弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第49回 ネットバンキングで不正に引き出されたら? 

銀行の店舗には行かなくても、
パソコン上で振込などが可能となるネットバンキングは、
利用者にとってとても便利です。

しかし、報道によると、
ネットバンキングで、IDやパスワードが盗まれ
不正に引き出された預金額が
2012年の1月から6月の半年で、なんと約2億円だそうです。
ネットバンキングは便利ですが、
IDやパスワードを盗まれ、
なりすましにより預金が不正に引き出されるリスクがあります。

このなりすましにより、預金が引き出されてしまった場合
預金はどうなるのでしょうか。
預金者が損をするのでしょうか。
それとも、銀行が損をするのでしょうか。

この点、キャッシュカードについては、
偽造されたり、盗難されたりして、
ATMから預金を下ろされてしまった場合には、
銀行が損を負担し、
預金者は不正に引き出されてしまっても
銀行に預金の払い戻しを請求できるという法律があります。

この法律は、
一般的に「預金者保護法」と呼ばれています。

この預金者保護法は、
キャッシュカードの盗難・偽造のケースを保護する法律で、
ネットバンキングについては適用がありません。
そうなると、ネットバンキングで、
IDやパスワードを盗まれて不正に引き出されてしまうと、
全額預金者の損になるように思えます。

しかし、全国銀行協会は、
この預金者保護法の適用がないネットバンキングについても、
預金者がインターネットバンキングのIDやパスワードを
他人に知られないよう管理していた場合には、
銀行が損害を負担し、
預金者は引き出されてしまった預金の払い戻しを
銀行に請求できるという取り決めをしています。
そして、全国銀行協会には、
主要な銀行は全て加盟していることから、
ネットバンキングでIDやパスワードを盗まれて
預金を引き出されてしまっても、
銀行に払い戻しを請求できることとなります。
ただし、預金者のIDとパスワードの管理方法方によって、
補償される額が全額でなく75%に減額されたり、
0%になったりしてしまうので、
IDやパスワードをきちんと管理しておくことが必要です。
( 2013/07/30 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第48回 ローソン「アイスケース」に入りフランチャイズ契約解除 

報道によりますと、
ローソンは、
ローソンのある店舗の従業員(その店舗の経営者の息子だそうです)が
アイスケースに入った写真を
フェイスブックで公開したことを理由に、
その店舗とのフランチャイズ契約を解除したそうです。

通常、ローソンなどのコンビニエンスストアは、
ローソンという名称で営業をしていても、
会社としては、別会社です。

本部は、株式会社ローソンですが、
ほとんどの店舗は、
株式会社ローソンとは別な会社が
株式会社ローソンとフランチャイズ契約という契約を結んで、
ローソンという名称を使わせてもらい、
同じデザインの店舗で、
他のローソンと同様の商品を提供しているのです。

今回の店舗は、
アイスケースに入った写真を公開したことで、
ローソンが、顧客から、
食品の安全衛生に気を使わないコンビニエンスストアだと思われ、
ローソンの信用を著しく傷つけられたことを理由に、
フランチャイズ契約を解除されたと考えられます。
 
取引先が、このような行為をした場合、
契約を解除できるかどうかは、
法律上は明確ではありません。
そこで、このようなケースの場合でも
契約を解除できるように、
契約書に解除に必要な条項を入れておく必要があります。

インターネットで
ローソンのフランチャイズ契約を確認すると
ローソンのフランチャイズ契約には、きちんと
「ローソンチェーンの信用を著しく傷つけたとき」
という条項が入っています。

このような条項を入れてあったとしても、
著しく信用を傷つけるというのはどの程度なのか、
信用を傷つけたとしても
契約解除を認めるほどひどい行為なのか、
などと争うことは可能です。

しかし、本件の場合、
安全と衛生には厳しい日本の消費者が
有名なコンビニエンスストアであるローソンのアイスケースに
人が入っている写真を見たときのことを考えると、
その信用を傷つけた程度は計り知れないものがあり、
契約解除に値するくらい
ひどいものだったと言えるかもしれません。
( 2013/07/23 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第47回 倍額賃料で明渡を確保 

オフィスや店舗、マンションなどの賃貸物件の貸主にとって
契約が終了したときに借主がすぐに出て行ってくれるかは
気になるところです。
すぐに出て行ってくれなければ、次の貸主に貸せないからです。

そういうケースで効果を発揮するのが、倍額賃料の条項です。
どういう条項かというと、次のようなものです。

「解除や期間満了によって 賃貸借契約が終了したときは
 すぐに明け渡す。」

これは当たり前の規定です。次が大切な規定です。

「借主が明け渡さないときは
 賃貸借契約終了の翌日から明渡済みまで
 賃料の倍額の賃料相当損害金を
 支払わなければならない。」

というものです。

賃貸借契約が終了した後も
借主がオフィスや店舗、マンションを使い続けた時には
使用の対価を支払わなければなりません。
これを「賃料相当損害金」と言います。

通常、契約に何の規定がなくても
借主は契約終了後も使用を継続すれば
賃料相当損害金を支払う必要があります。
しかし、その金額は、これまでの家賃と同額となります。

そうだとすると、借主にとっては
契約違反によって契約が解除されたとしても
今までの家賃と同額を支払えば
これまでどおり賃貸物件を使用できることになります。
(もちろん、裁判で明渡の判決が出れば
強制的に追い出されることにはなりますが、
強制的な追い出しは、
貸主にとってもそれなりに費用がかかります)

