弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第243回 不良品かどうかを裁判官が自ら実験 

毎日新聞によると
ひったくり防止のキャンペーンで
大阪府警が配布した自転車のかごのカバーが
不良品かどうかが訴訟で争われたそうです。

このカバーについては
「ボタンが固すぎて外れない。うまくつけられない」
という苦情が殺到したため
発注したイベント会社が納入業者に対し
代金を支払うことを拒んだそうです。
これに対し、
納入業者が商品は納入したので代金を支払え
と訴訟を起こしたようです。

イベント会社は、カバーが不良品なので
代金の支払義務はないと争ったほかに
カバーを作り直して納入するのに
さらに費用がかかった上に回収にも費用がかかった
として損害賠償を求めたようです。

この点は、よくある裁判で
僕も同様の裁判をしたことがあります。

この毎日新聞の記事で
注目すべき点は
裁判官と裁判所職員である書記官が
200枚のカバーを手分けして
不良品かどうか
確認したということです。
あまり裁判官が実験してみる
ということはしませんが
商品がたくさん残っていたということ
簡単な作業で不良品かどうか確認できる
という条件が揃ったので
裁判官も自ら確認してみることにしたのでしょう。

問題なく外せたのは
裁判官71枚、書記官60枚だったそうです。

残りは不良品だったということになります。

判決を書くとすると
この割合で、代金の請求を認めるか
不良品の割合が多いから全部請求はできないとするか
問題は残ります。

そこは、裁判官が当事者をうまくまとめて
不良品が多いことから
納入業者は代金の請求をしないこととし
正常な商品もあったことから
イベント会社は回収費用や作り直し費用は
請求しないということにしたようです。

解決としては良い結果となったかもしれません。

ちなみに、
僕が以前やったキャンペーンで配布した商品については
相手が納入した商品が不良品で、代金を支払い義務がないことと
作り直し等で余計にかかった費用の損害賠償請求の両方が
判決で認められました。
それにもかかわらず、相手が任意に支払わないので
預金の差押えをして回収しました。
( 2017/04/25 00:00 ) Category 訴訟・裁判 | トラックバック(-) | コメント(-)

第242回 招集手続が法律に違反しても取締役会は有効 

韓国ロッテグループの創業者の重光武雄氏が
日本のロッテホールディングスの代表権を外された
取締役決議を不服として
決議無効確認を求めた訴えについて
判決が出されました。

会社法では、
株主が株主総会で取締役を選んで
その取締役が取締役会で
代表取締役を選ぶということになっています。

取締役会を開催する場合は
事前に招集通知を出すことになっています。

この招集通知が
取締役会の前日深夜にメールで
送られてきたたために
武雄氏は、気づかずに、取締役会に出席できなかったことから
その取締役会決議は無効だとして
争ったようです。

これについて、裁判所は、
招集通知を取締役会前日の深夜にメールで送ったことは
法令違反として認めました。
しかし、
武雄氏以外の取締役は全員出席していた上に
武雄氏の代表権を外すことについては
意思が固く武雄氏が出席しても
影響がなかったと
判断しました。

この点、取締役会については
基本的に法令違反があれば
決議は無効となるという考えも有力ですし
当時代表権を持っていた武雄氏が出席していれば
当然可決されない可能性もあったといえることから
なかなか微妙な判決だったような気がします。

みなさんは、取締役会を開く場合は
きちんと開催の手続を踏んでからするようにした方がよいと思います。

( 2017/04/18 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第241回 相続手続が少し便利になります 

法務省の発表によると
今年の5月下旬から
法務省が、相続手続に関し、
「法定相続証明情報」というものを
出してくれることになったそうです。

この手続は
相続人を証明する戸籍を1式だけ揃えて
法務局に持って行くと
法務局で相続関係図を作成してくれて
相続人が誰であるかがわかる証明書として
発行してくれるものです。

これまでは、1つの相続関係を証明するには
何通もの戸籍謄本を取り寄せて
相続関係図は、自分たちで作成しなければなりませんでしたし
その何通もの戸籍謄本の束をいくつもの銀行で使いまわすか
何セットも戸籍謄本を取り寄せる必要がありました。

今回の手続きは、これを法務局で1枚にまとめてくれて
法務局が証明書として発行してくれるので
銀行や税務署、法務局等に提出するには
この1枚を添付すればよいことになり
用意する書類がだいぶ少なくなります。

しかも、法務局は、この証明書を発行する手数料を
無料にしてくれるそうです。

どうしてこんなことを法務局がしてくれるかというと
相続手続が面倒で、相続登記をしないで
放置され所有者がどこの誰かわからない不動産が
増えているからだそうです。

しかし、本当に面倒なのは、
今回法務局に提出することとなった相続人であることを証明する
戸籍一式を取り寄せることです。
戸籍は、亡くなった方の生まれてから亡くなるまでのものを取らなければなりません。
戸籍をあちこちに移転した人の戸籍は
その自治体ごとに申請する必要があります。
しかも、古い戸籍は、手書きで字が読めないものもあります。

法務局が相続人の面倒を省いてくれるというのであれば
亡くなった方の最後の戸籍を提出すれば
生まれてから亡くなったときまでの戸籍を全部法務局が調べてくれて
今回の証明書を作成してくれるところまでやってもらえると
かなり相続人の負担は軽減されて良かったと思います。

亡くなった方の生まれてから亡くなるまでの戸籍を全て取るのは面倒だという方は
弁護士等に依頼した方がよいかもしれません。
( 2017/04/11 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第240回 みかじめ料は、組のトップに賠償義務 

暴力団が、その勢力地域で
飲食店や小売店等に対し
円滑な営業を認める(営業妨害等をしない)対価として
要求するのが「みかじめ料」です。
何かあったら守ってくれる用心棒代という意味も
ある可能性がありますが
契約書があるわけではなく
よくわかりません。
いずれにせよ、払わないと暴力団に嫌がらせをされたりするので
払っているというのが多いと思います。

このみかじめ料について、
画期的な判決が出されました。

みかじめ料は、通常暴力団と揉め事を起こさないために
任意に支払っていることが多いので
恐喝のように無理やり取るわけではなく賠償請求の対象とはならない
可能性もありました。

しかし、裁判所は
支払いを拒否せず支払っていたとしても
拒否すれば危害を加えられるなどが予想され
本来の意思に反した財産処分を強制する行為だと
認定して、
賠償請求の対象となるとしました。
即ち、みかじめ料を取る行為は
任意の行為ではなく、違法行為(不法行為)だと認定したのです。

さらに、裁判所はこのみかじめ料を取る行為は、
直接みかじめ料を取った末端の組織だけでなく
その組の系列のトップの組長にも賠償責任があると認めました。

みかじめ料は組のトップへ上納金として支払われるお金の一部となることから
系列のトップの組長が末端の組織の構成員に
組の威力を利用して資金獲得活動をさせていた
と判断されたのです。

みかじめ料は、飲食店等が任意に支払っているように見えて
暴力団が怖くて支払っているのがほとんどで
暴力団の主たる収益源の1つでもありますから
みかじめ料を受け取っても後で賠償請求されることになれば
暴力団にとってはかなり痛手となると思われます。

ただ、暴力団相手に払ったみかじめ料の
賠償請求をするのは勇気のいることで
そうそうする人がいるとは思いませんが、
理屈上は請求することが認められたという点で
画期的な判決だと思います。



( 2017/04/04 00:00 ) Category 民事介入暴力 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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