弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第286回  非正規社員に手当は不要? 

前回もセクハラ問題で、
労働問題でしたが、
今回も非正規社員の手当の問題で
労働問題です。

大阪地裁で、郵便局に勤務する
非正規社員が正社員と手当の不均衡を理由として
未払の手当を請求した訴訟について
判決が出されました。

以前にも、住居手当等については
非正規社員にもその趣旨が当てはまることから
支給しないことは違法とされる判決が出ていました。

今回、裁判所は
扶養手当について、
親族の生計を維持するのは
非正規社員にも正社員と同様の負担を生じていることから
非正規社員に対しても
支給をしないと、
労働契約法20条で禁止する不合理な待遇格差に該当し
違法だと判断しました。

しかし、扶養手当は、長期間勤務を前提とする正社員について
扶養家族を養う負担を軽減することにより
長期間の勤務を可能にするという目的がある手当であるとも言えるので
正社員のための手当だという判断もありえたと思います。

この点は、争いようがあると思いますので、
高裁や最高裁がどのような判断となるか興味がありますね。
ただ、会社や事業者のみなさんは
この点をどう扱うか微妙なところになります。

( 2018/02/27 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第285回 セクハラの責任は親会社まで負うか 

先日、子会社の従業員が別の子会社の従業員にセクハラをした場合
親会社も責任を負うかということが争われた事件で
最高裁判決が出されました。

この事件、
一審では、そもそもセクハラがなかったと認定されましたが
控訴審では、セクハラが認定されたばかりでなく
雇い主である子会社と親会社にまで
セクハラの責任が認められました。

そして、最高裁では、
セクハラは認められ、
セクハラをした子会社の従業員と
雇い主である子会社には
セクハラの責任が認められましたが
親会社にはセクハラの責任がないとされました。

親会社の責任の有無がわかれたポイントは何か
説明します。

高裁は、法令順守体制を整えて相談窓口まで
設けていたのだから、
相談があったら、相応の対応をすることが
必要だったのに
親会社はそれをしなかったから
責任があると判断しました。

これに対し、最高裁判決は
単に相談があったのに、
相応の対応をしなかっただけでは
責任は発生しないと判断しました。
具体的には、
本件の相談内容であるセクハラは
被害者である従業員が子会社を退職後に、
かつ、事業場外で行われたもので、
加害者である従業員の職務に直接関係するとは
思われないこと、
しかも、親会社に申し入れがされたときは
加害者である従業員と
被害者である従業員は
同じ職場では働いておらず
セクハラが行われてから
8カ月以上経過していたことなどから
セクハラの相談を受けた際に
事実確認の対応をしなかったからと言って
損害賠償責任を負うほどの義務違反はなかった
と判断しました。

最高裁も、
子会社の従業員のセクハラについて
親会社は常に責任を負わないと
言っているわけではありません。

子会社の従業員同士のセクハラであっても
親会社は法令順守体制を整えて窓口を設けた以上
従業員が在職中に、
グループ会社の事業場内で
セクハラが行われたという相談が来た場合には
何らかの対処をしないと
親会社だから関係ないとは言えない
と判断される可能性が高いと思います。


( 2018/02/20 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第284回 花押は押印に当たらない最高裁判決のその後 

第198回 花押は押印に当たらないとする最高裁判決
お話ししたとおり、
花押(かおう)は、自筆証書遺言の要件である押印に当たらないので
花押が記載してあっても
遺言は無効となりました。

その事件は、遺言として無効であっても
亡くなったことを理由とする死因贈与として有効かどうか
ということが争われていました。
死因贈与というのは、
死ぬことを条件として
贈与する契約のことです。
遺言は、遺言者が一人で遺産を誰に相続するか決めるものですが
死因贈与は、贈与する人ともらう人が
贈与する人が亡くなったときに贈与をし
これを受ける約束をすることで
遺言と死因贈与は似ていますが、
法律的には異なるものとして取り扱われます。

差し戻し審での高裁では、
この点が争われ、高裁判決は
遺言として無効であっても
死因贈与として有効と判断したようです。

そして、この度、最高裁でも
その高裁の判断には問題がない
ということで上告を受理せず、
高裁判決が確定したようです。

遺言として無効であっても
死因贈与として有効ということは
結局遺産は、被相続人の思い通りに
相続人に取得させることができることになります。

自筆証書遺言は
全文自筆で書く必要があって
日付けと署名捺印が必要で
要件を欠いて無効になってしまうことは
結構あります。
そういう場合に遺言書は無効だからと
諦めないで
死因贈与と言えないかどうか
弁護士に相談された方がよいと思います。
死因贈与と言えれば
その内容のとおりに
遺産を取得することが可能となります。



( 2018/02/13 18:41 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第283回  共有と言えば、聞こえはいいですが 

世の中に、共有の土地や建物は
意外に多いです。

夫婦、あるいは親子が共同で、マンションを買ったり
戸建てを建てたりする場合は、
共有にしてあることが多いです。

これは、購入資金に基づき
持ち分もそれに応じて
はっきりさせておこうというもので
ある意味合理的です。

しかし、不動産が共有となっている一番の原因は
遺産分割です。
多くが親あるいは祖父の代に相続する際に
共有としてそのままということが多いです。

そして、兄弟のうち1人が
その建物に住んでいることが多いです。

兄弟のうちの1人が生きているうちは
他の兄弟も黙って使用させてきたのでしょうが
兄弟が亡くなったときに、
他の兄弟から、親の代の遺産分割をしてほしいと言われたら
残された家族は、たまったものではありません。

例えば、4人兄弟ABCDがいて
親から相続した土地建物には長男Aとその家族がずっと住んでいたとします。
Aが亡くなったとたんに、
BCDが、土地建物について親の代の遺産分割をして欲しいと言ってくる可能性はあります。

兄弟は平等ですから、
4人兄弟だとしたら、残された家族の相続した分は
4分の1しかありません。
4分の3の代償金を支払わなければ
そこに住むことはできなくなります。

この相続の問題点は、
Aが生きているうちに、
Aが相続するという遺産分割で決着しておかなかった
ということになります。
もちろん、その際にAが代償金を支払わなければならない
可能性がありますが
Aは親が亡くなってから家族と一緒に
住んでいて他の兄弟は文句を言わなかったくらいですから
それは減額するなり
分割払いで支払う約束をするなり
方法はあったはずです。

親に遺言書を書いてもらうという方法もありました。

共有にしておくということは
何となく聞こえはいいですが
問題の解決を先延ばしにしているだけで
後でトラブルになってしまうことが多いです。
なるべくなら、その時々で
代償金や売って代金を分けるなど
お金で解決してしまう方が
後で家族が苦しむことになるということは
少ないようです。

( 2018/02/06 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

QRコード
QR