弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第10回 本が安売りされない理由を知っていますか? 

日本は資本主義の国で、
自由主義経済を取っていますから、
共産主義の国とは違って、
物の値段は自由に決められるのが原則です。

しかし、みなさん、本については、
古本以外は安売りをしているのをあまり見たことはないと思います。

それには、法律上理由があるのです。

商品を作る側、売る側は、
一般的に、自分の利益を確保するために
高い値段で売りたいものです。
特に、有力メーカーは、
自分の商品の値崩れを防ぐために、
卸業者や小売業者に安売りをさせないことを考えがちです。
しかし、それでは、
市場の自由競争による公正な取引が確保されないとして、
独占禁止法では、
メーカーや卸業者が、自分の商品を買った者が
次にいくらで売るかを決めることはできないとされています。
これを「再販売価格維持の禁止」と言います。

具体的には、
メーカーが卸業者に1個5000円で売るときに、
卸業者は7000円で小売業者に売って、
小売業者は消費者に1万円で売るなどと
決めてはいけないのです。

ずっと以前には、
商品には定価というものが付いていましたが、
現在は、
定価は
メーカーが小売りの販売価格を拘束していると
言われる可能性があることから、
定価という表示はほとんど使われていないと思います。
メーカー小売希望価格という表示になっています。

ところが、書籍は、著作物として、
人の創作活動、文化の創造維持に必要ということで、
メーカー(出版社)による再販売価格維持が
認められているのです。

ということで、
みなさんが本の安売りを見かけることはあまりないのです。

 

 
  
  
 
 
 
( 2012/10/30 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第9回  「亀田の柿の種」のそっくり商品差止請求 

「亀田の柿の種」を販売する亀田製菓が、
他社の「柿の種ピーナツ」の
製造販売の中止と損害賠償を求めて、
裁判を起こしたそうです。
理由は、他社の「柿の種ピーナツ」の
パッケージのデザインが似ていて、
「亀田の柿の種」と誤認する恐れがあるからだそうです。

人気商品が出ると、それを真似た、
そっくり商品や偽物の商品が出回ることは多いです。
商品の名前については、
商標登録をしていれば
類似の名前を付けた商品の販売を
差し止めることができます。
もちろん、類似の商品を販売した会社に対して、
損害賠償請求することもできます。

商標登録していなかった場合や
今回のケースのように似ているのが名前ではない場合は、
商標法では保護されません。

その場合に、使われる法律が
「不正競争防止法」という法律です。

「不正競争防止法」では、
商標登録をしていない場合でも、
世間で広く知られている商品であれば、
それを真似したそっくり商品や偽物の製造販売を
差し止めることが可能となっています。
偽物を売った会社に対し、損害賠償請求もできます。
ただし、商標などのように
登録されているわけではないので、
世間で広く知られているかどうかが争いになります。

なお、報道では、
「『柿の種』そっくり」とされていますが、
「柿の種」自体は、
亀田製菓独自の商品でもなんでもないので、
いわゆるあの「柿の種」という商品自体は
製造販売しても問題はないと思います。
だから、亀田製菓も
「亀田の柿の種」というネーミングにしていて、
しかも、パッケージが「亀田の柿の種」のデザインに似ていて
一般の人が「亀田の柿の種」と混同することを
問題視しているのです。
 
  
( 2012/10/23 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第8回 優良資産だけ残すことはできない 

多額の借金が返せなくなったときに、
何とか今の優良資産だけを残して、
事業や生活を続けることはできないか、
と考えたくなるのが人情です。
そのために、
不動産などの資産を別会社の名義にしたり、
親族の名義にしたりしてしまう人も多いようです。

しかし、そのような債務者にのみ都合の良いことは
法律上許されていません。
債権者の債権回収を妨害する行為として、
詐害行為取消権(「さがいこういとりけしけん」と読みます)により、
取り消して元の会社などに戻されて、
債権者に差し押さえられることとなります。
破産した後に発覚すれば、
破産により借金が免除されることとなる
免責決定は出なくなりますし、
時には詐欺破産罪として罰せられることにもなります。

この度、最高裁で、
会社分割という制度を利用した資産の移転が
この詐害行為取消権により取り消せるかについて
判断が出ました。

会社分割というのは、会社を2つに分ける制度で、
売買や贈与などの取引行為でないことから、
詐害行為取消権により取り消せるのかという点について
法律の解釈上争いがありました。
そして、会社分割を利用すれば
借金の多い債務超過の会社でも
会社の優良資産を残せるなどと
コンサルタントなどが吹聴したために、
会社分割を利用して
資産を別会社に移転させてしまう例が
増えていたのです。

