弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第217回 住宅ローンの支払いを婚姻費用から引くことができるか? 

夫婦が離婚協議をして離婚するまでの間に別居している場合には
所得が多い方が少ない方に対し、
生活費用の一部を出さなければならないことになっています。
これを「婚姻費用」と言います。

婚姻費用については、夫婦双方の所得に基づいて
子供の有無や数を考慮して
裁判所の作成した基準で、金額が決まることになっています。

さて、この婚姻費用を決めるにあたって
よく問題となるのが
夫が出て行って別居をしているけれども
夫名義のマンションに妻と子供が引き続き住んでいて、
夫は住宅ローンを支払っている場合
この住宅ローンを婚姻費用の支払額から引けないか
というものです。

本来、妻が家賃を支払わなければならないところ
夫が住宅ローンを支払っているので
妻は家賃を支払わずにマンションに住めています。
とすれば、妻が賃貸物件を借りて住んでいるときに
賃料を夫が支払っているのと同じにも考えられます。
このように考えると、婚姻費用から
住宅ローンの支払額を引くことを認めてもよいように思えます。

しかし、他方で、住宅ローンを支払っていくと
夫名義の住宅ローンという借金が減り
夫名義のマンションという資産が増えるということになるので
住宅ローンを支払う夫にもメリットがあることになります。
そこで、住宅ローン額全額を婚姻費用として
引くのはどうかという疑問が発生します。

東京家庭裁判所の審判例では
妻の所得額から妻が負担すると推定される家賃相当額を
計算して、婚姻費用から引くという方法を取りました。

したがって、住宅ローン全額は婚姻費用から引けない
ということになります。

ただ、婚姻費用算定に当たって
少しは引いてもらえるということになります。

そこで、別居をしても、住宅ローンを払い続けている場合の
婚姻費用の計算には注意が必要です。




( 2016/10/25 00:00 ) Category 離婚 | トラックバック(-) | コメント(-)

第216回 将棋で、プロ棋士がスマホで不正? 

将棋界で、最高峰のタイトル「竜王戦」の直前で
挑戦者であった三浦九段が出場停止処分となり
挑戦者が変更されるという異例の事態が生じました。

その理由は、将棋連盟は明確にはしていませんが
三浦九段がスマホに搭載した将棋ソフトを利用して
対局をした不正が疑われていたということです。

事実関係がネットや報道でいろいろ言われていますが
誰がどこから聞いた話なのかわかりませんので
僕には、不正があったのかなかったのかについて
判断することはできません。

今回、このコラムで取り上げることにしたのは
将棋連盟がビッグタイトルの挑戦も含めて出場停止処分という
重い処分をしたにもかかわらず、
その理由を明らかにしていないことは問題だと思ったためです。

通常、処分をするには、
処分をするためのルールがあって、
ルールに違反したという事実があって、
その違反が処分に見合うということが
必要とされています。

将棋連盟は公益社団法人なので
棋士の任意の団体なのだから
その処分は団体の好きにしてよい
ということにはならないと思います。

ところが、最初に説明したとおり
将棋連盟は
ホームページ上、出場停止処分にしたことだけを
掲載したのみで、その理由を明らかにしていません。
新聞報道からは、
記者会見では、三浦九段について
スマホを使用した不正について調査していた中で
三浦九段がそのような疑いをかけられたままでは対局することはできない
から休場すると言ったけれども、
休場届が出ないことから
出場停止処分をしたと発表したようです。

この発表を文字通りに解釈すれば
休場すると言っておいて
休場届を出さないから
出場停止処分としたということになります。
しかし、休場すると言っていても
休場届を出さないということは
普通は休場する意思はないということであり
休場届を出さないからと言って出場停止処分にできる
ということにはなりません。

将棋連盟は
スマホの使用による不正を認定したから
出場停止処分にしたということなのかもしれません。

しかし、スマホの使用による不正を認定したのであれば
12月までの出場停止処分は軽すぎるような気がします。

不正をしたと疑われるようなことをしたから
処分したということであれば、
あくまでも疑いなので
それを処分する根拠が必要だと思います。
将棋連盟のルールで疑われる行為をしてはならない
ということが定められていれば
このような処分は可能だとは思いますが
そのような報道はなされていません。