賃貸借契約に、
賃貸借契約が終了したときは
明渡まで倍額賃料を支払うという規定を入れておけば
借主は、
賃貸物件を明け渡さないと
これまでの賃料の倍額を支払わなければならなくなるので
経済的に割に合わないということで
自ら出て行こうという気になるわけです。

賃料の倍額条項は
過去の裁判例でも有効とされています。

賃貸物件の貸主の方は
自分の契約書に倍額条項が入っているか
確認してみてください。
( 2013/07/16 00:00 ) Category 賃貸借 | トラックバック(-) | コメント(-)

第46回 生命保険は遺産でしょうか 

世の中、残された家族にお金を残すために、
生命保険に加入している人は多いです。
したがって、誰かが亡くなった場合、
生命保険が払われるケースが多いです。

そして、
この生命保険契約に基づく保険金が遺産なのか、
保険金を相続人のうちの1人だけが
受取人として受け取った場合
他の遺産の分け方はどうなるのか
争いになるケースも多いのです。

まず、生命保険が遺産だと思っている人は多いです。
それは、控除はあるものの相続税の対象となるので、
相続税の申告上は遺産として取り扱われるからです。

しかし、相続や遺産分割の場面では、
遺産ではありません。
最高裁判例で、保険金は生命保険契約に基づいて
受取人に支払われるもので、
受取人のものとされているからです。

したがって、生命保険は、
受取人が決まっている場合は、
遺産分割の対象とはなりません。

ただし、受取人が決まっていない場合、
あるいは受取人が相続人とされていた場合には、
相続人が受取人となりますので、
相続人間で分けることとなります。

生命保険が、
受取人が決まっている場合には遺産にならないとして、
1人だけ生命保険を受取人として受け取った場合、
どのような処理をすべきでしょうか。

例えば、父親Aさんが死亡して、
遺産が合計6000万円あり、
相続人がXYZの3人兄弟で、
生命保険3000万円の受取人が長男Xとなっていた場合、
どのように分けるべきでしょうか。

Xは生命保険3000万円を受け取っていますので、
残り6000万円をYとZで分けるというようにも
考えられます。

しかし、判例上は、お話ししたとおり、
生命保険は遺産ではないので
遺産分割の対象とはなりません。

また、前回お話しした
特別受益にもならないとされています。

したがって、
長男Xは3000万円の生命保険を受け取った他に、
遺産である6000万円のうち、
3分の1である2000万円を相続することができます。

ただし、判例上は、
あまりにも公平を欠く場合には
特別受益に準じて取り扱うとされているので、
極端に生命保険を受け取った相続人だけが多くて
他の相続人は全く取り分が無いようなケースでは、
特別受益として取り扱われる可能性はあります。

しかし、上記設例では、
YもZも法定相続分の2分の1である
遺留分額1500万円以上の2000万円は
相続することとなるので、
判例の示す例外には当たらないと考えます。
( 2013/07/09 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第45回 生前贈与は相続時に精算 

父Aが亡くなり、子供XYZが相続人となりました。
遺産は9000万円ありました。
長男Xは、
家を建てる際に2000万円をもらっていました。
次男Yは、
事業資金のため、やはり1000万円をもらっていました。
三男は、
特に、生前贈与は受けていませんでした。
このような遺産分割では、
どのように遺産を分けるのでしょうか。

遺産は、9000万円、子供3人が相続人ですから、
3分の1ずつで、
1人3000万円ずつ分ければよいとも考えられます。

しかし、XとYは、
生前に2000万円、1000万円と
それぞれ贈与を受けています。

これらの贈与を「特別受益」と言って、
遺産分割の際に、
これらを考慮して、遺産分割をすることとなります。

具体的には、
遺産総額にこれらの生前贈与額をプラスします。
そこで、遺産総額は
1億2000万円あったこととなります。

そうすると、XYZの相続分は3分の1ですから、
1人4000万円ずつ取得することとなります。
そして、Xは既に2000万円、Yは既に1000万円を
生前贈与としてもらっていますから、
その分を引いて、今回、
Xは2000万円、Yは3000万円、Zは4000万円を
遺産分割で取得することとなります。

実際の遺産分割では、特定の相続人が、
この生前贈与を受けていたという
「特別受益」の主張がなされることが多いです。
ただ、特別受益を主張するには、その証拠が必要で、
遺産分割の際には贈与から既に何十年も経過していて
立証が難しいことも多いです。

したがって、なかなか難しいとは思いますが、
兄弟が両親から大きなお金をもらっていた場合は、
通帳や振込書などの証拠を
生前から取っておいた方が良いと思います。

( 2013/07/02 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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