弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第274回 記事は真実。問題は広告の見出し 

報道によると
コメの卸売業者が産地を偽装していた問題で、
そのコメがイオンで販売された弁当などで使用されていたことについて
週刊文春は
「『中国猛毒米』偽装イオンの大罪を暴く」
という見出しで広告を出し、記事を掲載しました。

これに対し、イオンは名誉棄損だとして損害賠償請求をしました。
一審は、広告の見出しや記事の一部は真実と認められないとして
2490万円余りの損害賠償を認めました。

しかし、二審は、記事は真実であり、食品の安全に関して問題を提起する良質の言論で
裁判を起こすことで委縮させるのではなく、言論の場で論争を深めていくことが望まれる
としました。
ただし、広告の見出しについては、コメに猛毒が含まれていたという誤った認識を
抱かせるとして、110万円の賠償は、認めました。
一審判決の内容からすれば、勝訴と言ってもよいくらいの減額となっています。

裁判官からすると、余程記事の内容は、よくできたものだったのでしょう。
しかし、週刊誌の中身をいちいち記事まで読んで検証する人は
少ないのではないかと思います。
いわゆる世間は、新聞に出される雑誌の広告の見出しや
電車の中吊り広告で、
そのような内容の記事が書かれている=そのような事実がある
と思ってしまうものなのです。

そう考えると
「『中国猛毒米』偽装イオンの大罪を暴く」
という見出しは、
産地偽装を超えて
イオンで人間の健康を害する毒が入っているコメを
売っていたと思わせるもので
とても、真摯に食品の安全に関する良質の言論とは
思えないセンセーショナルなものです。
しかも、広告の見出しの方が世間一般に与える影響が
大きいことを考えると
110万円の賠償額は安すぎるのではないかと思います。

それに、言論の場で論争を深めていくといっても
新聞や電車の中吊りで出されてしまった広告について
後から論争したところで
一度付いたイメージを消すのは
簡単なことではありません。

言論には言論で反論しろという
裁判所の言っていることは
理解できないわけではありませんが
実質的に、週刊誌のやり得を
認めているようなもので、
裁判官は現実を知らないと言われても仕方がないような気がします。

食の安全に関する良質な言論なのであれば
人に誤った印象を与える見出しをつけること自体
おかしいと思います。
( 2017/11/28 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第273回 未払残業代の時効が5年に 

第267回 残業代の請求事件が増えています
で、お話ししたように、
従業員からの会社に対する残業代の請求の事件が増えています。

未払残業代は、現在労働基準法で、2年で時効にかかるとされています。
これは、民法が従業員の給料の時効を1年と定めていて
1年はあまりに短いことから
労働者の保護のために
労働基準法では倍の2年に伸ばしているのです。

この度民法が改正されて
施行はまだですが、
全ての債権について時効は5年と定められました。
労働基準法がなく、民法に従うのであれば
従業員の給料も時効は5年になるはずです。

しかし、労働基準法で時効は2年と定められていることから
2年になってしまうということなのです。
本来労働者を保護するために2年としたのに
今度は、それが却って労働者に不利になってしまう
ということとなっています。

そこで、厚生労働省は、従業員の給料の時効を5年と
するよう労働基準法の規定を改正することを検討する
のだそうです。

未払残業代が、2年分まとめてくるのでも
会社側としては大変だと思いますが
これが今後は5年となる可能性があるわけです。

残業代の未払いが発生しないように
雇用契約や就業規則、実際の労務管理を変える必要があると思います。



( 2017/11/21 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第272回 成年後見より家族信託 

信託法が改正され、
営利目的でなければ
信託銀行以外の個人でも
信託を受けることができるようになりました。

信託というのは、
主に財産の管理の委託をすることです。

親の財産や事業を子供に管理を委託するということが
典型的な例です。
これらは「民事信託」とか「家族信託」と呼ばれています。

これまで、家族間の財産管理と言えば
成年後見制度を利用するほかありませんでした。
そうなると、裁判所に申立をして
成年後見人や成年後見監督人を選任してもらい
裁判所に報告したり、裁判所の許可を得たり
しなければなりませんでした。

ところが、親が判断能力があるうちに
家族信託契約を結んでおけば
子供は親の財産を管理や処分をすることができ
その後判断能力がなくなっても
成年後見の申立をすることなく
継続して財産管理をすることができるのです。

信託契約では、親が亡くなったときに
財産を誰に帰属させるか決めることもでき
遺言書の代わりにすることも可能です。
この点でも、便利な契約となります。

ただ、信託契約は良いことばかりではありません。

財産管理の委託を受けた子供(「受託者」と言います)が
自分のためにお金を使ってしまったりして
使途不明金が出たりする可能性もあります。
成年後見人については
裁判所が監督しますが
家族信託の場合は
信託契約で信託監督人を選任しておくか
裁判所で選任してもらわないと
そのような監督をしてくれる人がいないこととなります。

その点は注意が必要となります。

しかし、家族信託は全体的に便利な制度ですので
子供に自分の財産の管理を任せたいという場合は
利用されることをお勧めします。





( 2017/11/14 00:00 ) Category 成年後見 | トラックバック(-) | コメント(-)

第271回 裁判官のアパート経営は不許可 

報道によりますと、
夫婦で賃貸アパートを新築して
賃料収入を得ようとした裁判官が
兼業許可を申請したところ
不許可にされたようです。

裁判官は公務員ですから
事業を行うには
兼業をすることについて
国の許可が必要となります。

今回のケースは
1億3000万円を銀行から借り入れて
アパートを新築して
自分で所有する土地にアパートを新築し
全室を不動産業者に貸し付けて年間賃料1100万円を得て
年間500万円の収入を得る計画だったそうです。

借入金額と収入金額が多かったため
「最も公正かつ廉潔であることが認められる裁判官には
認められない」ということが理由だそうです。

裁判官は、私的な紛争を公正に裁くことが求められるので
利益を目的とする事業を営むことは
許されないとの判断のようです。

なかなか難しいのは、今回の土地にはもともと
親の自宅兼アパートがあったということなので
それを建て替えようとしたようです。
相続案件では、裁判官も許可を受けているらしいので
親が同様の規模のアパートを残して
亡くなった場合は
許された可能性があるということです。

親が残したものなら仕方がないけれども
自分で建て替えるのは許されない
というのはなかなか厳しいですね。

( 2017/11/07 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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