三浦九段は、弁護士に相談すると言っていたそうですが
弁護士であれば、将棋連盟に処分の根拠となる
ルールと事実認定を明らかにするよう求めることが
考えられます。

ただし、三浦九段が不正をしていた場合
将棋連盟は、
理由をうやむやにして
処分も短期間で済まし、
復帰の道も与える
という温情的な処分をした
とも考えられます。

これに対し、三浦九段は、
潔白を証明するために将棋連盟と闘うのか
それとも
世間は三浦九段を黒と思っているけれども
このあいまいな処分を受け入れ
将棋連盟と折り合っていくのか
どちらになるのか注目ですね。

ちなみに、僕は将棋が好きで
このようなことが起きてしまったことは、将棋ファンとして大変残念に思っています。
これはコンピューターソフトが棋士と同等又は強いことが判明してから
何年も経過しているのにのに、不正防止のためのルールをすぐに作らなかった
連盟の責任は大きいと思っています。
(もちろん不正があった場合に不正をした人が悪くないという意味ではありません。
このような不正騒動が起きるということが将棋界にマイナスとなるということについての
責任です)



( 2016/10/18 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)

第215回 借金の整理方法は3つ 

いつの間にか、借金などの支払い(債務)が膨らんでしまい
収入の範囲で支払えるように何とかしたいと思っているのは
会社でも個人でも同じだと思います。

借金の整理方法(「債務整理」などと言います)は主に3つです。

1つは、任意整理。
借金を、元本を減らすことなく、一定の期間の分割払いで支払っていく方法です。
個人の貸金業者への支払いの場合は、通常3年間での分割払いをしていくこととなります。
ただし、この分割払いの期間は利息は免除してもらえることが多いので
支払えば確実に返済額が減っていき、最終的には無くなることとなります。

2つ目は、破産。
破産は、借金を今ある財産の範囲で返済する借金の整理方法です。
財産がなければ、全く債権者に支払わずに、借金を無くすことができます。
逆に、財産がある場合は、自宅でも生命保険でも、換金して
債権者に配当する必要があります。
個人の場合は、破産した後で、免責という裁判所の決定を得て初めて
借金の支払い義務が無くなります。

3つ目は、民事再生。
民事再生は、借金の元本を減額した上で
3年から5年の期間で、
借金を支払うことにより
借金を無くす方法です。
住宅ローンがある場合
住宅ローンのみは契約通り支払って
他の借金は減額して利息も支払わない
という住宅ローン条項付民事再生という方法もあります。

これらの借金の整理方法は、
債務者にとって楽なのは
破産、民事再生、任意整理の順番となります。

しかし、破産では、今持っている財産はほぼ残せませんから
債務者にとってそれがよいかどうかはわかりません。

特に会社が債務者の場合、破産してしまえば
会社は営業を止めることになってしまいますから
営業を継続するのであれば
任意整理か民事再生の方法を取ることとなります。

債務整理については、
会社であっても個人であっても
収入や資産、負債の額によって
選択できる債務整理の方法が変わって来ますから
弁護士に面談で相談することが必要となります。
( 2016/10/11 00:00 ) Category 借金 | トラックバック(-) | コメント(-)

第214回  日本振興銀行元会長に37億5000万円の賠償義務 

この度、日本振興銀行の元会長である
木村剛氏に対し、
約37億5000万円の損害賠償義務を認める
判決が出されました。

請求していたのは
破たんした日本振興銀行から
損害賠償請求権を譲り受けた
整理回収機構です。

どういうことかと言いますと、
日本振興銀行は
木村氏を含む当時の経営陣が
回収見込みの低い460億円もの債権を額面どおりに
買い取ったため
回収ができずに損害を被ったことから
当時の経営陣に対し損害賠償請求権を持っていた
ということを前提として
その損害賠償請求権を整理回収機構が譲り受けて
損害賠償請求訴訟を起こしていた
ということです。

取締役は
経営している会社に対し
損害を与えないように注意する義務があります。

債権買取の際には、
その回収可能性を検討して
買い取りの値段を検討する必要があります。

それにもかかわらず、
債権の安全性を十分確認せずに
買い取ることを承認したことが
取締役としての注意義務を怠った
こととなると裁判所は認定したわけです。

460億円の債権のうち
約37億5000万円は
ちょっと検討すれば
回収できる見込みがないとわかるような債権だった
ということかもしれません。

取締役は、非上場の会社であれば
自分で会社の株式を100%持っていたりするので
なかなか訴えられたりしないのですが
取締役が会社の株式を全て持っていない場合や
会社の債権者が回収できなくなった場合などは
株主や債権者から損害賠償を受ける可能性があります。

その点取締役になる人は注意が必要となります。





( 2016/10/04 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

QRコード
QR