弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第351回 自筆証書遺言を法務局で保管してくれるようになります(改正相続法5) 

相続法の改正で遺言については
2つ大きな改正がなされました。

1つは、前回ご説明した自筆証書遺言の財産目録は
自筆で書かなくてもよいということです。

もう1つは、自筆証書遺言を法務局で保管してくれるということです。

これまで、自筆証書遺言は作成にお金がかからないというメリットがあるにもかかわらず
みなさんにあまりお勧めできなかった理由は2つです。

まず、1つは、自筆証書遺言は、全文自筆で作成しなければならず
日付を書いて、署名捺印しなければならないという要件を満たす必要があります。
しかし、みなさんがご自分で書く場合はこの要件を満たさない可能性がありました。

2つ目は、自筆証書遺言は、紛失、焼失、誰かが破棄してしまうなどすると
仮に写真やコピーが残っていたとしても効力が無くなってしまうということです。
遺言書を書いてから亡くなるまでが何十年もかかる場合があります。
しかし、その間、無くさずに書類を保管しておくことは
結構大変なことです。
これに対し、公正証書遺言であれば
遺言のデータ自体は公証役場で保管していますので
遺言がなくなるということはほぼ考えられませんし、
相続人が遺言者の死亡後に、公証役場に遺言の有無や内容を問い合わせれば
遺言書を出してくれるのです。

このように保管の面で、自筆証書遺言はリスクがありました。
今回の相続法改正で、自筆証書遺言を法務局で保管してくれることとなりました。
そこで、遺言を書いた人が法務局で保管してもらえば
相続人などが遺言者の死亡後に法務局に問い合わせをすれば
遺言の有無や内容がわかるようになったのです。

国が保管してくれるのですから、ほぼなくなる心配はないと思います。
しかも、自筆証書遺言は、遺言者が死亡後に、遺言の検認の手続きが必要でした。
法務局に自筆証書遺言を預けた場合は、
この検認手続きも不要となります。

これらの点で、自筆証書遺言は、費用もかかりませんし、
保管の点でも安心できることとなりました。
検認手続も不要となるというメリットもあります。

これらを考えると、遺言書を作成する場合
これまでは、公正証書遺言をお勧めしてきましたが、
自筆証書遺言でもよいのではないか
と思います。

ただし、法務局の自筆証書遺言の保管については
令和元年7月1日に施行されるのではなく
令和2年(2020年)7月10日に施行される予定となっています。
施行されれば便利な制度だと思いますが
施行まであと1年かかります。


( 2019/06/25 00:00 ) Category 企業法務 | トラックバック(-) | コメント(-)

第350回 財産目録は自筆でなくてもよくなりました(改正相続法4) 

ここ何週間にわたっては
改正相続法の説明をしています。

今回は、7月1日から施行されるのではなく
もう今年の1月13日に施行されてしまっている
改正相続法の話となります。

遺言書には、公証役場で作る公正証書遺言と
作成者が自分で書く自筆証書遺言があります。

相続法の改正では、自筆証書遺言の作成方法が緩和されました。

自筆証書遺言は、これまで全文を自筆で書かなければなりませんでした。
そうなると、財産が多い場合、不動産や預金のある銀行名など財産について全部
手書きをしなければならないということとなります。
これは、遺言を書こうとする人にとってとても面倒です。

そこで、改正相続法では、財産目録については
パソコンで作成したり
通帳のコピーを添付したりすればよいこととされました。

ただし、これらの財産目録については、
偽造防止のために署名捺印が必要になっていますので
注意が必要となります。

このように、自筆証書遺言の作成方法がこれまでよりも
簡単になりましたので、将来起こる相続のために
自筆証書遺言を作成してみてはいかがでしょうか。

自筆証書遺言については、みなさんが利用しやすいように
もう1つ法律が改正されました。
それについては、また来週説明することにしたいと思います。




( 2019/06/18 00:00 ) Category 未分類 | トラックバック(-) | コメント(-)

第349回 遺産分割協議成立前に預金が下ろせるようになりました(改正相続法3) 

7月1日から施行される改正相続法の説明の3回目となります。
今回は、遺産分割協議成立前でも預金が下ろせるようになった
というお話です。

以前は、預金は金銭債権だから、各相続人は自分の相続分は
直接銀行に行って下ろせるというのが最高裁判例でした。
しかし、平成28年の最高裁判決により
預金債権は遺産分割の対象財産であって、
単独で払い戻しをすることはできないこととなりました。

こうなると、銀行に被相続人の死亡を知らせた場合口座が凍結され、
遺産分割協議が成立するまで預金を下ろせないこととなってしまいますから、
例えば夫の収入(預金)で生活をしていた妻などは
急に生活資金が無くなってしまい困ることとなります。

