもので、
裁判官は現実を知らないと言われても仕方がないような気がします。

食の安全に関する良質な言論なのであれば
人に誤った印象を与える見出しをつけること自体
おかしいと思います。
( 2017/11/28 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第273回 未払残業代の時効が5年に 

第267回 残業代の請求事件が増えています
で、お話ししたように、
従業員からの会社に対する残業代の請求の事件が増えています。

未払残業代は、現在労働基準法で、2年で時効にかかるとされています。
これは、民法が従業員の給料の時効を1年と定めていて
1年はあまりに短いことから
労働者の保護のために
労働基準法では倍の2年に伸ばしているのです。

この度民法が改正されて
施行はまだですが、
全ての債権について時効は5年と定められました。
労働基準法がなく、民法に従うのであれば
従業員の給料も時効は5年になるはずです。

しかし、労働基準法で時効は2年と定められていることから
2年になってしまうということなのです。
本来労働者を保護するために2年としたのに
今度は、それが却って労働者に不利になってしまう
ということとなっています。

そこで、厚生労働省は、従業員の給料の時効を5年と
するよう労働基準法の規定を改正することを検討する
のだそうです。

未払残業代が、2年分まとめてくるのでも
会社側としては大変だと思いますが
これが今後は5年となる可能性があるわけです。

残業代の未払いが発生しないように
雇用契約や就業規則、実際の労務管理を変える必要があると思います。



( 2017/11/21 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第269回 オタ芸は迷惑行為か 

僕は、アイドルのコンサートには行ったことはありませんが、
ファンがアイドルに対し声援を送る際に
一部の観客が曲に合わせて
特別な掛け声や動きをするオタ芸というものがあるそうです。
僕もテレビでは見たことがあります。

このオタ芸のせいで
アイドルのコンサートに行った男性が
曲が3割も聞こえなかったとして
主催者に対し、
損害賠償請求などを求めました。

これに対し、一審判決は
オタ芸にはコンサートの雰囲気を高揚させる側面もあり、
悪意を持って妨害する行為とは言えない。
また観客にどこまで許すかは主催者の裁量に委ねられている。
と判断しました。
高裁判決も同様でした。

男性は、よほどオタ芸が許せなかったのでしょう。
最高裁まで上告しました。
しかし、最高裁判所も上告を棄却しました。


コンサートを、
どのような雰囲気で行うかなどは
主催者が企画し決めることなので
どのような行為を禁止し、
どのような行為を認めるかも
コンサートの企画の一部なので
主催者に広く裁量が認められています。

それでファンが減ったら
それは主催者の自己責任ということになります。
主催者はその辺を見極めて
禁止したり、認めたりすることになります。




( 2017/10/24 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第267回 残業代の請求事件が増えています 

景気がよくなり、少子化の影響もあってか
労働力の不足が言われています。

電通の過労死事件をきっかけに
残業や過労について報道で取り上げられることも
多くなってきています。

その影響を受けてか
残業代の請求について相談を受けることが多くなりました。

主に、会社側から相談を受けることが多いですが
会社側から相談を受けることが多いということは
従業員あるいは元従業員から
未払残業代の請求を受けているケースが増えている
逆に言えば、
従業員が未払残業代を請求するために
弁護士に依頼して、
会社に対し、内容証明郵便を送ったり
訴訟を起こしたりしているということになります。

未払残業代については
雇い主側に、残業(労働時間)を管理する責任があるので
訴訟になってしまうと
その時点から対策を練ることはなかなか難しいです。

日頃から、雇い主側が
残業をさせない、
あるいは
残業代を含んだ雇用契約にするなど
契約や就業規則から
労働時間の管理方法まで
きちんと整備しておく必要があります。

ただ、残業代を含むと書いただけではダメで
基本給と残業代の区別や
割増賃金等のルールを守る必要があるので
その点を意識したルールを作成する必要があります。






( 2017/10/10 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第261回 5年超勤務で有期雇用社員が正社員になる 

契約社員など雇用期間が定められている従業員を
有期雇用社員と言います。
この有期雇用社員も、
契約の更新を重ねて、5年を超えて勤務した場合は
無期雇用、即ち正社員となるという法律ができ、施行されたのが
2013年4月です。

となると、来年(2018年)4月で、5年を超えて働き続けてきた
有期雇用社員は、
正社員となることができるということになります。

しかし、労働者の団体である連合がアンケート調査を行ったところ
有期労働者の84%が内容を知らなかったということです。

有期雇用労働者が無期雇用労働者になるためには
労働者から会社に対し申し込みをする必要がありますから
労働者が知らないということは
労働者が無期雇用社員になるための申し込みをするはずもないですから
無期雇用社員にはなれないということになります。

