弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第114回 巨大観音の管理責任は誰が負う? 

淡路島の巨大な観音像について
管理者が不在で、
倒壊の危険があり
誰が管理責任を負うのか
問題になっているそうです。

そもそも、この巨大観音像は
個人が建てたもので、
個人所有でした。
しかし、所有者が死亡し
妻が相続しましたが
その妻も亡くなり、
妻の相続人は相続放棄したそうです。

相続人が相続放棄すると
遺産の所有者はいなくなります。

相続人がいなくなると
国のものになると書籍などに書いてあると思います。
正確には、
相続人が相続放棄すると
直ちに、遺産が国のものになるかというと
そうではなくて、
遺産に関し債権者などがいると
遺産を売却するなど換金して
債権者に分配して
それでも余った場合に国のものとなります。

相続放棄した後に財産を管理する相続財産管理人が
選任された場合は、
この相続財産管理人が、
遺産を管理することとはなります。

しかし、この相続財産管理人は
遺産を換価して債権者への配当をすることを
裁判所から命じられた弁護士であり、
自分の身銭を切ってまで
遺産を管理する必要はありません。

遺産に管理費用に充てられる現金等があればいいですが
ない場合は
換金性のない本件のような施設は
実際上は、
管理する人がいないのと
ほぼ同じ状態になってしまうわけです。

記事を見ると
問題なのは、
迷惑施設である巨大観音像の固定資産税評価額が
作った時の価格を基準にしており
6億円もすることから
これを購入した人に
不動産取得税や固定資産税が数千万円かかってしまう
ということのようです。
それで、購入希望者がいたにもかかわらず
買われなかったみたいなのです。

市は、相続財産管理人がいることから
市が勝手に処分等はできないから
責任はないというようなことを
言っているようですが、
購入希望者がいるようなので
巨大観音像を
迷惑施設として価値がないと評価して
固定資産税評価額を
ゼロに近い金額に
したらよいと思いますが、
どうなのでしょうか。

そうすれば、土地と観音像の購入者が
巨大な観音像を
解体するなどしてくれて
安全が確保されるのではないかと思います。




( 2014/09/30 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第113回 食べログの記事削除請求認められず 

以前から問題となっている飲食店に関する口コミも含めた
情報を提供しているサイト、食べログの投稿について
飲食店側が店舗情報の削除を求めた裁判で
先日判決が出ました。

新聞等の記事では、店舗情報の削除を求める
法的な根拠が明確にはなっていないのですが、
名誉毀損や営業の自由ということかもしれません。

結論を言うと、
裁判所は、食べログで店舗情報の削除請求を
認めませんでした。
理由は、広く一般人を対象に営業をしている以上
個人のプライバシーとは違って
情報を出さない権利はない
ということのようです。

一般人の顧客を対象に営業しているということは
一般人はその店の評判や評価を知る権利もあるし
顧客としてその店に対する評価を述べる権利(表現の自由)もある
ということが、理由となっています。

お店の評価は、
仮に悪い評価の意見があっても
いいと思う顧客が多ければ、
良い評価の投稿が多くなるはずで
そうやって、
長い時間をかけると
真実に近づいていく
ことから、
むやみに表現の自由を制限することは
できないというのが
裁判所の理屈です。

ただ、事実に基づかない悪口などは
名誉棄損となる可能性があるので
批判や評価をする人は
裁判で負けるかどうかは別として
悪く言われた方から
名誉棄損で訴えられる可能性もあることを
覚悟して批判や評価をする必要があります。





( 2014/09/23 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第112回 小説「禁断のスカルペル」 

日経新聞に連載されている「禁断のスカルペル」の中で
主人公が弁護士を立て離婚の交渉をする場面があることから
それを題材に、実際はどうなのかということを
前回、今回とお話しします。

前回は手続き面についてお話ししました。
今回は、内容についてです。

結局、主人公は、慰謝料500万円を夫に対して支払い、
子どもの親権は夫、養育費はなし、子どもとの面会は月1回
それ以上会おうとした場合は以後の接触を禁止する

というものでした。

慰謝料が500万円は過去の判例からして高すぎますね。
婚姻期間10年未満で、しかも、不貞の期間も長くても数か月というケースで
慰謝料500万円は、判決になったら認められないと思います。