また、本人の預金が下ろせないため
本人が亡くなるまでの入院費用が払えない、
葬儀費用が払えないなどの問題が起きてしまいます。

そこで、今回の改正相続法では
遺産に属する預貯金の一定額を
遺産分割協議が成立しなくても
相続人の1人が下ろすことを認めました。

どれくらい下ろせるかというと
預金額の3分の1×法定相続分となります。
例えば、Aさんが妻Bと子供2人がいて
預金600万円を残して亡くなったとします。

この場合、妻Bは、預金額の3分の1×法定相続分2分の1=6分の1である
100万円を遺産分割協議成立前でも下ろすことができます。

では、複数の銀行に預金があった場合はどうなるでしょうか。
この場合各銀行ごとに払い戻し限度額を計算することとなります。
先ほどの例で、AさんはA銀行に600万円、B銀行にも600万円残していた場合は
妻BはA銀行から100万円、B銀行からも100万円の合計200万円を
下ろせることとなります。

また、先ほどの例で預金が1000万円あったらどうなるでしょうか。
預金額の3分の1×法定相続分2分の1=6分の1は166万6666円となります。
しかし、法律では、1金融機関で150万円が限度とされています。
したがって、1つの銀行で預金が1000万円あっても、
妻Bは166万6666円を下ろすことはできず
150万円までしか下ろせないということとなります。
預金が1つの銀行に2000万円あっても
150万円しか下ろせないということとなります。

1つの銀行での限度額が150万円と決まっているために
預金が1つの銀行に何千万円もあった場合でも
150万円しか下ろせません。
そうすると、葬儀代は支払えても生活に困る方も出てくるでしょう。

その場合には、仮払いの仮処分を裁判所に申し立てることにより
銀行預金を下ろせることとなります。
何千万円もの預金があるけれども遺産分割協議が成立しないので
相続税が払えないということはよくあることです。
そういう場合には、仮払いの仮処分を利用することが可能です。

これまでは、保全のj必要性が厳格でしたが
共同相続人の利益を害しない限り
家庭裁判所の判断で仮払いが認められるようになりました。

このように改正相続法では、預金の払い戻しについて
少し便利になりました。







( 2019/06/11 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)

第348回 婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の贈与等の優遇措置(改正相続法2) 

改正相続法の説明の第2回目です。
前回は、改正相続法では、遺留分の制度が変わったという
お話をしました。

第346回 改正相続法施行は今年の7月1日から(改正相続法1)

今回は、婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の贈与等の優遇措置について
お話しします。

タイトルが長いですが、内容は、婚姻期間20年以上の配偶者、即ち夫や妻に
居住用不動産を贈与や遺贈をすると優遇措置が受けられるということになります。

どのような優遇措置なのか説明します。
優遇措置とは、持ち戻しの免除の推定がされるということとなります。

具体的にどういうことか説明します。

Aさんには、妻Bと子供CDがいました。
Aさんは、自宅(評価額2000万円)を妻Bに贈与の特例を使って
生前贈与をしました。
Aさんが亡くなった際に、預貯金が6000万円残されていました。

法律が改正される前は、この場合、自宅の生前贈与は特別受益となり
遺産に加えて相続分を計算することとなりますから
遺産は預貯金6000万円+自宅2000万円=8000万円
となります。
そして、法定相続分は、妻B2分の1、子供C4分の1、子供D4分の1となりますから
取得する遺産は、妻B4000万円、子供C2000万円、子供D2000万円となります。
妻Bは既に自宅2000万円をもらっていますから、BCDは預貯金6000万円を
2000万円ずつ分けるということになります。

ところが、改正相続法では、特別受益の持ち戻しを免除することが推定されていますので
持ち戻しを免除しないことを示す証拠がない限り、
持ち戻しが免除されることとなります。
持ち戻しとは、先ほどの例で、生前贈与された自宅を遺産に加えて相続分を計算したことです。
持ち戻しが免除されるとは、生前贈与された自宅を遺産に加えずに相続分を計算してよいということです。

そうなると、前記の例では、遺産は6000万円となり、
妻B2分の1、子供C4分の1、子供D4分の1となりますから
妻Bは、預貯金を3000万円、子供C、Dは預貯金を1500万円ずつ相続する
ということとなります。

妻Bは、改正される前の相続法によれば
自宅と預貯金合わせて4000万円しか受け取れませんでしたが
改正相続法によれば
自宅と預貯金を合わせて
5000万円を受け取ることが可能となるということです。

これが、婚姻期間20年以上の配偶者に対する居住用不動産の贈与等の優遇措置となります。

この優遇措置は、婚姻期間20年委以上の配偶者に、生前贈与や遺言書を書かないと
受けられませんので、亡くなった配偶者が残された配偶者に対し生前贈与するか
遺言書を生前に書いておく必要があります。

また、贈与や遺言の対象は居住用不動産ですから
賃貸アパート等は、対象になりませんので、注意が必要です。

住居兼店舗や住居部分がある賃貸マンション等は全部が持ち戻し免除がされるのか
住居部分だけ持ち戻しが免除されるのか、意見が分かれますので
裁判で争われることになると思います。








( 2019/06/04 00:00 ) Category 相続・遺産分割 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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