有期雇用社員と無期雇用社員の
一番の違いと言えば、
もちろん、1年などの契約期間があるかないか
ということになります。
この契約期間満了で、
解雇(雇い止め)ができるかどうかは
雇う側にとっては大きな違いとなります。

そこで、会社によっては
5年を超えては契約を更新しないことにするなどの対応を
取っているようです。






( 2017/09/04 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第258回 業務上横領罪で逆転無罪 

経理業務の委託を受けていたコンサルタント会社が
依頼者である企業から現金を着服したとして
業務上横領罪で、起訴されていました。

一審は有罪。
しかし、控訴審では、無罪となりました。

具体的には、以下のようなケースだったようです。
広告会社がコンサルタント会社に経理業務を委託していました。
コンサルタント会社は、コンサルタント会社の社長が経営している
別会社に依頼者である広告会社から3億8000万円を送金しました。
この送金が、広告会社に無断でなされたのか
承諾があったのかが争われました。
承諾があれば、もちろん、横領にはなりませんし
無断でやったのであれば、横領になるということになります。

一審は、過去のメールからは承諾がなかったと判断しましたが
二審である高裁は、過去のメールから、承諾があったと認定しました。

報道では、この3億8000万円が何のお金で
コンサルタント会社社長が経営する別会社が
どういう理由で受け取る権利があったのかなど
詳しい事情がわかりません。

ただ、承諾がなかったとされれば
業務上横領罪で有罪な上に、3億8000万円を返還しなければならないところを
承諾があったとされたので
無罪である上に、おそらく3億8000万円の返還は不要とされるのではないかと思います。

今回刑事事件であるにも関わらず
このコラムで取り上げたのは
お金を任せている場合は
横領される危険があるので
注意する必要があることを
みなさんに伝えたかったからです。

また、承諾があったことを証明できるかどうかで
刑事責任や民事責任を負うか負わないか
全く逆の結論になることがあるということも
みなさんに知っておいてほしかったからです。

他人にお金を任せる場合、
他人からお金を任される場合は
お互いこのようなトラブルに巻き込まれないよう注意が必要となります。
( 2017/08/08 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第256回 出光の新株発行認められる 

第254回 出光創業者が出光の新株発行の差し止め請求
で、お話しした出光の新株発行による増資については
東京地裁は、有効と判断しました。

今回の増資目的については
裁判所も、支配権をめぐり実質的な争いで
自らを有利な立場に置く目的が存在していたとして
その点では、不当な目的による増資だと判断しました。

また、製油所建設など戦略的な投資のための増資だ
ということについても
必要性や合理性は認められないとしました。

それなら、新株発行は不当な目的で認められなさそうでしたが
昨年末に昭和シェル株を取得した際の借入金の返済については
弁済期が数か月後に控え、資金調達の必要性が高いことは
客観的に明らかであるとしました。

そこで、裁判所は、今回の増資は、
不当な目的もあるけれども
借金返済のため必要という面もあるので
新株発行は正当な理由に基づくとされました。

そして、第三者割当増資という経営者側に有利な特定の人に引き受けてもらう方法ではなく
公募という創業者側も株式を取得できる方法で増資しているので
著しく不公正とは言えないと判断しました。

しかし、そもそも創業家は昭和シェルとの合併に反対しているのに
その昭和シェルの株式を取得するための借金が会社側の正当性を
基礎づけることになってしまうのでは
何ともやりきれないということになってしまいます。

しかも、借金の返済のための増資ならば不当な目的を兼ねていても認められる
と裁判所が判断するならば
株主と経営側とで経営権を巡る争いが生じたときは
経営側は大きな借金を作ってその返済のために
新株を発行し、反対する株主の持ち株比率を下げればよい
ということになってしまいます。

株主からすると、ちょっと問題がある判決のように思えます。

創業家は、東京高裁に即時抗告をしたようです。
東京高裁は、どう判断するでしょうか?
結果が出ましたら、またこのコラムで取り上げます。


( 2017/07/25 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第255回 年俸1700万円には残業代は含まれていない 

以前、年収1700万円の医師の年俸に残業代は含まれている?
で取り上げた医師の1700万円の年俸に残業代が含まれているかについて
最高裁判決が出されました。

結果は予想通り、含まれていないというものでした。
最高裁は、法廷で弁論を開くときは
原審の結論を変えるときなので
弁論を開いた時点で
原審の結論がひっくり返されることは
わかってしまうんですね。

