弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第256回 出光の新株発行認められる 

第254回 出光創業者が出光の新株発行の差し止め請求
で、お話しした出光の新株発行による増資については
東京地裁は、有効と判断しました。

今回の増資目的については
裁判所も、支配権をめぐり実質的な争いで
自らを有利な立場に置く目的が存在していたとして
その点では、不当な目的による増資だと判断しました。

また、製油所建設など戦略的な投資のための増資だ
ということについても
必要性や合理性は認められないとしました。

それなら、新株発行は不当な目的で認められなさそうでしたが
昨年末に昭和シェル株を取得した際の借入金の返済については
弁済期が数か月後に控え、資金調達の必要性が高いことは
客観的に明らかであるとしました。

そこで、裁判所は、今回の増資は、
不当な目的もあるけれども
借金返済のため必要という面もあるので
新株発行は正当な理由に基づくとされました。

そして、第三者割当増資という経営者側に有利な特定の人に引き受けてもらう方法ではなく
公募という創業者側も株式を取得できる方法で増資しているので
著しく不公正とは言えないと判断しました。

しかし、そもそも創業家は昭和シェルとの合併に反対しているのに
その昭和シェルの株式を取得するための借金が会社側の正当性を
基礎づけることになってしまうのでは
何ともやりきれないということになってしまいます。

しかも、借金の返済のための増資ならば不当な目的を兼ねていても認められる
と裁判所が判断するならば
株主と経営側とで経営権を巡る争いが生じたときは
経営側は大きな借金を作ってその返済のために
新株を発行し、反対する株主の持ち株比率を下げればよい
ということになってしまいます。

株主からすると、ちょっと問題がある判決のように思えます。

創業家は、東京高裁に即時抗告をしたようです。
東京高裁は、どう判断するでしょうか?
結果が出ましたら、またこのコラムで取り上げます。


( 2017/07/25 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第255回 年俸1700万円には残業代は含まれていない 

以前、年収1700万円の医師の年俸に残業代は含まれている?
で取り上げた医師の1700万円の年俸に残業代が含まれているかについて
最高裁判決が出されました。

結果は予想通り、含まれていないというものでした。
最高裁は、法廷で弁論を開くときは
原審の結論を変えるときなので
弁論を開いた時点で
原審の結論がひっくり返されることは
わかってしまうんですね。

しかし、1700万円もの高額な年俸をもらっていること
残業代も夜9時以降のものは出ていたので
今回問題となっていたのは
夜9時までの限定された残業代だったことという
雇用主である病院に有利な事情はあったんですけれどもね。

これらの事情があるからこそ
一審、二審は、
医師の仕事は時間に応じた賃金に当てはまらない
時間外手当は年俸に含まれていた
としたんですが。。

最高裁は、厳しかったですね。
高年俸の人でも
世間を騒がせている過労死・過労自殺はあってはならない
と考えたのかもしれませんし
従来の年俸制においては、残業代何時間分が含まれているか
明確にしなければならないという原則を厳格に守った
ということかもしれません。

連合が年収が1075万円以上の労働者については
残業代の規定が適用がないとする
いわゆる「残業代ゼロ法案」「ホワイトカラーエグゼンプション」
に条件付きで賛成をするというニュースが流れていましたが
その法案が通れば
1700万円の人には
残業代は支払わなくてもよいということになるかもしれません。
ただし、対象の職種に医師が含まれてはいなさそうなので
高年俸の医師にも残業代は支払う必要がありそうです。

経営者のみなさんは
年俸制を取るときには
契約書に残業何時間分を含むと
必ず書く必要がありますので
注意してください。



( 2017/07/18 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第254回 出光創業者が出光の新株発行の差し止め請求 

株式会社の経営争いは、
持っている株式の比率で決まります。

石油の精製、販売を行っている出光興産で
この株式比率を巡っての争いがされています。

出光興産は上場していることから
株式の過半数を持っている株主はいません。
しかし、出光興産の創業者及び関係者(マスコミでは創業家と言われています)は
3分の1を超えて株式を持っています。
そこで、出光興産の創業家が反対すると
株主総会で3分の2の賛成が必要な合併や事業譲渡が
できなくなります。

