弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第201回 再雇用の賃金引き下げは違法 

60歳定年後の再雇用は法律上制度として導入することが
義務付けられていますので
事実上義務化されていると考えられます。

通常、定年後の再雇用は
嘱託社員だったり、契約社員だったりして
期間限定の身分で、かつ、正社員だったころよりも
給料が下がるのが普通です。

しかし、この度、雇用する会社側にとっては
大変な判決が出されました。

その内容は、定年後の再雇用の際に
同じ業務につかせた場合は
同じ給料を支払えというものです。

同じ仕事なのだから同じ給料を支払えとは
もっともな判決のようにも思えます。

しかし、日本の会社の給与体系は
昔と比べれば大分改善されて来たものの
同じ仕事をしていても
給料は年功序列で上がっていく仕組みになっています。
そうだとすると
定年時の給与は実力や仕事の内容以上に
高い給料となっていることが多いのです。

それにもかかわらず、
定年退職後も
同じ仕事なのであれば同じ給料を支払えということとなると
実力以上の給料を定年退職後も支払い続けることとなり会社側にとってはかなり厳しい
結果となりそうです。
特に、定年時が一番給料が高い給与体系となっている会社にとっては
厳しそうです。

ただ、判決のケースでは
運送会社の運転手ということで
定年前後でやることは変わらないケースなので
判決の結論に合理性はあるかと思います。

この判決に従うのであれば
一番仕事の能力を発揮する
三十代から四十代に給料のピークがきて
定年に向けて給料が下がっていくような
給与体系にする必要がありますが
それはそれで、現行の給与体系を大幅に見直す必要があり
なかなか実現は難しいと思います。
( 2016/06/28 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第200回 浦安の液状化問題 三井不動産に責任なし 

東日本大震災の際に
千葉県浦安市の住宅地が液状化して
建物が傾いたり
庭や駐車場が陥没したりしたことを
覚えていらっしゃるでしょうか。

確か周辺地域では地盤改良をして
液状化していなかったのに
三井不動産が販売した分譲地は液状化したので
三井不動産は大規模な地震により
液状化が予想できたのに
地盤改良をしなかったことから
液状化が発生して損害を受けたとして
三井不動産が販売した分譲住宅地を購入した方が
集団訴訟を起こしていたのでした。

結果から言うと、
一審も二審も
液状化について三井不動産は予想できなかった
という判断で
住民側の請求は棄却されました。
そして、最高裁も上告を退ける判決を出しました。

もともと、地震などの天災地変については
不可抗力とされている上に、
東日本大震災は
日本の歴史史上に残る大震災だったわけですから
それにより地盤の液状化を予想することは困難
と判断されても
やむを得なかったかもしれません。

もう少し小さな地震でも液状化した
ということであれば
責任を問えたかもしれませんが、
東日本大震災では、なかなか難しかったかもしれません。
( 2016/06/21 00:00 ) Category 不動産 | トラックバック(-) | コメント(-)

第199回 成り済まされない権利 

ネット上では、成り済ましが多く行われているようです。
成り済ましとは、他人に成り済まして、その他人がネット上で第三者を誹謗中傷しているような
発言をするということのようです。

例えば、AがBさんに成り済まして、Cさんの悪口をネット上で言って
CさんはBさんが自分の悪口を言っていると思ってしまうというケースです。

東京新聞などによると
インターネットの会員制交流サイト(SNS)で自分に成り済ました人物を特定するため、
中部地方の四十代男性がプロバイダーに情報開示を求めた訴訟の判決で、
大阪地裁が、他人に成り済まされない権利を「アイデンティティー権」として認めたそうです。

自分に成り済まされて
自分がしていないことを自分がしているように思わされたら、
自分の周囲に対する信頼は無くなってしまいますから、
そのようなことを守る権利は認められて当然だと思います。

ネットで他人に成り済まして発言することが簡単にできるようになると
こんな問題も出てくるんですね。

ただ、報道によると
成り済まされない権利があるとしても、権利侵害の期間が短いので
損害賠償請求が認められないとして、
プロバイダーに対する情報開示は認めなかったようです。

成り済ましてどのような発言を行ったのか具体的な事情が分かりませんが、
短期間なら他人に成り済まして他人が信頼を失うような発言をしてもよいことにはならないと思うので
成り済まされない権利を認めるのであれば
プロバイダーに対する情報開示請求を認めてもよかったのではないかと思います。

( 2016/06/14 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第198回 花押は押印に当たらないとする最高裁判決 

みなさん、花押(「かおう」と読みます。)と言われても
歴史に詳しい方以外は
何のことかわからない方がほとんどだと思います。

戦国武将などが、自分の印として
名前の下に、記載するサインのようなものです。

遺言を自分で手書きした場合(「自筆証書遺言」と言います)は
遺言書に署名押印することが法律上の要件となっています。
したがって、押印がなければ、本人が書いたと証明できても
その遺言書は無効となります。

この度、沖縄の琉球王国の名家の末裔の相続で
この花押が法律の要件とする押印に当たるのかが
争われました。

一審と二審は、花押は印鑑と同様に署名と一緒に使用されていたことや
花押の方が認印よりも偽造が難しいなどの理由から
押印があるものとして、遺言書を有効としました。

しかし、今回の最高裁判決は
花押が書くものであって
押すものではないから
押印とは認めないとして
遺言書を無効としました。

花押は、印鑑と言うよりも、サインに近いことから
押印には当たらないということです。

問題となった遺言書は
琉球王国の名家の末裔の相続
ということで
有効か無効かでかなり結果が異なると思いますが
最高裁は無効と判断しました。
しかし、亡くなった故人は
無効とされたと知ったらどう思うことでしょう。

このように、自筆証書遺言は
自分で気軽に作成できるのですが
要件を満たさずに無効となってしまうことが
結構あります。
そこで、遺言書を作成する際には
ちょっとお金はかかりますが
公証役場で公正証書遺言を作成しておいた方がよいと思います。
( 2016/06/07 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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