しかし、1700万円もの高額な年俸をもらっていること
残業代も夜9時以降のものは出ていたので
今回問題となっていたのは
夜9時までの限定された残業代だったことという
雇用主である病院に有利な事情はあったんですけれどもね。

これらの事情があるからこそ
一審、二審は、
医師の仕事は時間に応じた賃金に当てはまらない
時間外手当は年俸に含まれていた
としたんですが。。

最高裁は、厳しかったですね。
高年俸の人でも
世間を騒がせている過労死・過労自殺はあってはならない
と考えたのかもしれませんし
従来の年俸制においては、残業代何時間分が含まれているか
明確にしなければならないという原則を厳格に守った
ということかもしれません。

連合が年収が1075万円以上の労働者については
残業代の規定が適用がないとする
いわゆる「残業代ゼロ法案」「ホワイトカラーエグゼンプション」
に条件付きで賛成をするというニュースが流れていましたが
その法案が通れば
1700万円の人には
残業代は支払わなくてもよいということになるかもしれません。
ただし、対象の職種に医師が含まれてはいなさそうなので
高年俸の医師にも残業代は支払う必要がありそうです。

経営者のみなさんは
年俸制を取るときには
契約書に残業何時間分を含むと
必ず書く必要がありますので
注意してください。



( 2017/07/18 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第254回 出光創業者が出光の新株発行の差し止め請求 

株式会社の経営争いは、
持っている株式の比率で決まります。

石油の精製、販売を行っている出光興産で
この株式比率を巡っての争いがされています。

出光興産は上場していることから
株式の過半数を持っている株主はいません。
しかし、出光興産の創業者及び関係者(マスコミでは創業家と言われています)は
3分の1を超えて株式を持っています。
そこで、出光興産の創業家が反対すると
株主総会で3分の2の賛成が必要な合併や事業譲渡が
できなくなります。

出光興産の経営陣は昭和シェルとの合併を計画していましたが
創業家が反対しており、
合併の計画を進められないという状況にあります。

このような状況の中、
出光興産が新株を発行して、
資金調達を図ろうとしています。

株式会社は株式を発行して
それを投資家(株主)に引き受けてもらうことにより
資金を調達することができます。

しかし、新株を発行して株式数が増えれば
必然的にこれまでの株主がこれまでの割合と同じだけ
株式の引き受けをしなければ
持ち株比率が低下してしまいます。

会社法上、上場企業では、
新株発行は予め定められた枠内であれば
取締役会で決めれば自由に発行することができます。
株主総会決議は必要ありません。

ただし、会社が著しく不公正な方法により
新株を発行し、それにより株主が不利益を被るときには
株主は、新株発行を差し止めることができるとされています。

出光興産の創業家は
この規定に基づいて
新株発行の差し止めを請求しているということになります。

どういう点が著しく不公正かというと
経営陣が合併を進めようとしているのに
創業家が反対していることから
その反対を押さえるために
創業家の持ち株比率を3分の1を下回るようにすることを目的として
新株発行をしようとしていることになります。

ただ、これは創業家がそう主張しているだけで
経営陣は新株発行の理由は
資金調達をして事業基盤の強化、成長事業の育成、財務体質の強化が
必要だということを挙げています。

裁判では、当事者双方がどのような主張をしているのかわかりませんが
一般的には、合併を計画して反対されてできない状態になって
新株発行を計画していることからすれば
合併反対を回避するためという創業家の主張が正しいように思えます。

しかし、経営陣側とすれば、
合併を反対されたことにより、
事業規模は小さいままなので、経営基盤の強化が必要になり
自分だけで石油業界で生きていくためには
資金が必要になる。
合併を反対されたからこそ、新株発行による資金調達が必要になったのだ。
と主張していると考えられます。

どちらと判断するかは裁判所次第ということになりますが
果たしてどちらの主張が通るでしょうか。

これぐらい、株式会社の経営争いには
持ち株比率が影響してきます。
会社の経営者の方は自分の持ち株比率がどうなっているのか
確認しておいた方がよいと思います。

( 2017/07/11 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第250回 年収1700万円の医師の年俸に残業代は含まれている? 

