弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第23回 薬のネット販売解禁? 

薬のネット販売が解禁されたという報道がなされました。
というのは、最高裁判所の判決で、
薬のネット販売は禁止されているという
厚生労働省の主張が認められなかったからです。
「薬のネット販売解禁」という一部報道は、
薬のネット販売を規制すること自体が許されないと
誤解を招くような表現もあります。
そこで、今回の最高裁判決についてご説明します。

今回の最高裁判決は、
まず、現在の薬事法では、薬のネット販売については
禁止されていないという解釈を取っています。
最高裁は、現在の薬事法制定当時、
薬のネット販売の可否について議論があったのだから、
ネット販売を禁止するのであれば、
ネット販売を禁止すると規定するか、
薬は対面で販売しなければならない
(=対面でないネット販売はできない)と
規定しなければならなかったのにしなかったのだから、
薬事法では禁止されていないと考えたわけです。

それにもかかわらず、厚生労働省は、
薬のネット販売は薬事法で禁止されているという解釈を前提に、
薬のネット販売を禁止する規則(「省令」と言います)を作って
薬のネット販売を規制しようとしました。
しかし、最高裁は、
薬事法で薬のネット販売を禁止していないのに、
省令で薬のネット販売を禁止しても無効だと判断したのです。
これが、今回の最高裁判決の内容です。

だから、「薬のネット販売解禁」として、
積極的に薬のネット販売が
認められるようになったというわけではないのです。
また、法律で、薬のネット販売を
禁止することができないというわけでもありません。

ネットで薬が買えることは消費者にとって便利です。
しかし、薬害被害者等は
薬害被害が出るのではないかと反対しています。

これらを踏まえて、
薬のネット販売を規制するのか、規制しないのか、
これらは今後国会で判断されるということとなります。
国会で薬のネット販売を禁止する旨の法律が
作られなければ薬のネット販売は可能です。

なお、薬のネット販売が禁止されていないと言っても、
薬の販売が誰でもできるわけではなく、
薬の販売には許可が必要となるのでご注意ください。
( 2013/01/29 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第22回 従業員を解雇するのは難しい 

普通の経営者の方は、30日前に予告すれば
従業員はいつでも辞めさせることができる(解雇することができる)と
思っている方が多いようです。
これは、労働基準法に、
使用者は労働者を解雇しようとする場合においては、
少なくとも30日前にその予告をしなければならないと
書いてあることから、
これを守れば、自由に解雇できると考えられているためです。
ちなみに、民法にも、期間の定めのない雇用契約は
いつでも解約の申し入れをすることができるという
規定があります。

しかし、実際は、過去の判例により、
解雇に合理的理由がなければ解雇は無効とされています。
これを「解雇権濫用の法理」と言います。

平成20年に施行された労働契約法には、
この解雇権濫用の法理を受けて、
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、
社会通念上相当であると認められない場合は、
その権利を濫用したものとして無効とする」と
規定されています。
したがって、雇い主が従業員を解雇するには、
この客観的に合理的な理由が必要なこととなります。

経営が苦しい、あるいは経営状況を改善するための解雇は、
「整理解雇」と言います。
この整理解雇は、ただ、経営が苦しい、
あるいは経営状況を改善するためだけでは、
裁判では、無効とされてしまう可能性があります。
具体的には、経営が苦しい、
あるいは経営状況を改善するためといった解雇の必要性の他に、
解雇回避の努力、人選の合理性、手続の妥当性といった
要件を満たす必要があります。
経営が苦しいという場合、
給料引き下げでは対応できないのか、
解雇せずに配置転換することで対応できないのかなど
解雇しなくても済むような方法を検討して、
その方法ではだめだという
合理的な理由がなければなりません。
また、解雇の対象となる人が
一定の基準で公平に選ばれなければなりません。
仕事はできるけれども
経営者が気に入らないからという理由では
解雇は無効となってしまいます。

以上のように、経営が苦しいからという理由でも、
なかなか従業員を解雇するのは難しいのです。
( 2013/01/22 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第21回 高齢者の財産を守るはずが… 

前回、高齢者の財産を守る制度として、
成年後見制度があるという話をしました。
ところが、この成年後見制度にも問題点はあります。

その大きな問題は、成年後見人が、
高齢者の財産を使い込んでしまうということです。
そもそも、高齢者が財産を騙し取られたり、
子供に財産を使い込まれたりしないようにするための
成年後見制度なのに、
高齢者の財産を管理し守るはずの成年後見人自身が、
高齢者の財産を使い込んでしまうというのですから、
何のための成年後見制度か
わからないということになってしまいます。