主人公がこだわった子どもの親権は、
夫に取られてしまいました。
主人公は医師として働いていることから
普段、面倒を見られないのに対し、
夫は両親が面倒を見ることが可能ということで
子どものためにはそれがよいということを主人公が夫の父親に説得されてしまったためです。
裁判所では、子どもが小さいうちは母親が親権を取得することが普通で、
この点も通常よりも不利になっています。
主人公が働いている間、面倒を見てくれる人は、主人公の母親などもいたことから
こんなことで譲る必要は全くなかったと思われます。

医師として働く主人公が親権を主張するのですから、
主人公が働いている間子供の面倒をどうやって見るかは
相手との交渉前に、弁護士と依頼者との間で
打ち合わせしておくことですが、
小説の中では、されていなかったようです。

また、面接交渉ですが、罰則条項を設けられて
その後、月1回以上会いに行ったため面接交渉権をはく奪されることになります。
しかし、通常、このような罰則は設けられず、
設けたとしても無効とされる可能性があります。

以上のように、
主人公は弁護士がついていながら
通常よりも不利な和解を結んでしまいます。

このようなことは、現実では、ありえません。
通常よりも不利な和解を結ぶには
そのことにより依頼者にメリットがなければなりませんが
このケースでは、全くありません。

相手の案を、飲まなければ、家裁に調停を申し立てますと
夫から言われますが、
調停になって困るのはどちらですか
どうぞ調停にしてください
と、普通なら主人公側の弁護士が言い返すところです。

この離婚の場面は
主人公が、夫も子供も失い(その後母親も亡くし)、
孤独になる原因として書かれていることから
小説を面白くするために
現実にはありえない離婚交渉になっています。

本当に、主人公が依頼した弁護士のようであれば
何のためにお金を払って弁護士を付けたのか
わからないですね。
(裁判で十分に争って裁判所がそのような結論を出したのであれば
仕方がありませんが、任意の交渉で相手の要求を全て飲んで
こちらには何のメリットもなかったのですから)

ちなみに、不倫の相手は、夫に1000万円の慰謝料を支払いますが、
これも、現実にはあり得ません。

不貞の慰謝料は、配偶者と不貞の相手の両方に請求できますが
倍は請求できません。
例えば、不貞の慰謝料は、夫婦がそれが原因で離婚した場合
通常300万円です。
配偶者と不倫相手にそれぞれ300万円を請求できますが
合計で600万円を受け取れるわけではありません。
片方から300万円を受け取ると、それで終わりです。
受け取れる金額はあくまでも300万円なのです。

そこで、配偶者から500万円の慰謝料を取って
不貞の相手から1000万円を取り、合計1500万円を取れるなどということは
通常はありえないわけです。
通常の金額からもかけ離れていますしね。

以上のように
小説やドラマでは、
小説やドラマを面白くするために
かなり現実とは異なって書いてあるものも
多いので、
テレビでこうだった、あるいは小説でこうだったから
と判断せずに
問題を抱えたら弁護士に相談した方がいいです。





( 2014/09/16 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第111回 小説「禁断のスカルペル」 

みなさんが読んでいるかどうかはわかりませんが、
日経新聞の朝刊に「禁断のスカルペル」という
小説が連載されています。

その中で、女性医師である主人公が不貞行為をし
弁護士に依頼して、夫と交渉する場面がありましたので
それについてお話しします。

まず、主人公は、テレビ局関連の仕事をしている友人から
大手ローファームの弁護士に離婚事件を依頼します。

ローファームとは弁護士が数百人いる
大手法律事務所のことを言っていると思います。
通常、大手法律事務所は主に企業の依頼を受けているのであって
個人の離婚事件は取り扱いません。
というか、個人の離婚事件を依頼するには
大手法律事務所の弁護士費用は高すぎて
依頼できないと思います。
離婚事件などであれば
大手法律事務所でなく
普通の事務所の弁護士に依頼した方が
経験も多く、費用も安く済むと思います。

