弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第40回 KDDIがiPhone5の速度について虚偽の広告 

報道によれば、KDDIは、
iPhone5について「受信時最大速度75Mbps」で、
「実人口96%をカバーする」旨を
パンフレットやWebサイトで広告していたようです。
しかし、実際には、75Mbpsの速度が使える範囲は
14%しかカバーしていなかったということで、
消費者庁から、景品表示法違反として措置命令を受けました。

そこで、それを信じて契約した契約者が、
違約金なしで解約できるかということが問題となっているようです。
最初の説明と違うのだから、
契約をキャンセルするのは当然だというのが
契約者の言い分でしょう。

KDDIとの契約を
違約金なしに解消するために考えられる主張としては、
消費者契約法の不実告知による取り消し、
民法上の錯誤による無効(民法95条)、
詐欺による取り消し(民法96条)、
債務不履行による解除(民法541条)などがあります。
ただ、いずれの法的な主張によっても、
契約者にとって、今回問題となっている
「受信時最大75Mbps」の速度で受信できることが、
全国主要都市、実人口カバー率約96%であることが
重要であったことが必要となります。

通常の契約者にとっては、
iPhone5を購入して利用するに当たり、
電話やメールの送受信、インターネットの閲覧、
動画やゲーム、アプリのダウンロードが円滑にできることが重要で、
「受信時最大75Mbps」の速度がなければ
契約の目的を達成できないということはないでしょう。
そうだとすれば、「受信時最大75Mbps」の速度は、
KDDIとの契約において
あまり重要ではなかったということになりそうです。

逆に、自分は75Mbpsの速度が重要で、
現在の速度では不十分だと具体的に言える契約者は、
最初に挙げたいくつかの法的主張により、
違約金なく契約を解消できそうです。
しかし、
「受信時最大75Mbps」の速度が96%のカバー率でなければ、
KDDIのライバルであるソフトバンクと契約していた、
あるいはソフトバンクから乗り換えなかったという
契約者もいると思います。
そういう契約者の主張が認められる可能性もありますが、
「受信時最大75Mbps」の速度でなくても
サービスの目的が達成できることは変わらないし、
また乗り換えなどにはそれによる割引などの特典もありますから、
必ずしも受信速度が理由で契約した
あるいは乗り換えたという主張が認められるとは限りません。
裁判をしてみないとわからないというところです。

KDDIは、基本的には
違約金なしの解約には応じないという姿勢のようです。
しかし、KDDIは、事情があるとは言え、
虚偽の広告をしてしまったのですから、
解約に応じないとしても、一定額の利用料の減額等
何らかの形で利用者に誠意を見せないと、
KDDIは、嘘の広告をして契約を取っておきながら
開き直るひどい会社というイメージとなってしまい、
2年後の更新時期には、別会社に乗り換える契約者が
続出することにもなりかねないと思います。
それとも、2年経てば、みんな忘れているだろうと
KDDIの経営者たちは思っているのでしょうか。
( 2013/05/28 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第39回 反町・松嶋菜々子夫妻の飼い犬が原因で退去。賠償責任は? 

反町隆史、松嶋菜々子夫妻の飼い犬が
同じマンションに住む入居者に咬みついてしまいました。
被害者は、現場を通る度に気分が悪くなるとして、
そのマンションを退去してしまいました。
その後、すぐに入居者が決まらず
しばらく空室になってしまいました。

そこで、不動産の管理会社が、
少なくとも被害者の契約期間は
賃料を受け取れるはずだったのに
犬が原因で退去したことにより
賃料が得られなかったとして、
被害者の残期間の賃料など約5220万円を
犬の所有者である反町・松島夫妻に賠償請求をしたのです。

これについて、裁判所は、
被害者が契約途中で解約したことによる
違約金(家賃の2か月分)350万円の損害賠償は認めたものの、
残期間の賃料については損害賠償を認めませんでした。

判決文全文が報道されていないので、
正確な理由はわかりませんが、
以下のような理由だと推測されます。

今回の不動産管理会社は、
犬が咬んだことについて直接の被害者ではなく、
当事者でもありません。
犬が人を咬んだことにより間接的に損害を受けた第三者です。

このようなケースを「間接損害」あるいは
「第三者の債権侵害」などと言います。
間接損害については、
過去の判例では、直接の被害者と実質的に同一の損害だと
言えるような場合のみ損害賠償が認められるのが一般的です。

そこで、不動産管理会社が賃料を取れなかった分については、
犬に咬まれた直接の被害者の損害と
実質的に同一の損害とは言えない
ことから、損害賠償を否定されたと考えられます。

これに対し、不動産管理会社が
犬に咬まれた被害者に請求できなかった違約金については、
本来、犬に咬まれた直接の被害者が
不動産管理会社に支払わなければならないものだったことから、
不動産管理会社の損害で間接的な損害であっても、
直接の被害者の損害と実質的に同一の損害と言えることから、
損害賠償を認めたのではないかと思います。

