弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第303回 個人情報流出の損害は500円以内? 

大分前となりますが
2014年にベネッセコーポレーションから
顧客情報が流出しました。
そのとき、ベネッセコーポレーションが個人情報が
流出した顧客に500円の商品券を配布したことから
個人情報の流出の慰謝料は
500円より高いのか低いのかと
議論されてきました。

この度、東京地裁でこの件に関し
判決が出されました。

訴えを起こした原告は
個人情報流出により
営業電話やダイレクトメールを受けたり
詐欺などの犯罪に利用される恐れがあるとして
慰謝料の請求を求めました。

これに対し、ベネッセ側は
流出情報を利用した勧誘行為があったとしても
日常的によくあることなので
損害とまでは言えない
と反論しました。

裁判所は、
氏名や住所などの情報は
思想信条や性的指向などの情報に比べ
他者にみだりに開示されたくない
私的領域の情報としての性格は低いと指摘した上で
原告側に個人情報流出により実害が生じていないとして
ベネッセがお詫びの文書と500円の金券を配布したことを考慮して
損害賠償請求を認めませんでした。

この判決から判断すると
個人情報流出の慰謝料は
500円未満だということになります。

あるいは、実害が生じない限り
損害賠償請求は発生しない
ということなのかもしれません。

みなさんは、どう思いますか?
( 2018/06/26 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第302回 正規非正規の手当についても最高裁の判断 

前回、第301回 定年後の再雇用、待遇格差に遂に最高裁判決
で、定年後の再雇用の際に給料を減額してよいかという点について
最高裁が合理的な理由があれば減額しても違法ではないと判断した
ことについてお話ししました。

今回は、その続きで、最高裁判決は正規非正規の手当の差についても
判断をしましたので、その点についてお話ししたいと思います。

第一審の判決では
通勤費用を補助する通勤手当を
非正規社員に支給しないことを違法だと判断しました。

これに対し、原審の高裁判決では、
通勤費用を補助する通勤手当、
食事代を補助する給食手当、
事故を起こさないことを奨励する無事故手当、
特殊作業業務に従事した際の作業手当を
非正規社員に支給しないことは違法として
相当額の支払いを命じました。

最高裁は、これらの手当については
高裁の判断が正しいとし、
さらに、
休日以外の全ての日に出勤したものに支払われる精勤手当、皆勤手当についても
非正規社員に支払わないことは不合理で違法と判断しました。

住宅費用の補助である住居手当については、
正社員は転勤等で転居があり住居費用が多額となる可能性があることから
転勤のない非正規社員に支給しなくても
不合理ではないと判断されました。

以上のように、非正規だから手当は支給しないというだけでは
違法とされる可能性があります。
非正規の社員に手当を支給しない場合は
正社員にはこのような理由があるから支給する
あるいは、非正規社員にはこういう理由があるから
支給しないと合理的な理由が必要となります。

社員の転勤等がない会社では
住居手当を正社員と非正規社員で支給したりしなかったりする場合は
不合理で違法だとされる可能性があります。

会社は、この最高裁判決を踏まえて
支給している手当を非正規社員に支給しないことに合理的理由があるか
検討する必要があります。




( 2018/06/16 15:53 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第301回 定年後の再雇用、待遇格差に遂に最高裁判決 

定年後の再雇用の際に、
それまでの給料を減額してよいか
基本給以外の手当はどうかについては
これまで、各地方裁判所や高等裁判所で
争われてきました。

一審判決では、同じ職務を行っているのに
給料を減額することは違法で
会社に同一の給料を支払えと命じました。

この点最高裁は、
再雇用者は定年まで正社員の給料を支給され
老齢厚生年金も予定されていることから
これらを考慮して不合理かどうかを判断するとしました。
そして、会社が定年後は職務給がない代わりに
基本給与額を定年時の水準以上として
収入の安定に配慮していること、
歩合給で労務の成果が給料に反映されやすくされていること、
老齢厚生年金の支給開始まで2万円の調整金も支給されること、
などから、
退職時の給料よりも再雇用時の給料が減額されても
不合理とは言えないと判断しました。

このように最高裁は、一般的に行われている
再雇用の際の給料の減額を認めました。
しかし、無制限に減額してよいというわけではありませんので
会社側は再雇用する場合、
給料を減額する金額の範囲に合理的な理由があるのかどうか
検討して、理由を説明できるようにする必要があります。

( 2018/06/12 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第300回 意外に難しいアメフト事件における日大の危機管理対応 

日大アメフト部の選手が
試合中に相手のクォーターバックを
故意にケガをさせようとして
プレーが終わってから
タックルをした問題で、
日大という大学本体の危機管理が
非難を浴びています。

不祥事が起きた場合、
被害者のいる不祥事と
被害者のいない不祥事とがあります。
被害者が自分あるいはいない不祥事の場合
被害者の立場を気にする必要はありません。

そこで、どういう事実があったのか、どういう経緯で起きたのかなどは
第三者委員会である程度時間をかけて調査し
結果を発表するということで、問題はないと思います。

しかし、今回のような被害者のいる不祥事の場合、
被害者に謝罪をしなければなりません。
謝罪をするのに、どういう事実経過で被害を与えてしまったのかということが
確定していなければ謝罪はできない(相手方は納得しない)わけです。

今回のケースでは、
日大の監督は試合中の加害行為について指示していないと、
自らの責任を軽くしようとしています。

組織としての大学は、監督の言い分が正しければ
その言い分に乗った方がよいわけで、
それにもかかわらず、大学に不利な主張を裏付ける証拠を集めた上で
大学に不利な事実を認めて謝罪するということは
大変なことです。
しかも、これらの手続きは迅速にやらなければなりません。

組織でも、人間でも、自分に有利なことであれば
迅速に対応することは可能ですが
自分に不利なこと、嫌なことは
なかなか迅速に対応することは難しいです。

しかし、今回のケースは、被害者がいて、
しかも試合の映像は公開されていたのですから
その映像などの証拠に沿うような形で
事実関係を把握したうえで、
謝罪する必要があったということになります。

第三者に調査を依頼するのはいいですが
期限を3日以内とすることなどが必要だったと思います。

また、加害選手と監督の言い分の違いについて
どちらが信用できるかについては
試合の映像や加害選手が反則し退場させられたことについて
監督が試合中選手に対し何もしなかったことから
加害選手の言い分の方が正しいと判断するのが通常だと思います。

被害者への謝罪等について
加害行為の原因であると思われるけれども
責任を軽減しようとしている監督に任せていた
ということが、対処の大きな誤りであったと思われます。

そういう意味で、日大の経営者は
危機管理対応を誤ったと言えるでしょう。

しかし、実際に会社において同様のことが起きたら
どうでしょうか。
担当取締役が「自分はやっていない。」と主張している場合に
それを否定し、加害行為を認めて相手に謝罪するということが
できるでしょうか。

財務省のセクハラ問題も同じような問題でした。

やっていないという言い分の方が正しいかもしれないし、
また、その言い分に乗った方が自分たちも責任がなくなるという場合に
迅速に事実関係を調査し、自分に不利益な事実を認め
謝罪するというのは、
言うのは簡単ですが、実際に行うのは難しいと思います。






( 2018/06/05 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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