弁護士高島秀行の資産を守り残す法律

資産を守り残すために事前に備える賢い法律利用方法

第144回 センターラインオーバーの方が被害者? 

報道によると、センターラインをオーバーした自動車の助手席に座っていた男性が
対抗車線を走っていて自動車に衝突して死亡しました。
そして、死亡した男性の遺族が、衝突した自動車の運転手に対し
損害賠償を求める訴訟を起こしました。
その事件の判決は驚くべきもので、対向車線を走っていた
自動車の運転手に賠償責任が認められてしまったのです。

自動車は危険なものなので、
自動車賠償責任法により
運行供用者責任という
重い責任が課せられており
運転手側が過失がないことを証明しないと、
賠償責任を負うこととなっています。

通常は、被害者が加害者の過失のあることを立証する義務があるので
過失があるかどうかわからないときは、
加害者に賠償責任は認められないこととなっていることを
考えると
大分被害者に有利になっています。

本件の判決は、対向車線を走っていた自動車の運転手に
過失がなかったかどうかわからないから
賠償責任が認められるとしています。

しかし、センターラインをはみ出してきた自動車と
対抗車線を走っていた自動車の衝突事故では、
これまで、センターラインをはみ出した自動車の過失が10割で
対向車線を走っていた自動車の過失は0割とされてきました。
即ち、対向車線を走っていた自動車の運転手に過失はないとされてきたのです。

みなさんも、一方の自動車がセンターラインをはみ出してきた事故であれば
はみ出してきた方が全面的に悪いと思うのではないでしょうか。

そういう意味で、
この判決の内容はかなり特別な判例で、
法律家の僕でも、そんな判決あるの?
と思ったくらいです。

どうしてこの判決がこのような内容となったかというと
死亡した助手席の男性の遺族を救済するためだった
推測されます。

センターラインをはみ出した自動車は死亡した男性のものを知人の大学生に
運転させていたようです。
車の所有者が入る自動車賠償責任保険(いわゆる自賠責保険)は、被害者が自分の場合は
適用がありません。
また、男性が入っていた任意保険は運転手が自分あるいは家族であれば
被害者が自分でも適用がありましたが、運転手は知人の大学生ということで
任意保険の適用がありませんでした。

そこで、この判決を書いた裁判官は
本来被害者である対向車線を走っていた自動車の運転手に
過失がないかどうかわからないから、賠償責任を負うとして、
対向車線を走っていた自動車の自賠責保険により
助手席の男性の遺族に賠償をを与えて救済しようとしたと推測されるのです。

対向車線を走っていた自動車の運転手は、判決で賠償責任はあるとされましたが
実際にお金を払うのは自賠責保険なので、運転手の懐は痛まないので
良いだろうと裁判官は思ったのかもしれません。

この判決は、
センターラインをはみ出してきた方を被害者とする
常識に反するひどいものなのか
それとも被害者救済を考えた大岡裁きなのか
みなさんはどう思いますか?




( 2015/04/28 00:00 ) Category 話題の裁判・事件 | トラックバック(-) | コメント(-)
プロフィール

弁護士 高島秀行

Author:弁護士 高島秀行
第一東京弁護士会所属
東京都港区虎ノ門で
高島総合法律事務所経営
昭和40年生まれ
昭和63年慶応義塾大学法学部
法律学科卒業
平成6年弁護士登録

著書
『訴えられたらどうする!!』
『相続・遺産分割する前に読む本』
『企業のための民暴撃退マニュアル』
『Q&A改正派遣法早わかり』

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