これに対し、最高裁は、
会社分割についても、
詐害行為取消権により取り消せるという
結論的には当たり前の結論を出しました。
法解釈上は難しい面もあったのですが、
最高裁は結論の妥当性を優先したのだと思います。

借金の支払いは免れて、優良資産だけを残すという
都合が良いことはできませんので、
借金に苦しんでいたとしても、
そういう甘い話には騙されないよう気を付けてください。
 
 
 
( 2012/10/16 00:00 ) Category 借金 | トラックバック(-) | コメント(-)

第7回 巨人軍監督が刑事告訴 

新聞によると、巨人軍の監督が、
愛人関係にあったとする
女性の証言を掲載した週刊誌の記事について、
女性を、氏名不詳のまま名誉棄損の疑いで刑事告訴しました。
通常であれば、
週刊誌を出版している出版会社に対しても刑事告訴しますが、
出版社に対しては記事の取り消しと謝罪のみを求め、
刑事告訴はしなかったようです。

みなさんは、世の中で犯罪があれば
警察が積極的に動いて、
犯人を検挙するために捜査してくれると
思っている方が多いことでしょう。
確かに、殺人事件や強盗事件など重大な犯罪であれば、
警察は黙っていても動いてくれます。
しかし、被害者等が言わないと
警察に犯罪だとわからないものについては、
被害者が被害届を出したり、
刑事告訴をしたりしないと、
警察は動いてくれません。

名誉棄損や横領、詐欺など、
民事の紛争に絡むものについては、
特に、あまり動いてくれません。
警察にとっては、
民事の紛争解決に警察を利用されることを
防止するためだったり、
民事絡みの事件は殺人や強盗などとは異なり、
犯罪として成り立つのかどうか
警察が判断するのが難しかったりするためです。

これらについて、
犯罪として警察に動いてもらうには、
告訴状を警察に提出する必要があります。
告訴状を提出する際は、
一般に、相手が誰で、
相手のどのような行為が
どの犯罪に該当するのかを明確にして、
その犯罪を証明する証拠を提出する必要があります。
これら、告訴状を作成し、受理してもらうことも、
弁護士が行う仕事となります。
犯人が誰かわからない場合には
巨人軍監督がしたように「氏名不詳」として
刑事告訴をすることも可能ですが、
相手がどこのだれか全くわからないのでは、
警察も捜査しようがないので、
刑事告訴をする意味がないことになってしまいます。
民事絡みの場合は、相手の処罰を求めることが目的なので、
犯人がどこの誰かがわからないということは
あまりないとは思いますが。
 
 


( 2012/10/09 00:00 ) Category 刑事事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第6回 司法試験にバイパス? 

各新聞で、司法試験に近道があるということが
取り上げられていました。
それは、「司法試験予備試験」のことです。

現在、司法試験を受験するには、
法科大学院に入学し卒業する必要があります。
法科大学院に入学し卒業するには、学費も必要ですし、
2年から3年という時間も必要となります。
しかし、この予備試験に合格すれば、
法科大学院の費用も時間も不要となります。
そこで、マスコミは、
司法試験のバイパス(近道)なのでは、と取り上げたのです。

この予備試験がなぜ設けられたかと言えば、
お金がなくて法科大学院に行けない人でも
司法試験の受験機会を与えようという趣旨からです。

しかし、予備試験は、誰でも受験することが可能です。
両親や自分の所得要件は課されていませんから、
お金持ちでも予備試験を受けることが可能なのです。
とすれば、お金がなくて法科大学院に行けない人ではなくて、
お金があっても、
法科大学院に行くお金と時間がもったいないと考える
頭の良い人のための試験が予備試験ということになりそうです。

予備試験の合格者の司法試験合格率が高いことから、
全ての人にとってバイパスになるかのような報道もありますが、
頭の良い人限定です。
なぜかというと、予備試験の合格者数は、
受験者6477人に対して116人と合格者数が少ない上に、
合格率は1.8%と司法試験よりも合格が難しいからです。
だから、普通の頭の良さの人にとっては
バイパスにはなりようがないのです。
ただ、頭の良い人は、
時間も費用もかかる法科大学院に行かないで済むバイパスの
メリットを享受できることになります。
今回でも、予備試験の合格者は
現役の大学生が半分だということです。

今後、頭の良い人は、
予備試験を受験して司法試験に合格しようとするでしょうから、
予備試験の合格者は、お金のない人ではなく、
頭の良い現役大学生が多くなり、
頭の良い人のバイパスになってしまうでしょう。
 

( 2012/10/02 00:00 ) Category 司法試験 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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