不動産管理会社が
どのようは法的構成で争ったかわかりませんが
マンション内で飼い犬に問題を起こさせたことは
間接損害ではなく
不動産管理会社との賃貸借契約違反とも言えるし
マンション内の住民が退去し空室になることは、
通常予想もできることから
残期間賃料について
賠償請求を認める余地もあったのではないかと、
個人的には考えます。

入居者のトラブルで
退出し賃料を受け取れなくなるということは
よく起きていることなので
実質的に敗訴した不動産管理会社には、最高裁まで争ってもらい
この点に関する結論を出して欲しいですね。
( 2013/05/21 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第38回 相手が納得しても違法?(下請法違反) 

法律のルールに、契約は、お互い納得していれば
どのような内容にしてもよいというものがあります。
これを「契約自由の原則」と言います。
そこで、一度定めた契約でも、お互いが納得すれば
後から変更してもよいのです。
例えば、商品を1個1000円で、1万個仕入れた場合
総代金は1000万円となります。
しかし、思ったほど売れなかった場合、
後から売れ残ったものを返品する。
あるいは、値段を6割である600万円に下げてもらう。
ということが考えられます。

普通は、このようなことに応じれば
売った方が損しますから、売った方は応じないでしょう。

しかし、買主が大口取引先だったりすると、
売った方も取引を継続する利益の方が大きいことから、
今回は泣きましょうということで、
返品に応じたり、代金の減額に応じたりすることとなります。

先ほどの、契約自由の原則からすれば、
このことは売主が納得している限り、何も問題にはなりません。

しかし、このようなことを許していると、
大企業や大口取引先には利益となりますが、
大企業や大口取引先に商品を卸している力の弱い中小企業は
なかなか利益を得られないということとなってしまいます。

そこで、「下請法」という中小企業を守る法律は、
買主と売主との間に資本金に差があって、
元請け、下請けという関係のときには、
下請けが納得していたとしても、
役所が下請法違反として
取り締まることができることとなっています。

お互いが納得しているのだからいいじゃないか、
と普通の経営者は思うでしょうし、
普通の弁護士も思いがちです。
そこで、みなさんが知っている有名企業や大企業が
下請法違反で摘発されるという事件が多発しています。
しかし、下請法は、
下請けが納得していてもダメというところに特殊性があり、
その点を注意する必要があります。
( 2013/05/14 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第37回 遺言は書いてもらった者勝ち 

相続が起こったときに、
遺言があった場合は、
基本的には遺言書どおりとなります。

遺言がないとどうなるかというと、
法律で定められた相続人が、
法律で定められた相続分のとおりに相続することとなります。
例えば、配偶者と子供2人が相続人の場合は、
配偶者2分の1、子供が4分の1ずつとなります。
子供のみ3人が相続人の場合は、3分の1ずつとなります。

相続人が子供3人(長男、次男、三男)のケースで、
長男が母親に取り入って、
自分に遺産を全部相続させるという遺言を
書いてもらったとしましょう。
そうすると、本来、次男、三男は、
遺産を3分の1ずつもらえるはずが、
遺留分減殺請求をしない限り、
遺言にしたがって
遺産を全部長男に相続されてしまうこととなります。

ここで言う
遺留分減殺請求(「いりゅうぶんげんさいせいきゅう」と読みます)
というのは、
相続人に遺産のうち
最低限取得が認められる取り分のことを言います。
子供の遺留分は、
法定相続分の2分の1が遺留分となります。

そこで、次男と三男は
遺留分減殺請求権を行使すれば
法定相続分の3分の1の2分の1である
6分の1の遺産を手に入れられることとなります。

しかし、遺留分というのは、法定相続分とは違って、
遺留分減殺請求権という権利を行使しないと
もらえない権利です。
しかも、遺留分減殺請求権は、
遺言について知ったときから
1年以内に行使しなければなりません。
そして、取り分は、
相続人が子供の場合で、半分に減ってしまうのです。

このようなことから、遺言を書いてもらった方は
相続においてかなり立場が有利となります。

遺言は書いてもらった者勝ちなのです。

これまでたくさんの
遺言に関する相談や依頼を受けて来ましたが、
遺言を書いてもらわなかった相続人の中には、
自分が遺産を多くもらえる遺言を
書いてもらおうと思ったけど、
他の兄弟に悪いから書いてもらわなかったら、
その他の兄弟が遺言を書いてもらっていた
というケースもありました。

自分が多く遺産を取得する遺言を
書いてもらっておけば、
相続が発生したときに、自分の分を譲って
他の兄弟と平等に分けることもできます。

しかし、他の兄弟が
多く遺産を取得する遺言を書いてもらっていた場合、
同じように譲って
平等に分けてくれることは少ないと思います。
そう考えると、
遺言を書いてもらえるときに書いてもらっておくことが
大事なこととなります。

遺言書は、ご両親などが亡くなってからは
書いてもらうことはできないからです。
( 2013/05/07 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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