年収1700万円の医師が残業代を求めて
勤務先だった病院に対し訴訟を起こしています。

もちろん、医師であろうと残業代の請求権は
ありそうですが、
本件は、通常の残業代とは異なります。

その病院では、
午後9時以降の残業代と
休日に必要不可欠な業務については
残業代は支払われていたのです。

ということは、
医師は、午後9時までの残業代の支払いを求めた
ことになります。
そして、この9時までの残業代が
年俸1700万円に含まれていたのか
ということが裁判の争点になりました。

一審は、
「医師の仕事は時間に応じた賃金には当てはまらない」
とした上で
高額な年俸を考慮して「時間外手当は年俸に含まれていた」
としました。
二審の高等裁判所も同じ結論でした。

しかし、この度、最高裁判所は、弁論を開きました。
最高裁が弁論を開くのは
二審の結論を変えるときだけなので
最高裁判所は、
時間外手当は年俸に含まれていたとした
二審の結論を変える見通しが高いのです。

最高裁の判決は
7月7日に出される予定だそうです。

まだ最終的な判断は出ていませんが
年俸制の場合は
時間外手当が計算できるように
何時間分の時間外手当が含まれていると
明示しなければならないというのが
判例の立場です。
今回の最高裁判決もこれと同じ結論を
取るということなのかもしれません。

年俸1700万円の医師でも
残業代何時間分と明示しないと
残業代込の年俸とは言えない
とすると
通常のサラリーマンでは
まず難しいということになります。
雇い主には厳しい判決になりそうです。

7月7日の判決が出たら
またご報告します。






( 2017/06/13 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第246回 1年後の社長公募は話題作りだった? 

育毛サービス大手のリーブ21が
後継者の社長を公募で選ぶと
発表したことを
みなさんは、覚えていらっしゃいますか?

その公募社長を巡り訴訟になっていたとは
この度判決が出たという記事を見て
初めて知りました。

訴訟を起こした原告は
公募社長に応募して
社長候補として採用された方です。

請求の理由や内容は
報道された記事にははっきり書かれていませんでしたが
1年後には、社長を譲るという説明があったから
他の職業を辞めてまで応募したのに
リーブ21と現社長は、最初から社長を譲る気はなく
社長にもなれなかったことから
辞めずに前の職についていれば
得られた収入や慰謝料を支払えという
ものだと推測します。

これに対し、
裁判所は、「最初から社長を譲るには3年くらいかかると想定していたにもかかわらず
1年後に社長を選ぶと説明したことは、職業選択に関する自己決定権を侵害する
違法な行為だった」として、慰謝料100万円の支払いを会社に命じました。

雇われる方からすれば
1年後には社長にすると言われたから
今やっていることを辞めて応募したのに
自分が選ばれなくて他者が選ばれたのなら
諦めも付きますが、
誰も選ばれないのでは、
話題作りに利用されただけで
前職を辞めて損をしただけと思うことでしょう。
社長になれなくても前職以上の待遇で
リーブ21の関連会社に残れるというのであれば
いいですが。

しかし、他方、会社や現社長からすれば
社長として会社を任せてよいかどうかは
実際に一緒に働いてみないとわからない
ということはありますし、一緒に働いてみたら
社長として任せるには
ふさわしくないということもあるので
雇う際に、必ず、公募した中から社長にすると
約束することは難しいと思います。

それにも関わらず、1年後には社長を選ぶ
と説明して公募したわけですから
1年後に選ばれると思って応募した人に対し
責任を負わなければならないような気はします。

ただ、その責任の内容が慰謝料100万円では、
応募した方は、全然報われませんね。

しかし、転職って、そういうものなので
辞めてしまって失ってしまった収入までは
賠償する必要はないという考えも成り立つと思います。

なかなか難しい問題で、
どちらが勝ってもおかしくない事件だと思います。




( 2017/05/16 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第245回 中小企業の廃業を簡単に 

日本は高齢化社会になっていますが、
会社の経営者も例外ではありません。

経営者が高齢化して
しかも、事業を承継する後継ぎがいない
こういう場合に、廃業をせざるを得ないこととなります。

会社の資産よりも借金や買掛金などの負債の方が少ない
ということであれば
会社の清算は簡単にできます。

しかし、会社の負債の方が多い場合は
債権者の同意を得るか
破産手続を取らないと
廃業もできないということになります。

せっかく何十年も続けてきた事業を
破産という形で終わらせるのは
経営者としては
無念でしょう。

そこで、債権者との話し合いで
何とか廃業を可能にしようということで
弁護士会などが進めているのが
特定調停という制度です。

この特定調停制度は
もともとは
裁判所を通じて債権者と債務者が
話し合いを行い生活や事業を再建する
ための手続きでした。

それを、資産よりも債務の方が多い
中小企業の廃業でも
同様に債権者と債務者が話し合いをする制度として
利用していこうとするものです。

廃業を考えたいたけれども
債務の方が多いので
簡単に廃業はできないと思っていた方には
ご利用をお勧めします。
( 2017/05/09 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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