次に、交渉は
相手方が夫と夫の両親、夫の弁護士で、
こちらが本人と弁護士とで
行われます。

しかし、
離婚事件のように当事者の感情的な対立が予想できる事件で
本人同士が直接面談する形で交渉することは
通常はしません。
ましてや、
夫の両親という離婚の当事者でない者が参加するような形では
話が関係ないところで、揉めてしまう可能性があるので
これも通常はしません。

交渉に当たり、当事者が主導で行われていましたが
弁護士が代理人としてついている場合
事実関係の説明、
争点に対する考え方を
本人に話させると
本人は法的知識がないことから
不利なことを言ってしまう可能性がありますし、
そもそも、本人ではうまく交渉できないので
交渉の専門家である弁護士が依頼を受けているのですから
弁護士が話すのが通常です。

そこで、僕は、というか他の弁護士もそうだと思いますが
当事者双方に弁護士がついている場合には
弁護士だけで話し合いをするのが
普通です。

ただ、弁護士のみで交渉してしまうと
おもしろい小説にならないので、
そういう設定にしているということです。
そのこと自体は僕も否定しません。

しかし、
みなさんは、ドラマや小説を見たり読んだりすると
そういうものだと思ってしまう可能性があります。
そこで、
ドラマや小説は、面白くするために
実際と異なることも多いということを
知ってもらうために、
取り上げさせてもらいました。

本当は、小説上の離婚についての合意内容について
書きたかったので、それについては
また次回に書くことにします。










( 2014/09/09 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第110回 アガリクスはがんに効く?-薬事法違反刑事告訴事件 まとめ 

これまでお話ししてきたとおり、
アガリクスはがんに効くという書籍が
実際にはなされていない虚偽の実験データに基づくことを明らかにして
しかも、その書籍の出版を差し止めることができました。

しかし、最初から、こんなにうまく行くとは思ってはいませんでした。
ある書籍が虚偽の実験データに基づくかどうかは法律問題ではなく
裁判で真相を明らかにできるものではありません。
しかも、書籍の出版は何度も言っているとおり
表現の自由として憲法上保護されているので
名誉棄損など他人の権利を侵害しない限り
差止はなかなか難しいのです。

みなさんはブログを読んで
最初から、
薬事法違反で刑事告訴すれば
書籍の出版を早期に止めることができたのではないかと思ったのではないでしょうか。
そういう可能性もあったと思います。

しかし、アガリクスの書籍が虚偽の実験データに基づく
内容の怪しい本だったということも、
厚生労働省や警察が刑事告訴に前向きになった理由の1つだと思っています。
実験データが本当に国立がんセンターなどで行われた実験に基づくものであれば
表現の自由として保護されてしまい、刑事事件とならなかった可能性もあるのです。
それが、書籍は虚偽の実験データに基づくことを国立がんセンターに
公表させたことから、
厚生労働省も警察も、安心して刑事告訴を受理してくれたわけです。

弁護士は、一般的に社会のために仕事をしているわけではなく
依頼者のために仕事をしているので
社会のためになることは少ないと思っています。
しかし、このアガリクスの事件では
結果的に
虚偽の実験データに基づき
みなさんに
アガリクスはがんに効くと思わせていた
書籍及び書籍の広告を一掃したこととなりました。

このアガリクスの事件は
法律的に
難しい事件だったけれども
結果がうまく行ったというだけでなく
結果が、依頼者のためにも
社会のためにもなったという点でも
珍しい事件でした。

最後に、この事件がうまく行ったのは、
依頼者が難しい事件にもかかわらず
弁護士費用を払っても依頼すると決断したことによります。
一般に、弁護士は、依頼もないのに虚偽のデータの公表を求めたり
刑事告訴をしたりはしません。
依頼者が弁護士費用を損するリスクを負っても
やってほしいと依頼したことから、
このような結果が生まれたわけです。
僕の依頼者が僕に依頼しなければ
今でもアガリクスはがんに効くという書籍の広告が
五大新聞に掲載されていたかもしれませんね。







( 2014/09/02 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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