出光興産の経営陣は昭和シェルとの合併を計画していましたが
創業家が反対しており、
合併の計画を進められないという状況にあります。

このような状況の中、
出光興産が新株を発行して、
資金調達を図ろうとしています。

株式会社は株式を発行して
それを投資家(株主)に引き受けてもらうことにより
資金を調達することができます。

しかし、新株を発行して株式数が増えれば
必然的にこれまでの株主がこれまでの割合と同じだけ
株式の引き受けをしなければ
持ち株比率が低下してしまいます。

会社法上、上場企業では、
新株発行は予め定められた枠内であれば
取締役会で決めれば自由に発行することができます。
株主総会決議は必要ありません。

ただし、会社が著しく不公正な方法により
新株を発行し、それにより株主が不利益を被るときには
株主は、新株発行を差し止めることができるとされています。

出光興産の創業家は
この規定に基づいて
新株発行の差し止めを請求しているということになります。

どういう点が著しく不公正かというと
経営陣が合併を進めようとしているのに
創業家が反対していることから
その反対を押さえるために
創業家の持ち株比率を3分の1を下回るようにすることを目的として
新株発行をしようとしていることになります。

ただ、これは創業家がそう主張しているだけで
経営陣は新株発行の理由は
資金調達をして事業基盤の強化、成長事業の育成、財務体質の強化が
必要だということを挙げています。

裁判では、当事者双方がどのような主張をしているのかわかりませんが
一般的には、合併を計画して反対されてできない状態になって
新株発行を計画していることからすれば
合併反対を回避するためという創業家の主張が正しいように思えます。

しかし、経営陣側とすれば、
合併を反対されたことにより、
事業規模は小さいままなので、経営基盤の強化が必要になり
自分だけで石油業界で生きていくためには
資金が必要になる。
合併を反対されたからこそ、新株発行による資金調達が必要になったのだ。
と主張していると考えられます。

どちらと判断するかは裁判所次第ということになりますが
果たしてどちらの主張が通るでしょうか。

これぐらい、株式会社の経営争いには
持ち株比率が影響してきます。
会社の経営者の方は自分の持ち株比率がどうなっているのか
確認しておいた方がよいと思います。

( 2017/07/11 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第253回 弁護士会の照会で調査 

裁判は
相手がどこの誰かがわからないと
起こせないということがあります。

依頼者の知っている住所に内容証明郵便を送付したら
転送されてしまったという場合には
転送先が相手が実際に住んでいる住所となります。

ただ、一般的に郵便局では、
転送先は、守秘義務があるとして
教えてもらえません。

そこで、弁護士は、
弁護士会の照会制度を利用して
転送先を調査しようとしました。

ところが、郵便局は、守秘義務があるとして
照会に回答しませんでした。

そこで、弁護士会は、照会に回答してもらえなかったことにより
慰謝料を請求して訴訟を起こしました。

弁護士会は、一審は敗訴して、二審は勝訴しました。
最高裁では、
「回答されなくても、弁護士会に損害はない。
ただし、回答義務の有無については、
判断する必要がある。」として
名古屋高裁に差し戻しました。

そして、この度、名古屋高裁での判決が出されました。
判決は、郵便局の回答義務を認めるものです。

これで、相手方が転居したのに住民票を移していないような場合に
相手がどこに住んでいるかを調べることが可能となります。

住民票が移されていないのに
郵便は転送されてしまうというケースは
よくあって、訴訟を起こしてから
転送先を調べるよう裁判所から言われることも多いです。

これまでは、郵便局の職員と
「開示して欲しい。」「開示しない。」という
押し問答が繰り返されるということでしたが
これで弁護士会の照会を使えば
相手の居所がわかるということになります。

最近は、3大都市銀行は相手方の預金の有無も弁護士照会で
回答してくれるようにもなり、
通常では調べられないことについて
弁護士会の照会で調査できる場合もあります。

こういうことが調べられるかということがあったら
弁護士に相談してみてください。
弁護士会の照会で調査できることもあるかもしれません。


( 2017/07/04 00:00 ) Category 弁護士 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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