しかし、この成年後見人が
高齢者の財産を使い込んでしまうのは、
成年後見人が、弁護士等法律の専門家ではなく、
子供などの親族が多いからかもしれません。
法的な知識がないために、
成年後見人は高齢者のために財産を管理し、
収支を報告する義務があることをよく理解しておらず、
高齢者のためという名目ならば
何をしてもよいと勘違いしているとも考えられますし、
他人の多額のお金を預かっていると、
自分のために使いたいという
誘惑に駆られてしまうのかもしれません。

もちろん、成年後見人が
高齢者の財産を自分のために使ってしまえば、
これは、業務上横領罪(10年以下の懲役刑)となります。
それでも、なかなか自分の欲に負けてしまう
成年後見人が少なくないということのようです。

成年後見人の財産の使い込みということを考えると、
お金はかかりますが、法律の専門家であり、
顧客のお金を預かることに慣れている弁護士に、
成年後見人を頼んだ方が良いかもしれません。

なお、成年後見人の使い込みが多いことから、
信託銀行に高齢者の財産を信託することにより
使い込みを防ぐという方法を
取ることもできるようになりました。

( 2013/01/15 00:00 ) Category 成年後見 | トラックバック(-) | コメント(-)

第20回 高齢化社会における財産を守る制度 

人間誰しも年を取ります。
物忘れがひどくなったり、
理解力が弱くなったりしてきます。
認知症などの病気にかかってしまえば
その状況はさらにひどくなります。

不幸にも、この社会には、
そういう高齢者の財産を狙う者がたくさんいます。
布団や着物、健康食品から家のリフォーム、
未公開株など枚挙にいとまがありません。

これらの被害から高齢者を守る制度が、
成年後見制度です。
成年後見制度には、本人の判断能力に応じて、
「後見」「保佐」「補助」という種類があります。
いずれの制度でも、後見人や保佐人、
補助人の了解がなく本人が行った契約などは
取り消すことができることになっています。
このことにより、
本人が高額な商品を買わされたりした場合でも、
代金を取り戻すことができるようにしているのです。

これらの成年後見制度を利用すると、
裁判所が成年後見人や保佐人、補助人に、
財産の管理状況の報告を求めたりするので、
本人が亡くなったときに通帳を見たら、
たくさんあった預金が
全部下ろされていたということにはならないと思います。

「後見」も、「保佐」も、「補助」も、
本人の判断能力が低下した場合の制度ですが、
判断能力は低下していないけれども、
財産管理について心配だという場合には、
財産管理契約を結んでおけば
勝手に財産が引き出されたり、
換金されたりするということは防げると思います。

後見人、保佐人、補助人、財産管理人は、
弁護士など専門家に依頼することもできますが、
専門家に依頼すると、費用がかかります。
子供や配偶者や兄弟などの親族が、
これら後見人、保佐人、補助人、財産管理人に
なることができるので、
親族関係がうまく行っている場合には、
親族がなった方が良いと考えます。

この成年後見制度にも、問題があって、
それについては、次回にお話しします。
 
 

( 2013/01/08 00:00 ) Category 成年後見 | トラックバック(-) | コメント(-)

第19回 あけましておめでとうございます 

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
 
さて、みなさんは、
お正月をいかがお過ごしでしょうか。

みなさんから、弁護士の仕事に季節性があるか、
あるいは繁忙期があるかという質問をよくいただきます。
税理士であれば、申告前の3月や5月が
忙しいという季節性があります。
しかし、弁護士の仕事は、
紛争・トラブルの解決や契約の相談が主ですから、
あまり季節性はありません。
上場企業の顧問をしている事務所であれば、
6月は株主総会の準備で
忙しいということがあるくらいです。

でも、相談者の方から、
お正月やお盆など親戚が集まったときに、
亡くなったおじいちゃん、おばあちゃん、
お父さん、お母さんの遺産の話をして、
話が付かなかったから、
お正月明けやお盆明けに相談に来た、
という話をよく聞きます。

故人が亡くなって、
何十年も話し合いがなされていない
相続や遺産分割の話は、世の中に結構あります。
相続や遺産分割の話は、お金の話なので、
兄弟や親せきの間で、改めて集まろうと
言いにくい面もあるのかもしれません。

遺産分割や相続には、時効がないので、
何十年経っても遺産を分けて欲しいということは可能です。
だから、遺産をもらっていないとか
遺産を分けてもらっていないという場合は、
このお正月の機会にでも話してみたらいかがでしょうか。

なお、相続や遺産分割に時効がなくても、
遺言書がある場合、
勝手に名義を変えられていた、
預金を勝手に下ろされていた場合は、
時効が適用になる場合がありますし、
証拠も無くなっている可能性もあります。

遺産分割や相続も、
放置しないで、当事者で話し合うことをお勧めします。

( 2013/01/01 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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